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第9話 着せ替えタイム


僕ら三人はライブハウスをあとにして、衣装を決める為に服屋に向かっている。

 やはり、街の人々の視線が気になる。


明らかに距離を取られている。それに内容は聞こえないがヒソヒソ話されている。それに誰かにあとをつけられている気もする。気にしすぎなのかもしれないが。


 色々と考えているうちにアパレルショップ・クロリアが見えてきた。きっと、あそこだろう。


ライブハウスは一軒家なのにアパレルショップは二階建てのデパートぐらい大きい。なんなんだ。この差は。意味が分からない。


「着きましたね。入りましょう」

 フギンはアパレルショップ・クロリアの前で止まり、言った。


 僕ら三人はアパレルショップ・クロリアに入った。


 店内はファンタジーゲームで出てくるような独特な服や人間界のような服など様々な服が並んでいる。品揃え数はかなりありそうだ。


 店の置くからグリーンの民族衣装を着た巨乳の女性が出て来た。髪は明るいブラウンのロングウェーブ。


「いらっしゃいませ。キアラ様、フギン様。そして……」

「真音仁哉です。キアラさんのマネージャーしています」


「そうですか。あちら側の世界の方ですね。わたくしは、クロリア・カミナと申します。よろしくお願いします」

 クロリアさんは頭を軽く下げてきた。


 僕も頭を軽く下げた。

「今日はどう言った御用で」


「約一ヵ月後にキアラ様がライブを行うので。その衣装を決めに」

「そうですか。オーダーメイドにしますか。店にあるものでしますか」


「どうしましょう。キアラ様」

 フギンはキアラに訊ねた。


「一回色々と試着してから考えたいです」

「それじゃ、そうします」


「かしこまりました。何か御用があればお呼びください」

 クロリアさんは店の奥に戻って行った。


「それじゃ、着てみたいものを持って来てください」


「うん。仁哉も意見ちょうだいね」

「わ、分かった」


「じゃあ、選んでくる」

 キアラは服を選びに行った。


 女の子だな、キアラは。人間も魔族も根本も一緒なのかもしれない。だって、見た目に差異は殆どないから。まぁ、角とかあるのかもしれないけど。


 僕とフギンは傍にあったベンチに座った。

「仁哉君。君はさすがですね」


「なにがです」

「キアラ様がここまですぐに心を開くなんて」


「……そうですか?」

「はい。魔王城に居る者で普通に話せるのは私と女王様ぐらいです」


「ほ、本当に?」

「えぇ。理由は明白です。姉のエヴィ様と比べられるのが嫌なんでしょう。エヴィ様は何でもすぐに出来る天才ですから」


「……そうなんですか?」

 それは辛いだろうな。することなす事全部比べられるんだから。それだけでストレスだろう。


もしかしたら、それが下を向く癖の原因なのかもしれない。


そうだったら、克服するのは結構困難になる。だって、自信をつけてあげないといけない。いや、自分で自信をつけないといけないからだ。


「はい。それにキアラ様は王族なので貴方のように普通に接してくれる人は居ませんからね」

「……色々あるんだな」


 ――20分程が経った。

 キアラはクロリアさんに意見をもらったりして選んでいる。


 あともう少しかかるかな。まぁ、マネージャーだから、どれだけ時間がかかっても何も言わないけど。それに楽しそうだし。


 キアラは嬉しそうに様々な服を持って来た。もしかして、それ全部試着する気か。明らかに衣装じゃないものもある気がするが。


「試着するね」

 キアラは試着室に向かって行く。


「あの質問いいですか?」

「なんでしょう?」


「あれ全部試着する気ですかね」

「……きっと、そうでしょう」


「ですよね」

 僕とフギンは試着室の前へ行く。


「それじゃ、一着目いきまーす」

「どうぞ」

 キアラは試着室のカーテンを開けた。


「どうかな」

 キアラの一着目の衣装はブラウンとベージュのタータンチェックのシャツと膝丈スカートの衣装だった。


「……可愛いな」

 本音がでてしまった。いけない。駄目だ。僕はマネージャーだぞ。主観的じゃなくて、客観的じゃないと。


「本当に?」

 キアラは頬を赤らめて訊ねて来た。


「う、うん」

「やった。じゃあ、これは候補としてキープで。次、着替えます」


 キアラはカーテンを閉めた。


「キアラ様。私には意見を聞かないんですね」

 フギンはぼそっと呟いた。


