5話
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「おはよう、ジュード」
「おっす。もう提出したか、アレ?」
「うん。さっき提出してきたよ。ジュードは?」
「俺も出してきた。けっこう悩んだよなぁ……」
「いつでも変更願は出せるとは言っても、やっぱり最初だからね」
「そうなんだよ。まぁ俺は基本の短期カリキュラムにしたんだけどな」
「じゃあ、じっくり将来に向けて考える感じだ」
「ああ。焦っても仕方ないしな」
「そりゃそうだ」
まだ6歳だしな。
将来なりたい職業とか漠然と想像はするかもしれないけど……。
決定するには早すぎるし。
まずは短期カリキュラムで総合的に学ぶってのがベターかもしれんよね。
そっから方向性を定めるのが普通っちゃあ普通だ。
「んで、シュウは?」
「俺は冒険者育成カリキュラムかな。まぁ色々と追加もしたけど」
「マジで!? ただでさえ冒険者育成のって大変なんじゃねえの?」
「かもね。ほんとに無理そうなら、早速変更願の出番が来るかもしれないな」
「うへぇ。俺には絶対に無理だわ。普通に勉強だけでも大変そうなのに……」
「そこはまぁ、気合いとか根性とかで?」
「お前って、もしかして結構バカなのか?」
「ひどいな、おい」
否定しきれないのが悲しいとこだな。
精神論を全否定するつもりはないけど、ちょいと頭悪そうなノリだったかも。
「じゃあ、せっかく仲良くなれたのに別授業か」
「同じ授業も多いだろうし大丈夫だろ。それにジュードなら、いくらでも友達くらいできるって」
「だったらいいんだけどな」
そこは心配してない。
むしろ心配なのは俺の方なんだよな……。
「はーい、みなさん席に着いてください。みなさんの希望授業を無事に受け取りました。問題ありませんでしたので、今日から、それぞれのカリキュラムでの授業が始まります。ここまでで質問はありますか?」
「「ありません」」
「では解散としましょう。みなさん資料を受け取ったら、それぞれの教室に向かってください」
「「はい!」」
ええと。
俺はどこに向かえば良いのかなっと。
校庭か。
いきなりだな。
「驚いたな。まさか入学して速攻で冒険者コース選ぶ変わり者が僕の他にもいたなんて」
「ってことは、君も?」
「冒険者志望の新入生だよ。僕の名前はマルク、よろしくね」
「俺はシュウ。よろしく」
「自己紹介は終わったようだな!」
「「っ!?」」
「フハハ! 何度見ても、この生徒の驚いた表情は面白いな!」
「もしかして、あなたが先生ですか?」
「そうだ! 吾輩はゴードン! 冒険者育成カリキュラム担当教官である!」
「よろしくお願いします」
「よし! 2人とも! まずは校庭を限界まで持久走だ!」
「え?」
「貴様たちの今の体力を量るだけだから、無理はするな! しかし限界まで走り続けろ! スタートだ!」
「はい」
まずは何より声がデカいな。
若干コワモテなのもあって、この迫力で来られたら6歳児とか泣くんじゃないの?
