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第10話:お父さん

 「あの、お父さん、話があるんだけどいい?」

 普段はおっちょこちょいな父だが、僕からの話はしっかりと聞いてくれる。それでいてアドバイスも的確だから、普段とのギャップにいつも驚かされる。


 「ああ、どうした?何でも聞くぞ」

 やっぱり、何度も体験しているはずなのに、何故か違和感しかない。よくしょうもないダジャレを言っている父と同一人物だとは思えない。


 「あ、あの、桜病って知ってる?」

 僕はいきなり本題に入った。


 「ああ、あの原因不明の⋯⋯桜が散る時期が来ると、体が崩れていく病気だよな」

 父は意外と物知りなんだよな。だから聞いてみたかったってのはある。でも、知りたいのはそこじゃない。治療法だ。


 「そう、なんだけど、そう……あの、治し方って、わかんないよね」

僕はダメ元で聞くような感覚で話した。誰も解明出来ていないようなことを父が知っているはずはないが、一応聞いてみた。すると、思わぬ答えが返ってきた。


 「喜鶴神社(きづるじんじゃ)の桜茶を飲むと治ると聞いたことがある。そこの桜は神聖とされていて、桜の神様が宿っていると言われ……」


 「ええ!?それってほんと!?どこにあるの!?」

僕は想像していなかった答えに身を乗り出して反応した。これがほんとなら、咲愛の余命がなくなるかもしれない。


 「喜鶴神社はここ(岐阜)から遥か北の鹿児島にある」

父は壁に貼ってある日本地図を指さした。


 「鹿児島かぁ⋯⋯遠いなぁ。ありがと!お父さん」

それでも、咲愛の病気を治すためならどこへだって行ける。


 「誰かが桜病にかかったのか?」

その瞬間、僕はギクッとした。そうだ。秘密だ。秘密にするんだ。


 「いや、自由研究で調べてるの!」

ここで言えば、もっと話が進むかもしれない。だが、咲愛が桜病で余命があるということは秘密にする約束だ。僕はそう思いながら、ドアを開ける。すると、父からまた予想外の言葉が飛び出す。


 「そうか、それなら良かった。桜病は俺の父がかかってしまってな。死んでしまったんだよ」

僕はその思わぬ言葉に足を止めて振り向いた。


 「……えっ!?おじいちゃんが?」

僕は理解するのに時間がかかり、ようやく桜病にかかってしまったのがおじいちゃんだと分かった。


 「そうだ。お前のおじいちゃんがかかった病気だ」

咲愛だけじゃなくて、身近な人までかかっていたなんて。おじいちゃんの葬式には参加したけど、桜病とは聞いていなかった。というか、言っていたんだろうけど、小1だった僕には到底理解できなかっただろう。


 「そうなんだ⋯⋯桜茶は飲めなかったの?」

さっきの話を思い出して聞いてみた。咲愛にも関わる重要なことだ。


 「いや、飲んだんだよ、ちゃんと。でも、願いは叶わず、死んでしまった」


 なんだ、願いってことは、結局運なのか。そう思ってしまった。


 それでも、少しでも治す力というか助けになるなら。そう考え、話が終わったあと、岐阜から鹿児島へ向かう交通手段を調べる。そして、飛行機で行くことに決めた。


 それもこれも、すべては咲愛のためだと思い、これから桜病の延命方法や治療方法を模索することにした。

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