1.始まり
冒険者になって、まだ一週間。俺、リヒトは初めてのパーティーに加えてもらい、期待と不安を胸にダンジョンへ足を踏み入れた。銅級冒険者の先輩たちに必死についていったつもりだったが、あっという間に置いてけぼりを食らってしまう。焦れば焦るほど方向感覚は狂い、気づけばパーティーの姿はどこにもなかった。
「ま、まずい…完全に迷子だ…」
広がるのは薄暗い通路ばかり。引き返そうにも、来た道が分からない。モンスターの咆哮が遠くで聞こえ、俺の足はすくむ。地図もなく、方向を示すものもない。ただただ、不安と恐怖だけが募っていく。
どれくらい彷徨っただろうか。体力は限界を超え、喉はカラカラに渇いていた。足元がおぼつかなくなり、ふと、地面に違和感を感じる。嫌な予感がした時にはもう遅い。地面が突然崩れ落ち、俺はそのまま暗闇へと落下した。
「うわあああああ!!」
強烈な衝撃が全身を襲い、息が詰まる。何とか体を動かそうとするが、手足がいうことを聞かない。どうやら、かなり深い落とし穴に落ちてしまったらしい。激しい痛みと、全身の倦怠感。おそらく骨の何本かは折れているだろう。瀕死の状態だ。
「くそっ…こんな所で…」
朦朧とする意識の中、どうにか生き残る方法はないかと考えるが、良い案は浮かばない。喉の渇きはもはや耐え難いレベルに達していた。何か、飲めるものはないか…?
かすかに聞こえる水の音に、最後の望みを託す。這うようにして音のする方へ向かうと、そこには小さな水たまりがあった。薄暗い中でも、その水は妙に澄んでいて、微かに光を放っているように見える。普通の水たまりにしては、あまりにも不自然だ。
しかし、今の俺にはそんなことを気にしている余裕はなかった。一刻も早く水分を補給したい。水たまりに手を伸ばそうとした、その時。全身を襲う疲労感と、安心感のようなものが同時に俺を襲った。
「あ…もう…ダメだ…」
水を飲むどころか、そのまま水たまりの縁に倒れ込んでしまう。冷たいような、温かいような不思議な感覚。意識は急速に遠ざかっていき、俺はその奇妙な水たまりに顔をつけ、そのまま深い眠りへと落ちていった。
これが、俺の運命が決定的に変わった、最悪な一日だった。
ここまでがエピソード1となります。
パーティーから迷子になる様子、落とし穴への落下、瀕死の状態、そして魔力水たまりにたどり着き、力尽きて眠ってしまうまでの流れを描きました。主人公の視点での状況描写と心情、そして最後に眠りに落ちる際の描写に焦点を当てています。
このエピソードに何か修正や追加したい点があれば、遠慮なくお申し付けください。この続きとして、魔力∞になった主人公が目覚めるエピソード2を執筆することも可能です。
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