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19話

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「お、いたいた。シュウ!」


「リッツ先生? どうしたんですか?」


「お前が特別進級試験の受験資格を得たんだ。知らせておかないと、と思ってな」


「特別進級試験、ですか? それに合格すると、どうなるんです?」


「図書館の制限された書物も読めるようになったりとか、カリキュラムを追加できたりとか……。そこまで大きくは変わらんかな」


「いや、けっこう大きいんでは?」


「なにぶん、めったに採用されない試験だからな。利用者なんて数えるほどだ」


「へぇ。そんなに特殊な試験なんですね」


「普通は推奨カリキュラムをこなしていくものだからなぁ。段階を吹っ飛ばせるくらいの学力や実力を持つ生徒なんて、そうそういないってことだ」


「そんな試験に僕が選ばれたんですか?」


「自覚ないみたいだが、なかなかに異常なんだぞ、お前は。特に学力においては卒業生と大差ないと思うしな」


「そうですかねぇ?」


 まぁ前世で自分なりに勉強したりしてたから、こっちの世界の教育レベルなら一応できる部類には入るのかな?

 転生してからも勉強は続けてたし。

 戦闘の実力が追いついてないのは残念だけど。


「その試験って受けるデメリットとかあります?」


「ないない。不合格でも今から変化もないし。どうだ? 受けてみるか?」


「なんのデメリットもないなら、ぜひ」


「そうか。試験は明日の予定だ。まぁ気楽に受けてくれ」


「分かりました」


「用は終わりだ。邪魔したな」


「いえ。お疲れさまです」


 そんな試験があるとは思わなかったなぁ。

 それにしても、明日っていきなりすぎるような気もするけど?

 予習復習とかするようなものでもないってことか。


 どんな試験なんだろう。

 口ぶりからして勉強の試験だろうことは間違いないと思うが……。

 気にしても仕方ないけど、気にはなるよね。


 制限されてる書物ってのにも、もちろん興味はある。

 だけど個人的には、やっぱりカリキュラムの追加だよな。

 新入生には選べなかったカリキュラムも受けられるようになったら……。

 また幅が広がるんじゃなくて?

 楽しみだ。

 そのためには試験に合格しなきゃいけないんだけど。




「試験?」


「そ。なんか特別進級試験ってやつらしいよ。合格しても大きくは変わらんらしいけど」


「はい? 進級試験なのに?」


「特別、な。進級しないと出来ないことの一部が可能になるだけみたいよ」


「そんな試験があるのかぁ。そんで、合格する自信は?」


「どうだろね? どんな試験かも全く分かんないからなぁ」


「よく受けるね、そんな試験」


「デメリットないからね。受けて損がないなら受け得でしょ」


「試験って、そういう感じだっけ……?」


 知らん。

 前世から含めても、大きな試験なんて初めてですからねぇ。

 受け得なら受けますよ。


「さ。組手再開しようぜ」


「そうだね。今日こそは勝たせてもらうから!」


「そう簡単には譲れないね!」




「ただいまー」


「おかえりなさいませ、ぼっちゃん」


「あ、レオド。特別進級試験って知ってる?」


「はい。懐かしいですな。やはり、ぼっちゃんも受けることになりましたか」


「やはり?」


「今のぼっちゃんの学力でいえば、当然でしょう。いずれは受けることになると思っていました」


「どう? 簡単だった?」


「昔は簡単でしたが、今のレベルが分からないので何とも……」


「そりゃそうだ」


 そもそもレオドに聞いても参考にならんわな。

 当時でも、前世で勉強してたっていうある意味チートな記憶を持つ俺より格段に頭がいいはず。

 比較にならん。

 というか比較せん、悲しくなる。


「まぁデメリットないらしいから気楽に受けてくるよ」


「それで良いと思います。気負いすぎても結果は出ませんしね」


「うん」


 ガチの昇級試験とかなら嫌でも気合い入るだろうけどね。

 こういうのは自然体が良いんだよ。

 たぶん。






 ……この教室か。

 今まで使ったことない教室だな。


「失礼します」


「ひゃっ!? だ、誰ですか!?」


「特別進級試験を受けに来たんですけど……」


「え、あなたもですか?」


「も、ってことは……あなたも試験でしたか」


「はいぃ」


「初めまして、シュウと申します」


「シャルロットですぅ……」


 なんかビビられてる?

 人見知りなのかな?

