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25話

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 ここが第2訓練場か。

 騎乗術の訓練を主にするだけあって、めちゃくちゃ広いだけの空間だな。

 シンプルで何より。

 ここなら、ある程度スピードも出せるだろう。


 隣には厩舎らしき建物もあったし、そこで馬たちが飼育されてるんだろうね。

 普通の学生は自分の騎獣なんて持ってないのが当たり前だから、まずは学園が飼育してる馬たちで学ぶってことか。

 でも馬とは限らないのか。

 一般的には馬だろうけど、どんな騎獣が存在してるかも分からないし。


 まぁ他人のことなんて関係ないけど。

 俺は馬であるハヤテが騎獣だし、オーソドックスな騎乗術で良い。


 騎乗術が騎士に必要だからなのか、貴族かは分からないけどピシッとした人たちもいる。

 あんまり多くはないけど、ひとりか少人数の授業ばっかりだった俺にとっては新鮮だ。

 さすがに全員年上っぽいな。

 クロン兄さんやトーマス兄さんと同年代くらいか?

 エリートって言われる人たちもいるんだろう。

 難癖付けてくる人はいないだろうけど、悪目立ちすることも覚悟しておかないと。


「なあ」


「はい? 僕に何か?」


「お前もしかして、シュウ・アルウィン?」


「そうですけど……。失礼ですが、以前どこかでお会いしましたか?」


「会ったことはない。話には聞いてたがな」


「話、ですか?」


「クロンの野郎からな。今日の騎乗術の授業に参加するのもクロンから聞いた」


「クロン兄さんのご友人でしたか。はじめまして、シュウです」


「俺はアーノルド。クロンは友人なんて生易しい関係じゃねぇ。アイツは俺が超えるべき壁だ」


「はぁ……」


「クロンが俺のことをどう思ってるかは知らねえが、いつかは必ず超えてやるさ」


「良いですね、そういうの。生意気ながら応援させてもらいますよ」


「はあ? お前の兄貴を超えるってんだぞ? それなのに応援ってか?」


「もちろんクロン兄さんのことも応援してますよ。でもライバル関係の両方ともを応援しちゃいけないなんて決まりは無いでしょう? 卑怯な手とかを使うんなら否定させてもらいますけど、そうじゃないでしょうしね」


「変わってんな、お前。さすがはアイツの弟だ」


「褒めてます?」


「さあ、どうだろうな?」


 クロン兄さんは文武両道の秀才らしいし、アーノルドさんも優秀なんだろうな。

 少なくとも身体つきを見るだけで、武の方は相当やれそうな気がする。

 ライバル心はギラギラしてるけど悪い方面の感情ではなさそうだし、素直に応援したいと思わせる気持ちよさがある。

 クロン兄さんにも負けてほしくはないけどさ。


「かましておこうと思ったのに、なんかペース崩されちまったな。まぁいいか。当然だが、お前にも負けるつもりはないからな?」


「僕だって精一杯頑張りますよ。いつか超えるべき壁が2つになるかもしれませんね」


「言うじゃねぇか。楽しみにしてるぜ、シュウ」


「はい」


 今の段階じゃ、勝てないだろうな。

 だけど、だからこその楽しみがある。

 いつになるかは全く見えないけど、絶対に超えてやるんだ。

 それくらいの気持ちじゃないと、どんどん成長できない気がするし。






「集合! 騎乗術の授業を始めます」


「「お願いします!」」


「授業を受けるのが初めての人以外は、厩舎に向かって騎馬を連れてきてください」


「「はい!」」


「んでもって、初めての人が?」


「よろしくお願いします」


「シュウ・アルウィン君ね。たしか騎馬は召喚獣なんだよね?」


「はい」


「じゃあ召喚して待っておいて。あ、忘れてた。私はリュカ。よろしく」


「分かりました」


 勝手に騎乗術の先生は男性だと思ってた。

 思い込みイクナイ。


「ブル……」


「少し緊張してるのか、ハヤテ? 俺も初めてだから少し緊張してるよ」


 俺の緊張が伝播したんじゃなければいいんだけど。






「まずは騎乗して軽めに走ってみて。シュウくんは乗るところからね」


「はい」


「私がやってみるから真似してみて」


「分かりました。……よっと」


 思ったより高いな。

 じゃあハヤテ、歩いてみてくれ。

 けっこう揺れるなぁ、当たり前だけど。

 歩くだけでコレなんだったら、全速力で走ったら大変だぞ。


「力入りすぎよー」


「はいぃ」


「いずれは武器を持つことになるのよ? 全身に力が入ってちゃ、武器を振れないのは分かってるでしょ?」


「そ、うですねっ」


「もっと騎馬を信じて! リラックスよー」


「分かりましたっ」


 簡単に言ってくれますけどもねっ。

 これは思ってたより何倍も難しいぞ……。

 前世の偏ったイメージだと優雅な趣味って感じだったのによ!