「あ、あれですよ。こっちの世界の意見じゃなくて、人間界の意見を聞きたかっただけだと思いますよ」

「そ、そうでしょうか」


「そうです。絶対にそうですよ」

 こ、これは拗ねてる。こんな事で拗ねるんだ。でも、僕がキアラだったとしても、フギンには意見を求めないと思う。


だって、アイドルのマネージャーじゃなくて、魔王に仕えるしもべでしょ。簡単に言えば管轄外だもん。


「それならいいんですが。まぁ、私の管轄外ですもんね」

「ははは」


 苦笑いをした。こっちの世界も空気を読まないといけないんだな。

 試着室のカーテンが開いた。


「2着目です。どう?」

 全体的にメルヘンなふわふわとした白とピンクの衣装だ。スカートの丈は短い。


「うん。いいんじゃない。こっちはこっちでありだと思う」

「そっか。これはありか。じゃあ、次はクロリアさんが選んでくれたもの着ます」


 キアラはカーテンを閉めた。


「……管轄外ですもんね。私は」

「は、はぁ」

 フギンは先程より拗ねている。あーめんどくさい。この人。自分で管轄外で分かってるなら言うなよ。気を遣うだろう。


 5分程が経ち、カーテンが少しだけ開いた。

 キアラは恥ずかしそうにカーテンから顔だけ出した。

「やっぱり、恥ずかしい」


「どうしたの?」

「え、なんて言うか」


「なんて言うか?」

「……うーん。もう仕方が無い」


 キアラは何か決心したのか、カーテンを思いっきり引っ張った。


「え、ちょい。え?」

「あんまりじろじろ見ないで」


 キアラは黒色の水着姿でもじもじしている。

 し、刺激が強い。それにこれはアイドルの衣装ではない。如何わしいイベントのやつだ。


絶対うちの事務所のタレントにはさせないやつだ。


「う、うん。ごめん」

「これはけしからんですな」


 フギンは鼻の下を伸ばして言った。

 おい、すけべじじい。もう少し言葉があるだろう。何興奮してるんだよ。


「それは却下で。次の衣装」

「うん。わかった」


 キアラはカーテンを閉めた。そして、数十秒後に開けた。 


「どうかな?」

 キアラは水着の上にエプロンをつけて現れた。なんでだろう。布面積もさっきより増えたのに。


如何わしさが増した。この姿を魔王が見たら、僕は殺される。そして、人間界は確実に消滅させられる。


「あ、アウト。絶対に駄目」

「だ、駄目じゃないですか。クロリアさん」


 キアラは店の奥から面白そうにこちらを見ているクロリアさんに言った。


「次のやつは大丈夫だから」


 クロリアさんはサムズアップをした。

 あ、あの人が犯人か。そうか。そう言えば、キアラはクロリアさんに選んでもらったって言ってたな。


「本当ですか?」

「私を信じなさい」


「どうしたらいい?」

「着替えて着替えて」


 次は如何わしいやつはやめてくれ。頼むから。

「う、うん」


 キアラは頷き、カーテンを閉めた。


「趣がありましたね」

「……そうですかね」


 フギンの評価はここに着てからかなり下がっている。

 数分が経ち、カーテンが開いた。


「どうかな」

 キアラは黒を基調としたゴスロリ姿で現れた。


「……いいんじゃないかな」

「本当に。ちょっと動きにくいけど」


「まぁ、それに近いやつをオーダーメイドで作ってもらえばいいんじゃない」

「そっか。そうだよね。クロリアさん、ちょっといいですか?」


 キアラはクロリアさんを呼んだ。


「はいはい」

 クロリアさんはキアラのもとへやってきた。


「オーダーメイドを頼みたいんですけど」

「かしこまりました。キアラ様、色々とご要望を聞きます」


「はい」

「色々とお時間が掛かると思うので、お二人はお外で時間を潰して来て下さい」


「は、はぁ」

「承知しました。それじゃ、外に行きますか。街を案内します」


 フギンは言った。


「3時間後ぐらいに戻って来てください」

「分かりました。あ、絶対にふざけないでくださいね」


 僕はクロリアさんに詰め寄る。


「分かってますよ。でも、ちょっと嬉しかったでしょ」

 クロリアさんはキアラに聞こえないように耳元で囁いた。


「あのね。クロリアさん」

「冗談、冗談。ちゃんとしますよ」


「お願いします」

「はい。任せてください」


 信用できないな。でも、任せるしかないな。専門外だし。


「行ってらっしゃい」

 キアラは小さく手を振ってきた。


「行って来ます」

 僕は手を振り返した。そして、フギンと一緒に店をあとにした。

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