8話
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「鋭さが足りん! もっと腰を入れろ!」
「はい!」
「マルクもだ! 武器に振り回されるな!」
「はい!」
俺は身体強化を使ったまま。
マルクは身体強化のトレーニングと、型のトレーニングを交互に。
少しレベルアップした授業になった。
これが、とにかく全ての基礎らしい。
ゴードン先生は武器も持ってないし、身体強化の魔法も使ってない。
しかも、ほとんど動いてない。
それでも攻撃を掠らせることすら出来ない。
格の違いが凄いな。
本気で勝ちにいくくらいじゃないと意味ないから、ガチで倒しにいってる。
こっちとしても、いろいろと工夫は凝らしてるんだけどなぁ。
盾を殴打武器として使ったり、視界を奪おうとしてみたり……。
まぁ子ども騙しにしかならないよね。
今の俺たちの実力だと。
「踏み込みが浅い! 全ての攻撃を無駄にするな!」
「はい!」
「よし! 少し良くなったぞ! この感覚を忘れるなよ!」
「ありがとうございます!」
キツい!
とにかく全身がキツい!
名前も分からないような筋肉すら悲鳴を上げてる気がする。
想像よりも背中の筋肉が辛いな。
なんだこれ。
まだ身体が完成してないとはいえ、こんなにキツいものなのか……。
実際に冒険に出るとなったら命懸けだし、甘い訓練じゃ無意味だとは思うけどね。
それは分かってるからキツいトレーニングでも、どんとこい!
の精神ではある。
身体が追いついてるかは別の話だ。
授業が始まった当初よりは、かなり体力も付いてきたとは思うんだけどさ。
「今日は、ここまで! しっかり休むように!」
「「はい!」」
結局、今日も一撃も与えられなかったな。
そういえば先生って、この世界じゃどれくらいの実力者なんだろうか?
めちゃくちゃ強いとは思うけど、比較が出来ないからなぁ。
これで弱い方だと怖い。
世界が広いってことで楽しみもあるんだけど、せめて並ではあってくれ。
「おつかれ、シュウ」
「マルクも、おつかれ」
「僕は今日、もう終わりだけどシュウは?」
「確か、治癒術の授業かな」
「やっぱり、まだ勉強するんだ……。無理してない?」
「無理してるつもりはないなぁ。なんなら新しい知識を入手できそうでワクワクしてるよ」
「無理してないんなら良いけど。じゃあ頑張ってね」
「おう。またな」
「またね」
一気に詰め込んでるような気もしないでもないけど、毎日が楽しくて仕方ないのさ。
こういうのが充実してるって言うのかな。
座学も実践も、何もかもが新鮮。
良い生活です。
「えっと……」
この教室だよね?
先生どころか生徒も1人としていないから、ちょっと不安になるんですけど。
「おやまぁ。本当に私の授業を受ける新入生がいたとは。びっくりですねえ」
「よろしくお願いします」
「よろしくどうぞ。シュウ君ですよねぇ? 私はセリアと言います。治癒術担当教官です。もう身体強化は扱えるんですよね?」
「はい、一応使える程度ですが」
「充分すぎますねぇ。あとは適性ですぅ」
「適性?」
「身体強化を身体の内側で行えるかどうかですぅ。それが出来ない人は、残念ながら治癒術は使えないんですぅ」
「そうなんですか……」
それだけ特殊な技術なんだろう。
他にも適性が必要なスキルもあるかもしれないけど、治癒術はトップクラスに必要そうだ。
魔力を纏わせながら『ヒール』って唱えたら完成!
みたいなのだと助かるんだけど。
「じゃあ、やってみますね」
「頑張ってくださいねぇ」
「はい」
身体強化は身体の表面に魔力を纏わせる。
それを身体の内側で。
イメージは血管に沿って、魔力を循環させつつ魔法を発動させる。
あれ?
これって、いつもやってる魔力操作のトレーニングで魔法を発動させるだけ?