 こうなったら無理に俺が主導権を握って操ろうとするのをやめよう。

 あくまでもハヤテが主だ。

 身体の力を抜いてハヤテの動きに合わせるように。

 リラックス、リラックス……。


「良くなってきたよー。もう少し身体の軸を意識してみよう」


「はいっ」


「もう少しスピード上げてみよっか。頑張って!」


「はい! うおっ!?」


 ハヤテも我慢してたんだな。

 ゆっくりゆっくり歩いてもらってたから。

 そりゃ走れるなら走りたいよねっと。

 でもこれは、いきなりスピードアップしすぎじゃないかなぁ!

 めちゃくちゃ揺さぶられてるんですけど?


 馬具のおかげなのか最低限の騎乗はできてる気がするけど、これはキツい。

 涼しい顔で乗りこなしてる先生たちが恐ろしいくらいに、まったく経験値が足りてない。

 今日初めて騎乗したんだから当然だが。

 大変だけど楽しくなってきた。

 風を切って駆けるためにも、もっと慣れていかないとね。






「ふっ、ふっ」


「だいぶ安定してきたじゃない。何より姿勢が重要だからねー。忘れないように!」


「はい!」


「せっかくだし雰囲気だけでも味わってみる?」


「雰囲気と言いますと?」


「武器が振れるかどうか。難しいだろうけど、いつかは必要になるんだし。雰囲気だけでも」


「そうですね」


 知っておいて損はないだろう。

 でも大丈夫なのかね?

 俺の今の体格では、片手剣じゃあリーチが噛み合わないんじゃ?


「僕の武器って片手剣なんですけど大丈夫ですかね?」


「イケるイケる。馬の突進力とかを利用するなら騎槍とかの選択肢もあるけど……」


「大丈夫なら、まずは片手剣でやってみます」


「地上戦とはイメージ変わってくると思うけど、まぁ雰囲気だけでも掴んでみてよ」


「分かりました」


 訓練用の木剣でいいよな。

 盾はどうしよう?

 どうするも何も盾まで持ったら、両手が塞がるじゃんか。

 まずは剣だけにしよう。


 取り回しは……。

 うん。

 地上で振るうのとは感覚が違うけど、問題なく振るだけならできる。


「準備は大丈夫? 私は盾を構えて待ってるから、好きなように打ち込んでみて」


「はい」


 デカい盾だなぁ。

 騎馬にも鎧みたいなの装備してるし、遠くからでも威圧感がハンパじゃない。


 よっしゃ。

 とりあえず勢い任せで挑戦だけしてみよう。

 頼むぞ、ハヤテ。


「行きます!」


「どうぞー」


「せえぃ!」


 スピードにのって勢いを殺さず、振り抜く!


「チッ……」


「さあ、どんどんいらっしゃい!」


「はあっ!」


 思ってるよりも接敵までの時間がないから、もっとタイミングを考えるなりしないと。

 鋭さも足りない。

 ブレが大きすぎるか。

 無意識に姿勢がズレてるっぽい。

 多少ズレるのは仕方ないかもしれないけど、できるだけ出力を安定させたい。


 斬り下ろしと横斬りが基本的になりそうだな。

 突きは微妙そうな感覚。

 そもそも突くのをメインにするなら、騎槍の方が向いてるし。






「はい、お疲れー」


「お疲れさまでした」


「騎乗術初日にしては、なかなか良い身のこなしだったよ。どうしても無駄な力は入っちゃうけど」


「ですよね。慣れですか、そこら辺は?」


「経験だろうねぇ。たまにいるセンスの塊みたいな子は初日から出来ちゃうこともあるけど、そんなのは一握りの天才だけだから」


「想像もできない世界ですね……」


「いずれは長柄の武器も試してみるのも良いかもよ? マジックバッグ持ってるみたいだし、騎乗中は別の武器を使う選択肢もあるからね」


「なるほど」


「急がなくてもいいけどさ。今は片手剣の操作に慣れることが優先だろうし」


「考えてみます」


「そうそう。若人は考えて試して失敗して経験を積んで開花するものよ。どんな時でも思考だけは止めちゃダメだからね」


「はい。分かりました」


「じゃあ今日の授業は終わりっ。ゆっくり休んでね」


「ありがとうございました」


 後半は、ほぼ付きっきりで指導してもらっちゃったな。

 他にも先生がいたみたいだから問題なかったとは思うけど、なんか申し訳なくなっちゃう。

 でも良い経験になった。

 まだ騎乗術のスキルは入手できてないけど、ふんわりと雰囲気だけは掴めた気がする。

 他の技術も同じだけど、経験を重ねるしかない。


 先生の言うとおりだ。

 全力で生きることを楽しむと決めた瞬間から、思考だけは常に動かしてないといけない。

 天賦の才が無いなら、限界まで鍛えてやればいい。

 楽しみだよ。




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