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―転生の果て―  作者: MOON RAKER 503


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11/15

第11話:転生したら魔族の落胤だった

【前書き】


お読みいただきありがとうございます。

この作品は「転生したら〇〇だった」シリーズです。

1話完結形式で進みますが、全15話を通して一つの物語として繋がっています。

どうぞ気楽にお楽しみください。

熱い。


最初に感じたのは、燃えるような熱さだった。


血がたぎる。心臓が激しく脈打つ。筋肉が軋み、骨が軋む。


久しぶりの、肉体。


久しぶりの、温もり。


目を開ける。


視界が暗い。いや、赤黒い。


手を持ち上げると、そこにあるのは――赤黒い肌。


ゴツゴツとした質感。人間のそれとは明らかに違う。指先には鋭い爪。握れば、簡単に肉を引き裂けそうだ。


頭に手をやると――角があった。


二本の、硬い角。


鏡のように磨かれた盾に映る自分の姿を見て、理解する。


魔族だ。


俺は、魔族として生まれた。


「――我が息子よ」


低く、威厳のある女性の声が響く。


振り返ると、そこには巨大な玉座。そして、その上に座る女性――いや、魔族の女王。


彼女は美しかった。だが、その美しさは人間のものではない。冷たく、鋭く、禍々《まがまが》しい。


「お前は王の血を引く者。落胤らくいんとして生まれたが、それでも確かに王の証を宿している」


女王が立ち上がり、俺の前に歩み寄る。


「この世界を、我ら魔族のものとするために――お前も戦うのだ」


彼女の手が、俺の頭に置かれる。


温かい。だが、どこか冷たい。


母親、なのだろうか。


だが、その瞳には愛情よりも、期待と野望が燃えている。


俺は――何も言えなかった。


言葉が出ない。この体に、この声に、まだ慣れていない。


ただ、頷くことしかできなかった。


時が経ち、俺は成長した。


魔族としての力は、日に日に強くなっていく。


剣を振るえば岩が砕け、魔力を放てば炎が噴き出す。


訓練場で他の魔族と戦えば、圧倒的な力で勝利する。


「さすが王の血筋だ」


「落胤とはいえ、その力は本物だ」


賞賛の声。羨望の眼差し。


だが、俺の心は――人間のままだった。


夜、一人で城の屋上に立つ。


遠くに見える人間の街。小さな灯りが、無数に瞬いている。


あそこには、人間がいる。


笑い、泣き、生きている。


かつて、俺もそうだった。


人間として生まれ、事故で死に、様々な存在に転生してきた。


その記憶は、今も鮮明に残っている。


だが今の俺は、人間を滅ぼす側にいる。


「……これでいいのか?」


呟きは、夜風に消える。


誰も答えない。


そして、その日が来た。


人間への侵攻。


魔族の軍勢が集結し、進軍を開始する。


俺も、その最前線に立たされた。


「行け、我が息子よ。お前の力を見せるのだ」


女王の声が、背中を押す。


俺は剣を握り、走る。


体が勝手に動く。血が、戦いを求めている。


魔族の本能が、俺を支配する。


人間の街が見えた。


城壁が築かれ、兵士たちが槍を構えている。


「魔族だ!」


「来るぞ!」


恐怖に怯える声。震える手。


だが、彼らは戦う。


家族を守るために。故郷を守るために。


俺の剣が、兵士を斬る。


血が飛び散る。悲鳴が響く。


「くそっ……!」


兵士が倒れる。その目には、涙が浮かんでいた。


恐怖? 悲しみ? 後悔?


分からない。


だが――その目を見た瞬間、俺の手が止まった。


「……何をしている、行け!」


後ろから魔族の指揮官が叫ぶ。


俺は再び剣を振るう。


だが、心が揺れる。


人間の叫び声。子供の泣き声。燃える家屋。


これが、戦争。


これが、滅ぼすということ。


「なぜ……」


呟く。


「なぜ殺す? なぜ奪う?」


答えは、ない。


魔族だから? 人間が敵だから?


それだけの理由で、命を奪っていいのか?


戦いは続く。


俺は剣を振り、魔法を放ち、人間を倒していく。


だが、心は悲鳴を上げている。


「やめろ」


「やめてくれ」


心の声が、叫び続ける。


だが、体は従わない。


血が、本能が、戦いを求める。


魔族の体と、人間の心。


二つが、俺の中で引き裂かれていく。


ある日、俺は戦場で一人の少女と出会った。


人間の少女。恐怖に震え、俺を見上げている。


「……た、助けて」


か細い声。


俺の剣が、彼女に向けられる。


体が、勝手に動く。


「やめろ……!」


心が叫ぶ。


だが、剣は止まらない。


――その瞬間、俺は自分の意志で、剣を逸らした。


ガキン、と剣が地面に突き刺さる。


少女は驚き、そして――走り去った。


「……何をしている!」


魔族の仲間が怒鳴る。


「お前、裏切るつもりか!」


俺は答えられなかった。


ただ、剣を握りしめ、立ち尽くす。


裏切り?


違う。


俺は、ただ――人間の心を、捨てられなかっただけだ。


やがて、勇者軍が現れた。


聖剣を持つ若者。仲間たちと共に、魔族の軍勢に立ち向かう。


俺も、その戦場にいた。


勇者と対峙する。


「……お前も、魔族か」


勇者が剣を構える。


だが、その目には迷いがあった。


「なぜ、戦わない?」


俺は剣を下ろしていた。


戦えない。


人間を、殺せない。


「俺は……」


言葉が、喉で詰まる。


「俺は、魔族だが――心は、人間だ」


勇者が目を見開く。


「何を……」


その時――


背後から、激痛が走った。


ガッ、と何かが背中を貫く。


魔族の槍だ。


「裏切り者が……!」


仲間の魔族が、俺を刺していた。


「人間に情けをかけるなど、恥を知れ!」


血が溢れる。


熱い。痛い。


だが――不思議と、後悔はなかった。


地面に膝をつく。


視界が霞む。


勇者が駆け寄ってくる。


「おい、しっかりしろ!」


彼の声が、遠い。


「……すまない」


俺は呟く。


「俺は、魔族として生まれた。だが――人間として、死にたかった」


血が地面に広がる。


意識が遠のく。


「俺の中の”人”を……信じた」


それが、最後の言葉だった。


体が崩れ落ちる。


炎が、俺を包む。


魔族の体が、燃えていく。


だが――痛くない。


ただ、温かい。


人間の心を貫いたことへの、報いか。


それとも、救いか。


分からない。


ただ――


「……これで、よかったのかもしれない」


最後にそう思った。


視界が白く染まる。


肉体が消え、魂だけが残る。


また、終わる。


そして――


次が見えた。


形がない。色もない。


ただ、漂う”何か”。


記憶。


俺は、記憶になる。


次が、来る。

【後書き】


お読みいただきありがとうございます。

この作品は「転生したら〇〇だった」シリーズです。

次の転生も、ぜひ見届けてください。

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