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ただ幸せになりたかっただけと、あなたたちは言うけれど  作者: gacchi(がっち)


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24.新たな悩み

「何が不安なんだ。言ってみて」


「……なんでもな」


「嘘は言うなよ。言えないなら言わなくてもいい」


「…………あのね、王宮の夜会に行ったら、会ってしまうかもって」


「イフリア公爵?愛人のほう?」


お父様とも会いたくはないけれど、何も思わないと思う。

ほとんど記憶にないくらい関わっていなかったから。


「マゼンタ様に会うのが少し怖くて……」


「はぁぁ……そうだよな。

 同じ公爵家だから会わないのは難しいかもしれない。

 父上にも相談してみるか」


伯父様に相談してしまったら大ごとになってしまうのでは?


「大丈夫!目を合わせなければ大丈夫だと思う……」


「……最終的にどうしようもなくなったら、そうしよう。

 見たくないと思ったら目を閉じればいい。

 俺がちゃんとエスコートするから」


「目を閉じて……」


「俺が必ずそばにいて守る。それなら安心できるか?」


「うん……兄様がいてくれるなら」


「よし」


本当に、こんなに兄様だけに頼ってしまっていいのかな。

一緒にいてくれるなら大抵のことは乗り越えられそうだと思ってしまうから、

優しいこの手を離せずにいる。


「ほら、疲れただろう。お茶を飲んで」


「ありがとう」


エリが淹れてくれたお茶を飲むと、蜂蜜とミルクがたっぷり入っていた。

その甘さが染みるのが心地よくて身体の力が抜けていく気がした。


「やっぱり気を張っていたんだな。夕食までまだ時間がある。

 眠いならこのまま休んでもいいんだぞ」


「……ん」


お茶はまだ半分も残っているのに、兄様の胸にもたれていると眠くなる。

兄様も疲れたんだから休めばいいのに、そう思いながらも、

そのまま眠ってしまっていた。




次の日、いつもよりも早い時間に屋敷を出た。

シュゼット様は授業が始まるぎりぎりにしか来ないけれど、

もしかしたら兄様に会うために早く来るかもしれないからだ。


早すぎて教室には誰もいないかと思っていたら、コリンヌが来ていた。

栗色の髪を邪魔にならないように耳にかけ、机に向って何かをしている。

教室に一人じゃないことがわかったから、兄様には行ってもらう。


「おはよう、コリンヌ」


「おはようございます」


見れば、机の上に教科書が出ている。

一人で勉強していたようだ。


「勉強していたのね。いつもこんな早くに来ているの?」


「はい。父が王宮に勤めているので、

 一緒の馬車で来るとこのくらいの時間になるんです。

 ちょうどいいから授業が始まるまで勉強していました」


「だから、こんなに早いのね。

 私もこれからこのくらいの時間に来ることになると思うから、

 コリンヌと一緒に勉強していようかしら」


「いつも一人だったのでうれしいです。

 あの、わからないところを教えてもらってもいいですか?」


「ええ、私がわかるところなら、いくらでも」


「ありがとうございます!」


本当にうれしいのか、はっきりした緑色の目がキラキラと輝いている。

コリンヌが勉強熱心なのは知っていたけれど、

朝から自習するほどだとは思わなかった。


「こんなに勉強しているなんて、理由があるの?」


「学園を卒業した後は王宮で働きたくて。

 だから、試験で三位以内にはいるのを目指しています」


「三位……けっこう難しいわよね」


「ええ、難しいです。

 でも、父を説得するためには、そのくらいじゃないと」


高等部の試験で三位以内に入ると王宮文官、女官の試験が免除になる。

父親に認めてもらうためにはそのくらい優秀じゃないといけないようだ。


でも、試験はこの教室だけでなく、この学年すべての学生、

三教室で五十人以上が受ける。


文官と女官を目指している者だけではなく、

十位以内に入れば騎士団と魔術師団の一次試験が免除になるため、

試験の上位を目指す者は多い。


その中で三位以内というのはかなり頑張らなくてはいけない。


「私でよければいつでも教えるから」


「本当ですか!お願いします!」


どうやら自習していてわからなくて困っていた問題があったらしい。

すぐに教科書を出してコリンヌの隣の席に座る。

集中して教えていると、あっという間にみんなが来る時間になる。


心配していたシュゼット様は授業が始まった後で教室に入って来た。

見るからに機嫌が悪そうで、目が合ったのにすぐにそらされる。


関わらないほうがいいとわかってくれたのならいいけれど。



昼休憩になり、すぐに席を立ってマリエット達と教室を出る。

兄様が迎えに来るのを待つつもりだったのか、

シュゼット様が騒いでいる声が聞こえたけれど、そのまま控室に向かう。


しばらくあきめてくれなさそうだなと思っていたが、

昼休憩が終わって教室に戻って来たシュゼット様はなぜか笑顔だった。


どうして急に機嫌が直ったんだろう。

不思議だったけれど、こちらから聞くことでもない。

機嫌が悪いよりかはいいかと思いながら授業を受ける。


授業が終わり、マリエット達と帰ろうとしたら、

シュゼット様に呼び止められた。


「待って、ジュリアンヌ様……いいえ、お姉様」


「……は?」


「お姉様に用があるの。帰るのは少し待ってくれる?」


「シュゼット様、何を言っているの?」


甘えるようなシュゼット様の様子に、お姉様?

今度は何を言い出したのかと警戒する私にシュゼット様はにっこり笑った。


「え?聞こえなかった?

 お姉様に用があるから帰らないでって言ったの」




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