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ただ幸せになりたかっただけと、あなたたちは言うけれど  作者: gacchi(がっち)


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17.過保護な兄様

「ああ、中立派の筆頭家だ。

 嫡子は長男だが、すでに学園を卒業して結婚している。

 令嬢が家を継ぐなら、第二王子の婿入り先に選ばれたんだろうが」


「シャルロット嬢は優秀ではあるが、俺は苦手だな……」


「苦手?」


見れば、本当に嫌そうな顔をしている。

同じ学年の令嬢と何があったのだろうか。


「アゼリマ侯爵家からは何度もジェラルドに見合いの打診が来ている。

 もちろん、全部断っているけどね」


「見合い?」


推進派の侯爵家は兄様と同じくらいの年頃の令嬢はいない。

伝統派の令嬢との見合いは考えられないだろうから、

シャルロット様は身分の上ではちょうどいい相手になる。


おそらく向こうもそう考えて兄様との婚約を打診してきたのだと思うけど。


「断った理由は兄様がシャルロット様を嫌っているから?」


「それもあるけれど、私は政略結婚させるつもりはないよ」


「伯父様……」


伯父様から強い意思を感じられて、お母様のことを思い出す。

兄様を政略結婚させないというのは、

王命だったお母様たちがあんな結果になってしまったからだと思う。


「もちろん、それはジェラルドだけじゃない。ジュリアンヌもだ」


「私も……」


「二人ともきちんと信頼できる相手と結婚してほしいと思う。

 だから、学園にいる間のお茶会や夜会は大事にしないとね」


「はい……」


信頼できる相手……兄様は誰を選ぶんだろう。

私も結婚したくはないけれど、いつまでもここにいるわけにもいかない。


兄様が結婚してしまったら私の存在は邪魔になるだろうし、

学園が卒業したら出て行けるように相手を探さなくてはいけないかもしれない。


「ジュリアンヌ、そんなに悩むな」


「兄様……」


「まだ外に出たばかりなんだ。

 これからゆっくり考えればいい」


「うん……」


そうだった。私はようやく外に出たばかりだった。

死んだものとされていたのに、生きていたことがわかった公爵令嬢。

これからどういう目で見られるかもわからない。


こんな私を妻にしたいと言ってくれる人がいるのかもわからない。

ため息をつきそうだったけれど、その前に兄様に何かを口に差し込まれた。


「んんん?」


「ほら、ちゃんと最後まで食べろよ」


「自分で食べられるわ!」


「いいから、ほら」


「んー!」


口に入れられたのは苺の氷菓だった。

ぼうっとしている間にデザートになっていたらしい。


結局、二人分の氷菓を食べ終えて部屋に戻る。

部屋に戻る時も兄様は私を送り届けようとする。


「屋敷の中なんだから、大丈夫なのに」


「わかっているよ。俺がそうしたいだけ」


「どれだけ心配性なのかしら」


「どれだけだろうね……ずっと隠していたかったほどかな」


「え?何か言った?」


最後に何か言ったようだけど、小声で聞き取れなかった。


「なんでもないよ。ほら、寝る用意をするんだろう?

 眠れなくなったらすぐに呼ぶんだよ?」


「もう、大丈夫よ」


「それは信用しない。エリ、アンナ、何かあったらすぐに呼ぶように」


「「はい、もちろんです」」


そんなに信用ないのかなと思いつつ、最後のは私の強がりだ。

今でも一人で眠るのは怖い。

嫌なことを思い出してしまって震えていると、どうしてわかるのか、

兄様が部屋に忍び込んできてくれる。


ぎゅっと手を握っていてもらうと、落ち着いて眠ることができる。


もう十六歳なのだから、こんなことしていちゃダメなのに。

伯父様と伯母様も気づいているはずなのに、誰も怒らない。 


その日の夜も兄様が心配していた通り眠れなかった私に、

やっぱりなというような顔をして兄様が現れた。


「……大丈夫なのに」


「大丈夫じゃないから来たんだろう。一緒に寝るか?」


「もう!子どもじゃないんだから……」


「そうだな。もうジュリアンヌは子どもじゃないよ」


なら、どうしてそんなことを言うんだろう。


「ほら、手を出して。眠るまでここにいるから安心しろ」


「……ん」


差し出した手を兄様がきゅっと握る。

大きさが全然違うから、手が包み込まれるように感じる。


兄様の体温がゆっくり伝わってくると、

もう目を開けていられなくなる。


眠りに落ちる瞬間、兄様が私の額に口づけた気がした。

うれしい……そう言えたかどうかわからないまま、

気がつけば朝になっていてエリとアンナに起こされていた。





それからしばらくは問題なく学園生活を楽しんでいた。

シュゼット様は周りから何か言われたようで、

私に近づくことはなかった。


だが、一度だけ、私がマリエット達と笑い合っていたら、

「私の取り巻きになるはずだったのに……」

と悔しそうにつぶやいているのが聞こえた。


自分が言うことは聞くものだと思っていたシュゼット様にしてみたら、

マリエット達は取り巻きになって当然だと考えていたのだろう。

それが私のそばにいることで奪われたと思ったのかもしれない。


直接何か言ってきたのならそうではないと言い返したけれど、

言われてもいないのに反論することはできない。


少しだけもやもやしながらも、気にしないことにした。


「え?先生がお休みなの?」


「体調不良なんですって。

 午後の授業はあるから帰るわけにもいきませんしね」


「そうね……何をしていようかしら」


「せっかくですから、カフェテリアに行きませんか。

 ジュリアンヌ様と一緒に行ってみたいと思っていたんです」


「それはいいわね」


いつも昼休憩は兄様と過ごしているから、

マリエット達とカフェテリアに行ったことはなかった。

いい機会だと五人でカフェテリアへと向かう。









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