「おおっ。できてるじゃないですかぁ」
「あ、やっぱりできてるんですね?」
「ゴードン君から優秀な生徒が入ってきたとは聞いてましたが、治癒術においても優秀そうで何よりですぅ」
「ありがとうございます」
ラッキー!
オリジナル訓練だったけど、こんなところで役にたつなんて。
良かったぜ。
「それでは、本格的に治癒術の勉強に入りましょう」
「お願いします」
「少し長くなるので、頑張ってくださいねぇ」
……なるほど。
まったく理解出来ないと言っても良いくらいだな。
前世の知識が無ければ。
怪我の回復なんて、意味分かんないもん。
魔力による回復速度の促進って、たぶん細胞の働きを活性化させるみたいな?
なんとなくしか理解できてないけど、そういうことでしょ?
あー、前世でもっと勉強しておきたかったなぁ。
効率よく理解した方が、効き目とかも良さそうだし。
「さすがに難しいですよねぇ?」
「はい。少し理解するのに時間かかりそうです」
「ゆっくり頑張りましょうねぇ」
「はい」
そうだな。
焦っても仕方ない。
難しいからこそ、じっくり時間をかけて習得していかないとな!
でも理解するのはするとして、実践はどうしよう?
わざと怪我とかできないよな……。
「まずは軽い筋肉痛を治すくらいの気持ちで始めましょう。あれもれっきとした怪我ですからねぇ」
「分かりました」
そうだな。
確か筋肉痛って、筋肉の疲労とか筋繊維の損傷とかが原因だったような……。
怪我だな、うん。
「とりあえず今日の授業は、ここまでですぅ。お疲れさまでしたぁ」
「ありがとうございました」
とりあえず走るか。
身体強化と同時にこなして、一石二鳥を狙うぞ。
〜職員室〜
「ゴードンくーん! あの子、やっぱりすごいですねぇ」
「セリア先生。ここでは静かにしてくださいよ。あと君付けもやめて下さい」
「いいじゃん、弟なんだし! それより今は、あの子のことだよぉ」
「あの子? あぁシュウのことか? 今日は治癒術の授業も受けてたんだったな」
「さすがに、理屈を全部は理解できてはいないみたいだけど……。ちゃんとスタートラインには立ててるみたい」
「ほう。そっちの才能もあったか」
不思議なもんだな。
シュウ。
アイツには特別天才と言えるほどの才能があるとはいえない。
だが、とにかく何もかもを吸収しようとする貪欲さ。
成長するには不可欠なものだ。
いきなり冒険者育成コースに入学する子どもの中には、勉強なんてと考える者も多い。
実際に俺も何人も相手してきた。
だが、たまにいるんだよな。
ある意味、子ども離れした連中が。
「他にもいるんだったよね、どんな子?」
「マルクか。アイツも、なかなか良い。純粋で前向きで強くなれるぞ、アレは」
「なんだか楽しそうねぇ。またハズレか、とか言ってたのにぃ」
「そういうな」
いきなり冒険者を目指すなんて、ただの命知らずとかが多いんだよ。
しかも何の自信があるのか、まともに授業も聞きやしない。
あんなのは正直、面倒なんだよな。
少ないけど。
「私も楽しいかも。教え甲斐があるわぁ」
「個人に肩入れするつもりはないが、確かに教え甲斐がある」
一瞬で何もかも覚えちゃうような天才もいい。
だけど、アレだけ純粋に前だけを見て頑張ってくれるなんて……。
教師として有難い。
こっちも楽しめる。
「あら? あれってシュウ君?」
「んん? 確かにシュウだな。めちゃくちゃ走ってるようだが」
「筋肉痛になろうとしてるのかしら?」
「かもな」
頑張るねぇ。
あれだけ運動したあとに勉強して、それから自主練か。
頑張りすぎないように注意して見ないといけないけど、好感持てる。
また明日から大変だ。
しっかりと鍛えてやらんと。
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