2話
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さて。
もう切り替えるしかないね。
こっちの世界を全力で楽しむために、俺は何をどうするべきか。
まず今の俺は6歳。
前世で言えば小学校に入るくらいの年齢。
こっちの世界でも子どもなら学園に入学するのが、このくらいの年齢だ。
そして俺も貴族の一員。
まぁ下級だし、裕福な商人の家の方が良い暮らしはしてるくらいなもんだけど。
祖父が騎士として活躍して爵位を貰ってからの歴史の浅い貴族だ。
貴族の一員ではあるけど、俺は三男坊。
家を継ぐことはないだろう。
2人の兄は両方とも、かなり優秀らしいしな。
それに俺を溺愛してる姉と、まだ赤ん坊の妹もいるし大家族だなウチ。
祖父母、両親、子供5人……。
賑やかです、うん。
そんでもって目標だ。
まずは学園に入学するのは近々の確定事項。
そこからの進路は任されてる風だから、俺の希望を第一に考えればいい。
騎士などの軍隊系統とか宮廷魔術師とかもカッコいいけど自由度は欠けるよな……。
そりゃあ稼げるに越したことはないけど。
やっぱり冒険者とか憧れるよね。
ある程度は自由だし、実力さえあれば稼げるし。
うん。
可能なら冒険者を目指す方向で考えておこう。
「ねぇシュウ。何考え事ばっかりしてるの?」
「そろそろ学園に入学するころだな、と思いまして」
「そうよね! やっとみんなにシュウをお披露目できるわ!」
「お披露目は勘弁してください。恥ずかしすぎます」
「なんでよー。自慢の弟なのに」
「それは、姉さんの胸の内にだけ秘めておいてください」
「はっ! 秘密の関係ってことね!」
「ただの姉弟ですから……」
姉よ。
どこで手に入れた、その価値観。
「照れなくていいのにー。もうっ。かわいいんだから、シュウったら!」
「照れてるわけではないんですが」
「はいっ。ぎゅー」
抱きしめられてます。
このブラコンぶりは、さすがに心配なんですけど。
まぁ姉さんも8歳だし、こんなもんなのかな?
確かに美少女ですよ、姉さんは。
ただ8歳の身内にドキドキするようなことはないです、はい。
「それより、そろそろ夕飯ではないですか、姉さん」
「そうね。レオドたちが呼びにくる前に行きましょうか」
解放された。
考え事してる間、ずっと抱きしめられてたからな。
学園が休みの日だからってベタベタしすぎな気もするよ、姉上……。
「「ごちそうさまでした」」
こっちの世界でも、ご飯は美味しい。
さすがに退院祝いの、あの時の料理には敵わないけどね。
まぁ基本が病院食で構成されてるからな、俺の味覚は。
「クロン兄さん、まだ僕が読んでない本ってありますか?」
「ん? そりゃ、あるけど……。あの量の本、もう読み終わったのか?」
「はい。お借りしても?」
「もちろんいいさ。それにしても、もう少し砕けた口調で話してもいいんじゃないか? 前々からだけどよ」
「これに慣れてしまって。では後ほど」
そうなんだよな。
俺としても、少しは砕けた口調で話したい。
ただ前世の記憶を取り戻す前のシュウ少年が、めちゃくちゃ固い少年だったんだよね。
あと、本の虫。
俺も前世では読書が楽しみだったから、そこは良かったんだけど。
喋り方は固っ苦しいって思う時もある。
ちょっとずつ素を出せるようにならないと。
貴族らしい話し方!
みたいな教育も受けてないしな。
「本なんて面白いか? 身体動かしてる方が楽しいって絶対に!」
「これからは身体も動かさないとな、とは思ってますよ。トーマス兄さんみたいに動けたらカッコいいですもんね」
「お、おお……。分かってるじゃねぇか! 今度訓練つけてやるよ!」
「お手柔らかにお願いしますね? まずは体力作りからだと思ってますので」
「ふーん、ま、どうにかなるさ!」
クロン兄さんは文武両道のスーパーエリートらしい。
トーマス兄さんは、かなり戦闘のセンスがあるらしい。
父さん評が、どこまで正確かは分からないけど……。
じいちゃんに続いて騎士になった父さんの言うことなんだから、そうなんでしょ。
「無理はしちゃダメよ、シュウ。学園に行ってから勉強も運動も、たくさん出来るんだから」
「もちろんです。お母様」
「まぁ、やる気が溢れるのは悪いことではないがな。あまり母さんに心配かけるようなことはダメだぞ?」
「はい、お父様。では失礼します」
美男美女の両親、まだ20代後半に見えるけど、もう40が近いんだよな。
兄も姉も妹も、顔の良さは受け継いでる。
俺も、と言いたいとこだけど……。
自分で見てるからなのか、ちょっと地味というか何というか。
悪くはないと思うが。
「こんなもんかな」
「ありがとうございます」
「でも、これらの本は難しいと思うぞ?」
「そういうのにもチャレンジしてみたいので大丈夫です。ありがとうございます」
「じゃ、頑張れよ」
「はい。おやすみなさい」
「おやすみ」
きた。
これに関しての本があることを願ってたんだ。
『魔法入門』
前世と今世の最大の違い。
こっちの世界には魔法がある。
せっかくなら使ってみたいよな、魔法。
「なになに……まずは空気中にある魔力と自分の中にある魔力を感じましょう、ね」
やり方は神経を研ぎ澄ませること……って、これだけ?
そうやって感じ取らなきゃいけないのか。
やってやる。
やってやろうじゃないか。
自分の中にある魔力を感じることの方が、なんか分かりやすそうな気がする。
自分の内側に意識を向けて、深く集中していく。
……呼吸や鼓動が大きく聞こえる。
こっちの世界で生きてる以上、魔力は誰にでもあるらしい。
そこにあって当然のものを見つけるんだ。
「ん? これか?」
前世で読んでた人体についての本の血管や臓器を表したページの記憶を頼りに、身体の内側に意識を徹底した。
そして見つけた。
それらしきもの。
あとは空気中に同じものを見つけられれば……。
「こっちは割と簡単に見つけられたな」
めちゃくちゃ疲れたけど、魔力を見つけることはできたようだ。
まだ魔法は使えない。
でも心臓付近にある魔力を動かすことは出来る気がする。
心臓のポンプで血液を循環させるように……。
全身にくまなく魔力を循環させよう。
魔法を使うことに関して、魔力をスムーズに動かせてマイナスになることはあるまい。
「くはぁ……」
めちゃくちゃ集中力使うし、めちゃくちゃ疲れるな。
これは凄い。
なめらかに魔力を動かすのが、こんなに難しいとは。
入学するまでにすることが定まったな。
1つ、知識を増やす。
1つ、体力をつける。
1つ、魔力を自由自在に循環させられるようになる。
どこまで可能かは分からないけど、頑張るしかない。
全力で人生を楽しむって決めたんだ。
全力でミッションに取り組まないと始まらないさ。
そして入学の日が来た。
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