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ただ幸せになりたかっただけと、あなたたちは言うけれど  作者: gacchi(がっち)


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5.助けたい(ジェラルド)

「お願いします!旦那様に!」


「お前のような不審な男のためにこんな時間に起こせるわけはないだろう!」


「一刻を争うのです!このままではお嬢様が死んでしまう!」


「この家にはお嬢様なんていない!」


「違うんです!ジュリアンヌ様はっ」


「ジュリアンヌだと!」


ジュリアンヌの名前を聞いて、思わずその男の前に飛び出した。

門番が慌てて止めに入るが、そんなことはかまわない。


「え?ジェラルド様!侍従もつけずにどうしてこんなところに!」


「いいから、お前は黙っていろ!

 おい、お前!ジュリアンヌがどうしたんだ!」


「ああ、お願いします!ジュリアンヌ様をお助けください!

 とても危険な状態で!今すぐ治療しなければ死んでしまいます!」


「!! ジュリアンヌはどこにいるんだ!」


「すぐそこに馬車が!」


「どこだ!」


すぐにでもついて行こうとする俺を門番が引き留めようとする。


「ジェラルド様!こんな奴を信用してどこに行こうというのですか!」


「いいから命令だ!お前もついてこい!ジュリアンヌというのは俺の従妹だ!

 死なせたらお前の命だけではつぐなえないぞ!」


「っ!?」


怒鳴りつけた後で、門番が俺を引き留めるのも仕事だと思い直す。

こんな夜中に怪しい男に俺がついていけば責められるのは門番だ。


「一人は屋敷の中にこのことを知らせにいけ。

 二人は俺についてこい。それならいいだろう!」


「はっ!」


夜の門番は六人いる。半分残しておけば問題ないはずだ。

知らせに来た男の後ろについていくと、すぐ近くに粗末な馬車があった。

見るからに貴族が使う馬車ではないので、

レドアル公爵家の前に止めることを許されなかったらしい。


ドアを開けると血の匂いがした。

汚れた布に包まれた小さな身体は傷だらけでぐったりしている。

本当に生きているのかと身体にふれれば、自分と似た魔力を感じる。

あぁ、間違いない。従妹だ。


どうしてなのか髪が短いと思ったが、切られているのに気がついた。

しかも手当たり次第めちゃくちゃに切られたのかバラバラだ。


「なんてことを……」


ジュリアンヌの身体は体温が下がっていて、魔力も消えかけていた。

ここでのんびりしている場合ではない。すぐにでも治療を受けさせなければ。


布ごと抱き上げて屋敷へ走って戻る。

玄関から入ってすぐに出来る限りの大声をあげた。


「父上、母上、どこにいますか!すぐに治療の手配を!」


その声に反応するように奥から人が出て来る音が聞こえる。

門番が知らせたのが届いたのかもしれない。

現れたのは父上たちだけではなく、叔母上もだった。


「!!ジュリアンヌ!」


「傷だらけなんです!すぐに治療を!」


「ロズリーヌ!客室を使うんだ!こっちだ!」


「ええ、早く治療を‼……ああ、なんてこと……」


一番近い客室のベッドにジュリアンヌを寝かせ、汚れた布を外す。

頬や身体に切られた傷が多数あり、血が流れ過ぎて肌が青白い。

身体を守ろうとしたのか両腕の傷が一番多かった。


「……ひどい。これは……あばら骨も折れている……。

 私一人の治癒術では足りない。お兄様、すぐに治癒士を用意して!」


「わかった!」


叔母上がすぐに治癒術を開始したが、血を失いすぎているうえに、

骨が何本も折れて内臓も損傷しているらしい。

数人がかりで治癒術を使っても治せるかどうかの瀬戸際。


まだ習い始めたばかりの俺の治癒術がどのくらい効くかはわからないが、

ないよりはあったほうがいい。

邪魔にならないように足首にふれて魔力を流す。


頼む……少しでも良くなってくれ。

祈るような気持ちで魔力を送る。


二歳下よりももっと小さく見える身体が血の気を失って、

整った顔立ちから傷ついた人形のようにしか見えない。

それが恐ろしくて、必死で祈りながら治療を続ける。


父上がレドアル公爵家お抱えの治癒士を連れて来ても、

俺は治療をやめることはできず、そのままジュリアンヌが助かったと思えるまで、

倒れることもいとわず全員で治療し続けていた。


次の日の昼過ぎになって、ようやくジュリアンヌの頬に赤みが差してきた。


「危険な状態からは抜けられたと思います」


「……良かった……ジュリアンヌ……っ」


安心からか泣きだした叔母上は、そのまま気を失って倒れてしまった。

すぐに隣にいた治癒士がささえて、隣の客室へと連れて行く。


「ロズリーヌ様は限界を超えていたのでしょう。

 ジェラルド様もお休みになった方がいいと思います」


「いや、俺はまだ大丈夫だ。

 叔母上が起きてくるまでジュリアンヌのそばにいる。

 目が覚めるまでは身内の魔力を流していたほうがいいだろう」


父上は治癒術を使えないこともあって、事件の後始末をしているし、

母上はこの話が外に流れないように屋敷内の手配をしている。

俺はジュリアンヌのそばにいるくらいしかできない。


「それはそうですが、大丈夫でしょうか?」


「このくらいなら平気だ」


「わかりました」


本当は眠いし魔力もきつかったけれど、離れてはいけない気がした。

ジュリアンヌの小さな手を握り魔力を流しつづけ、

夜になって起きてきた叔母上と交代する。


さすがに限界を超えていたのか、俺も気絶するように寝て、

起きた後で事件のことを説明してもらうことになった。


俺と叔母上がジュリアンヌから離れたがらないから、

事件の説明は客室で行われた。


「ジェラルドが気がついてくれなかったら、ジュリアンヌは死んでいただろう」


「いえ、あれはたまたまでした」





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