マルクは大丈夫みたいだけど。
それにしても、だ。
気になったのは、そんなところじゃない。
ゆうに2メートルは超えてそうな身長に、ガッチリした身体つき。
なのに近づいてくる時の気配が、ほとんど無かった。
これは努力で身につく技術なのか、才能なのか。
そこんとこが気になる。
「はぁ、はぁ、シュウは余裕そうだね。僕はもう限界が来そうだよ」
「無理はするなよ?」
「しないよ。いきなり冒険者が嫌になりそうな訓練だけどね!」
「まぁ最初だけだろうからな。がんばれ」
「こんなことになるなら入学前から体力作りしとけば良かったよ……。も、もう限界」
「お疲れさま」
もう少しイケる。
俺の方も結構キツくなってきてはいるけど、限界には遠い。
少しだけペースアップしてみるか。
なんだろう。
走ってるだけなのに、前世では無理だったからか楽しいって気がする。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
さすがに限界だ。
もう走れない。
兄さんとの体力作りの訓練でも、ここまで追い込んだことはなかったと思うくらいだ。
だけど気持ちいい。
こんなに身体を酷使してるのに、スカッとしてる。
運動っていいな。
「よーし! 2人とも頑張ったな! ああ、倒れたままでいいぞ!」
「すいません……」
「気にするな! 限界まで走らせたのは、こっちだからな!」
確かに、そうなんだけど。
どうも寝転んだまま人の話を聴くってのは、病室を思い出してなんだかな……。
「2人とも現在の感じは悪くないぞ! 体力もそうだが、走る時の姿勢などセンスを感じる!」
「ありがとうございます」
「もちろん修正が必要な点もあるが、それはこれから普通に修正できるだろう! この授業は座学もあるが、とにかく実践が多い! それが嫌になったら変更願の準備をすることだな!」
「どうする、シュウ?」
「俺は変更するつもりはないかな。もちろん今のところは、だけど」
「僕もだよ」
「2人とも根性はありそうだな! もちろん甘くはないが、必ず成長は感じられるはずだ!」
「「はい!」」
「良い返事だ! だが今は少し休んでいろ!」
「「はい」」
厳しいだけじゃなさそうなのが助かる。
ふぅ。
なんとか回復してきた……か?
少し足がプルプルしてるような気もするけど、息は整ってきたかな。
「うーん」
「大丈夫か、マルク?」
「なんとか。シュウは元気そうだね」
「足は大変なことになってるけどな。自分が思ってるより走れないもんなんだなぁ……」
「充分でしょ、あんだけ走れたら」
そうなの?
体力が化け物みたいに多いトーマス兄さんが比較対象にいるからなぁ。
基準がグチャグチャですよ。
うん?
『パッシブスキル《持久力強化》を入手しました』
天啓を受けた時みたいな感覚になったと思ったら、スキルを入手できたみたいだ。
スキルって、こうやって手に入れるんだ……。
いきなりすぎるな。
そういえばスキルの入手に関しては、まだ知識が無かったのか。
勝手に知ってるつもりになってたよ。
「そろそろ落ち着いたか!」
「「はい」」
「これから2人には、どんな冒険者を目指すのか考えてもらう! 冒険者と一言で言っても、いくらでも型はある! 今の理想を考えるんだ!」
理想か……。
確かに冒険者になりたいとは思ってたけど、そうだよなぁ。
今のうちから方向性は考えておくべきだ。
「ちなみに現在の主流はパーティを組むことを見越して、特化系にすることだ!」
「なるほど……」
どうしよう。
途中で方向性を変えることも可能ではあると思う。
でもロスは生まれるよな。
どうせなら、そういうのは無い方がいい。
そもそも、パーティ組むのか?
まったく考えてなかったからな、そういうこと。
「先生!」
「どうした!?」
「ソロって考えは、どうなんでしょう?」
「無いことはない。難しいがな!」
「わかりました」
どうしたらいいのか。
うーん。
やっぱり自分で色々と出来た方がいいような気はするんだよな……。
どうせなら欲張っていきたい。
全部の能力を上げちゃえば、悩むこともない。
ってことで。
「俺はソロのオールラウンダーを目指したいと思います」
「僕は、やっぱり前衛かな。鎧兜で武装して武器を振るう。憧れるなぁ」
「2人とも方向性は決まったようだな! これからは、それぞれの目標に向かって一直線だ!」
「「はい!」」
想定してたより、かなり高いハードルになったとは思う。
でも。
それでも。
とてつもなくワクワクする。楽しみが溢れて止まらない。
「特化系にしろオールラウンダーにしろ、知識も経験も無駄になることはない! これからもビシビシいくぞ!」
「「お願いします!」」
「おう!」
具体的とはいえない目標。
しかも今から考えるには高すぎる目標。
だけど盛り上がってきた。
俺は、この目で、この足で、この身体全てで、この世界を感じたい。
やってやる。
限界なんて考えねぇ。
世界を楽しみ尽くしてやるんだから、余計なことを考える暇はない。
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