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第14話 チケットを売るのは大変です


翌日。


 レッスンスタジオの端でキアラの練習姿を見ている。キアラを琉歌さんに会わせて本当によかった。なぜなら、劇的な変化が起こっているからだ。


 キアラはレッスンスタジオの壁一面に貼れている鏡に映る自分を見ながら、ダンスの練習をしている。


人が変わったみたいだ。それに失敗したりして、下を向こうとすると、左手首に付けている琉歌さんにもらったシュシュを見て、顔を上げる。


自分の中でちゃんと意識をしている証拠だ。この意識を保てばもっともっと成長するはずだ。ありがとう、琉歌さん。さすが、トップアイドルだよ。


 ドアをノックする音が聞こえる。

 キアラはノックの音に気づく事なく、練習に集中している。


 ドアの方に視線を向ける。ドアの前には僕の方を見ているフギンが立っていた。


 ……僕に何か用があるのか。

 僕は立ち上がり、ドアを開けて、廊下に出た。


「どうしました?」

「ご相談がありまして」


 フギンは深刻そうな表情をしている。何かあったのか。


「……相談?なんですか?」

「ここで話せませんので場所を変えましょう」


「わ、分かりました」

 ここで話せない事ってなんだろう。悪い事じゃなかったらいいんだけど。現段階では何も分からない。


 視線を感じる。僕はキアラの方を見た。キアラは不思議そうにこちらを見ている。


「ちょっと用が出来たから行って来る。すぐに戻って来るから」

 ドアを開けて、キアラに何も悟れないように言った。


「うん。わかった。いってらっしゃい」

「行って来る。じゃあ、行きましょうか」


「はい。それじゃ、私についてきてください」

 ドアを閉めてから、フギンのあとに着いて行く。

 




 会議室に着き、フギンと向かい合って椅子に座る。間にはテーブルがあり、テーブル上には大量の資料が置かれている。


 魔王城にはこんな部屋もあるんだな。インテリアは他の部屋と変わらず金がかかっているが。会議室の目的を知っているのか。


会議だぞ。話し合いだぞ。こんなに豪華にしなくてもいいだろ。魔王はもうちょっと色々考えた方がいいと思う。


「それで話ってなんですか?」

「……そ、それはですね」


 話すなら早く話してくれ。何かあったら、出来るだけ早く事にあった方が対処できる。事を遅らせるのは何の得も生まない。


「もったいぶらないで言ってください」

「チ、チケットの売れ行きが悪いんです」


「えーっと、何枚程はけてるんですか?」

 枚数次第で色々と考えないといけない。さすがに3分の一ぐらいは売れていてほしい。


「52枚です」

「5、52枚?ちょ、ちょっと待ってください。あのライブハウス収容人数1000人ぐらいですよね」


 想像を絶する枚数だった。こ、これはとてつもなくやばい状況だぞ。ライブまで約3週間あるかないかぐらいだぞ。なんで、そんな事が起こっているんだ。


「はい。その通りです。収容人数は1000人です」


「な、なんでそんなにチケット売れてないんですか。たしか、僕がこの前才能発掘の事をテレビで話した最後に宣伝しましたよね」


「そ、そうですね」

「それ以外の宣伝はしているんですか?」


「してません。エヴィ様のように売れると思っていたんですが」


「してない?お姉さんの方はもうファンがついているからでしょ。キアラは初ライブですよ」


 色々と宣伝しないと売れるわけがないだろう。どんなアイドルでもそうだぞ。このアルバロールは本当に大丈夫か。


「はい。その通りです」

「キアラはメディアに出たりしてるんですか。例えばテレビとか?」


「いえ。テレビには一度も出ていません。国民の中にはキアラ様の顔を知らない者も居ると思います」


「な、なんですって。ほぼ知名度ゼロじゃないですか。フギンさん。失礼な事言いますけど、チケット売り舐めてますよ」


 チケットを売るのがどれだけ難しいかを分かっていない。みんな頑張って稼いだお金で買うんだぞ。


チケット販売数分で売れるトップスターでも最初の頃は手売りなどして苦労してるんだ。


「……すいません」

「まぁ、怒っていても時間が経つだけですから、今からはどう売るかを考えます」


「お、お願いします」

 チケットを短期間で売る方法か。まずメディアに出演してもらって認知してもらわないといけない。あとはポスター製作とか。

それと日々の練習風景を撮影した動画配信とかか。


「フギンさん。動画サイトはありますか?」

「誰でも見れる無料動画投稿サイト「ニウム」がございます」


「そうですか。あと衣装はできていますか」

 衣装が出来ていたら出来ているかでまた話が変わってくる。


「はい。もう完成しています」

「それじゃ、色々と方法があります」


 よかった。あとはお金と人海戦術だ。それと、キアラの頑張りだ。キアラには酷な事になるのは申し訳ないけど。でも、チケット売る為だ。


「本当ですか?」

「はい。でも、お金はかなりかかると思いますがいいですか?」


「はい。仕方ないです」


「それじゃ、言っていきますね。まずはキアラをテレビに出演させて、ライブの事を自分で宣伝してもらう。そして、才能発掘で出来た店のコマーシャルにキアラを出演させる。あとはポスター製作。そのポスターをこの街と近隣の街や村の店に貼ってもらうように交渉。映像班を作り、ライブのプロモーションビデオ製作。さらに日々の練習を撮影した動画を動画サイトに投稿する。他にも方法が思いつき次第言っていきます」


「か、かしこまりました。早速事に当たっていきます」 


 フギンは椅子から立ち上がり、会議室から出て行った。これでどうにかなるはずだ。チケットが全部はけるかは分からないけど。


 自分で出来る事も考えないとな。僕はキアラのマネージャーだ。キアラがどうやったら輝くかを考えるのが仕事だ。

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