 あんまり話しかけたりしない方がいいのかもしれないけど……。

 興味持たれる可能性は上がると思うよ?

 その猫らしき動物の仮面は。

 絶対に目をひくし。


「お、2人とも揃ってるな」


「おはようございます、リッツ先生」


「おう、おはよう。じゃあ早速始めようか」


「はい」


「シャルロットも準備はいいか?」


「は、はいぃ」


「よし。では頑張ってくれ。……始め!」




 見直しとかしておくか。

 けっこう簡単だったな。

 歴史とかは流石に転生してからの知識だから、多少時間も必要だったけど……。

 数学とかは余裕だった。

 問題数が多いから大変っていうのが少しあったくらいだ。


 それにしても、シャルロットさん。

 すごかったな。

 見てないけど、問題を解くスピードが俺より格段に速かったと思う。

 普通に頭いいんだろう。

 そもそもこの試験を受けるって時点で、ある程度はできるのは当たり前なのか。


「そこまで! じゃあ回収するぞー」


「はい」


「2人とも、お疲れさん。ちゃちゃっと採点するから待っててくれ」


「分かりました」


 ここで採点しちゃうのか。

 2人分だから、あっという間に出来ちゃうのかもしんないけど。




「……おめでとう。2人とも合格だ」


「随分と、あっさりですね。もっともったいぶるのかと思ってたんですが」


「お前ら2人なら余裕だろうと思ってたしな。途中から採点するのが馬鹿らしいほどの正答率だったよ」


「よかったです」


 なんだかんだで、少し緊張してたからな。

 合格できてよかった。


「シャルロットに関しては、全問正解だ。素晴らしいな」


「うえ!? それは凄いな……。おめでとう、シャルロットさん」


「たまたまですぅ……」


 難易度はそこまで高くないと言っても、あれだけの問題数をミス1つ無く……。

 たまたまじゃ無理だよな。

 めちゃくちゃ頭いいんだな。

 頭いいだけでなく、注意力や集中力とかもずば抜けてるんだろう。

 俺もまだまだ努力しないと。

 同級生に、こんな凄い人だっているんだし。


「じゃあ試験は、ここで終わりだ。追加のカリキュラムの希望があれば、この用紙に書いて提出してくれ」


「分かりました」


 確か追加で選べるカリキュラムの中に……。

 あった!

『呪法』、『召喚術』、『騎乗術』!

 これを選びたかったんだよ。


 前世のゲームでいうところの、状態異常などをかける『呪法』。

 自分の魔力で魂の契約を結び、特殊な召喚獣を召喚して使役する『召喚術』。

 馬をはじめとする、さまざまな騎獣への騎乗技術である『騎乗術』。


 やったぜ。

 これで提出すればオッケー。

 あとは特別にカリキュラムで追加したいような物は無さげだし。


「できました、先生」


「ああ、そうか。……こいつはまた。頭も身体も疲れると思うが大丈夫か?」


「望むところですね」


「そういうヤツだったな、お前は。わかった。申請しておこう」


「ありがとうございます」


「図書館に関しては、専門の職員に聞いてくれ」


「分かりました」


「じゃあ今日は、これで終わりだ。お疲れさん」


「失礼します」


 ふう。

 ようやく終わったぁ!

 時間としては、そんなに使ってないはずだけど……。

 けっこう集中してたな。

 身体も固まっちゃったような気がするし、軽く動くとするか。




「おおっ! 弟君ではないか!」


「げっ……。どうしたんですか、アンディさん」


「たまには運動もしておかないとな! どうだ、一緒にトレーニングしないか?」


「軽い体力作りしかしませんが、それでも良いなら」


「そうか! では始めよう!」


 相変わらず圧が凄いな。

 まぁ悪い人じゃないし、ただ一緒にトレーニングするくらいなら……。




「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……」


「大丈夫ですか、アンディさん?」


「こ、これが軽い体力作りなのかね……。恐ろしいな、冒険者志望の若者は」


「もう少し続けますけど、どうします?」


「そうか。負けんぞ、弟君!」


「……体力作りで勝負なんてつけませんよ」


 油断するとペースに巻き込まれそうだ。

 冷静に自分を保とう。


「じゃあ、再開しますよ」


「ちょ、ちょっと待ってくれ弟君。ねぇ聞いてる? 弟君! 弟くーん!」


「頑張ってくださいねー」


「なんだ、その棒読みは!」




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