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ただ幸せになりたかっただけと、あなたたちは言うけれど  作者: gacchi(がっち)


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42.呼んでいない客

「アドルフ様、ジェラルド、大変です。シュゼットが押しかけてきています」


「なんだと?」


「押しかけて来た?」


さっき聞こえた会話を報告していると、広間の扉がバーンと音を立てて開いた。

そこには赤いドレス姿のシュゼット様と花束を抱えたサミュエル様がいた。


シュゼット様はレイモン兄様と私を見つけると、

文句を言いながらこちらに向かって来る。


「ひどいわ!お兄様とお姉様だけ夜会に出席するなんて!

 私だけのけ者にするつもりなの!?」


「……は?」


隣にいたレイモン兄様から低い声が漏れた。

どうやら怒りを抑えようとしているようだけど、

その気持ちはわかる。


「お前は妹ではないと何度言えばわかるんだ」


「どうしてよ?私がお父様の娘だって王家も認めたんでしょう?」


「あれはそういう意味じゃない」


王家から処罰された時の認定をそういう意味に捉えているとは。

あれは公爵令嬢として認められたのではなく、

不貞の子として認められたものだ。


不貞の子は正式な戸籍には残らない。

そのため、私やレイモン兄様と兄弟として認められたわけではない。


それをシュゼット様にわかってもらうにはどうしたらいいかと思っていたら、

ジェラルド兄様がいるのに気がついたシュゼット様は、

私たちのことはもうどうでもよくなったようで笑顔になる。


「ジェラルド様!ようやく会えたわ!

 もうお兄様とお姉様が邪魔するから!

 ずっと会いたかったのよ」


「レイモンとジュリアンヌが邪魔をしたって、何をしたというんだ」


「え?ここで夜会があること教えてくれなかったのよ?

 教えてくれてたらもっといいドレスを作ったのに!」


フリルのたくさんついた赤いドレスはお気に召さないようで、

シュゼット様は唇を尖らせる。

顔立ちは整っているから可愛いと思う人もいるかもしれないけれど、

ジェラルド兄様とレイモン兄様、そしてアドルフ様はそうではなかった。


「そこの令嬢は招待状を持っているのか?」


「いえ、アジェ伯爵家には招待状を送っておりません」


「そうか……サミュエル!お前は何をしているんだ!

 お前がこの令嬢を連れてきたのだろう!?」


「兄上、やっぱり納得できません!

 レドアル公爵家の夜会は俺が出席することになっていたのに。

 どうして急に兄上が出席するから俺は行かなくていいだなんて!」


「何度も言っただろう!お前が出席するのは迷惑だと!」


「嫌です!俺はジュリアンヌにまだ求婚していません!

 何も言わないままあきらめるのなんて嫌です!」


サミュエル様の視線が私に移った瞬間、身体が固まってしまう。

一歩、また一歩とこちらに近づいてくる姿にどうしていいかわからなくなる。


このままではまた意識を失ってしまうかもと思ったら、

レイモン兄様が私を支えてくれる。


「大丈夫か」


「兄様……」


「ジュリアンヌ!体調が悪いのか!?」


「サミュエル!近づくんじゃない!

 お前のせいだとわからないのか!?」


「そんなわけは……」


アドルフ様に叱られてもサミュエル様は納得してくれない。


「ジュリアンヌは俺と婚約していたんだ!

 俺のことを好きだったんだろう!?」


「いいかげんにしてくれ。

 ジュリアンヌはサミュエル王子との婚約なんて知らなかったんだ。

 一度も会ったことがないのに好きになるわけないだろう」


「え……でも、シュゼットが……」


どうやらシュゼット様のせいで何か誤解しているらしい。

そのシュゼット様はジェラルド兄様に近づいて、今にもふれそうな距離にいる。


「お母様が婚約するならすぐにでも一緒に住んだ方がいいって言うの。

 あ、そうだ。イフリア公爵家はもういらないからお姉様にあげるね。

 代わりに私がここに住むから、いいでしょう?」


「何を馬鹿なことを言っているんだ。

 いいかげん、ジュリアンヌをお姉様と呼ぶのもやめろ。

 お前なんかと婚約することはないし、ジュリアンヌはどこにも行かない」


「どうしてよ!お姉様よりも私を大事にしてよ!」


「何を言っているんだ。そんなのするわけがない」


かなり無茶苦茶なことを言っているなと思うのに、

なぜかシュゼット様は自信満々だ。


「へぇ、いいの?お姉様の秘密、ばらしちゃうわよ?」


「秘密……?」


「それを言ってしまったら、お姉様は誰とも結婚できなくなっちゃうわよ」


私の秘密って何?その場にいた誰もが疑問だったと思うけど、

サミュエル様は知っているらしく平然としている。


「俺はどんなことがあってもジュリアンヌと結婚するぞ」


「サミュエルはそうかもしれないけど、

 これを知られたらお姉様は社交界で傷物だと言われるわ」


私が傷物……?心当たりはないけれど、不安になってジェラルド兄様を見る。

ジェラルド兄様は私とレイモン兄様を見て、うなずいた。


ジェラルド兄様が大丈夫だというなら、きっと平気。

私は大丈夫だとうなずき返した。

それを見て、ジェラルド兄様はシュゼット様に向き直る。

その目は誰から見ても冷たかった。


「ジュリアンヌの秘密が何なのかここで言えばいい。

 俺たちはお前の言う通りにはならない」


「っ!!それならいいわ!言ってあげる!

 お姉様は十歳の時に誘拐されたんでしょう!?

 貴族令嬢が誘拐されたらもう結婚できない!お母様がそう言っていたわ!」


「……誘拐?そんな事実はないな」


「嘘よ!お母様が言っていたもの!

 イフリア公爵家の離れから連れ去られたって!

 病気で中等部に通わなかったんじゃなく、

 誘拐された時の傷がひどかったから通えなかったんでしょう?」


「ほう……誘拐された時の傷だと?」

 

「そうよ!生きているのが不思議なくらいだったんでしょう?

 お姉様は貴族令嬢としては終わりよ!」


それはそうかもしれない。

貴族令嬢がさらわれたとしたら、純潔を失ったと思われる。

結婚相手として選ばれないのも理解できる。


「それで、どうしてマゼンタ夫人がそのことを知っているんだ?」


「え?」


「当時、マゼンタ夫人はアジェ伯爵家にいたはずだな。

 どうしてジュリアンヌが誘拐されて傷だらけになったとわかるんだ?」


「……そんなのわからないわ。だけど、本当なんでしょう!?」


当時のマゼンタ様はお父様の愛人であってもアジェ伯爵夫人だった。

イフリア公爵家の離れで起きたことを知っているのはおかしい。

お父様から聞いたのだとしても、誘拐された後のことを知るのはもっとおかしい。


「レイモン兄様……手を貸してくれる?

 シュゼット様に聞きたいことがあるの」


「わかった」


まだ身体は震えているけれど、レイモン兄様と手をつないで気持ちを落ち着かせる。

サミュエル様のほうは見ないようにして、シュゼット様に声をかける。


「ねぇ、シュゼット様。

 十歳の時、髪の短い私を男の子と間違えたわよね」


「え?」


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