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第2話: 「Excelで魔法革命!? 異世界の税務局は大混乱!」

---


「なんだこの量は…」


涼は異世界の税務局に派遣され、目の前に広がる光景に呆然としていた。書類の山、いや、山脈とでも言うべき膨大な紙の束が机や床に積み上げられている。そこら中に散らばる帳簿や紙束は、すでに人の手では処理できないレベルに達していた。


「いやいや、これ絶対人手不足だろ…」


涼は思わず頭を抱えた。普通に考えて、こんな量の書類をたった一人で整理しろというのは無茶だ。これならブラック企業の書類業務だって可愛く見える。


「えーっと、確か…『王国の財務整理と税収報告書の作成をお願いします』って書いてあったけど、これどう見ても戦争の後片付けレベルだよな…?」


涼はため息をつきながら、手元にある依頼書を再確認する。派遣元のリリーは「異世界では会計スキルが魔法みたいに扱われるから」と軽く言っていたが、まさかこんな規模の仕事を押し付けられるとは思っていなかった。


「魔法じゃなくて、これただの地味なExcel作業なんだけど…」


◇◇◇


「おお、あなたが噂の“魔法士”ですね!」


突然、背後から声が聞こえ、涼は振り返った。そこには、一見して役人風の中年の男が、涼に向かって深々と頭を下げている。


「えっ?いや、俺はただの派遣社員なんだけど…」


「いいえ、王国にあなたのような魔法士が来てくださるとは、我々は本当に感謝しています!これで王国の財政も立て直せます!」


「いやいや、だから俺は魔法士じゃないんだってば…」


男は涼の言葉を全く聞いていない様子で、嬉々として手を叩いた。


「さあ、こちらへ!さっそくこの書類の山をあなたの“魔法”で片付けてください!」


涼は深い溜息をつきながら、その場に座り込み、目の前の書類を整理し始めた。


「魔法って…ただのExcelだからな…」


◇◇◇


「さて、やるか…」


涼は覚悟を決め、カバンの中から現代的なノートパソコンを取り出した。周囲の役人たちは彼の一挙手一投足に釘付けだ。彼らは涼が取り出した“謎の箱”に目を見張り、息を飲んだ。


「な、なんだこれは!?まさかこれが“魔法の道具”か!?」

「これは、魔法士の神器か…」


役人たちはザワザワと口々に話し始め、まるで神聖な儀式を見守るかのように涼を見つめる。


「いや、ただのノートパソコンなんだけど…」


涼は心の中で何度も突っ込んだ。異世界ではまだテクノロジーが発展していないらしく、彼らは電気製品という概念を知らない。それが、彼のノートパソコンを“魔法の神器”だと信じている理由だろう。


「おいおい、これで“魔法”とか言われるのかよ…」


◇◇◇


涼はExcelを立ち上げ、作業を始めた。書類に散らばる膨大な数字を入力し、関数を使って自動計算。集計表を作成し、各種のデータをグラフ化する。パソコンの画面には、整理されたデータが次々と現れ、書類の山が一瞬で片付けられていく。


「す、すごい…!」

「まさに“魔法”だ…!」


役人たちは涼の操作を見て驚愕していた。彼らの反応に、涼はついに耐えきれなくなって小声で呟く。


「いや、これただのExcelなんだよ…」


だが、その言葉は誰にも届かない。役人たちは目の前で起きている“奇跡”に感動し、興奮を隠せない。


「これが魔法士の力か…」

「一瞬で書類が片付くなんて…こんな技、我々には到底真似できない!」


「…本当に“魔法”だと思ってるのかよ」


涼は心の中で何度もツッコミを入れながら、作業を続ける。彼の手によって、王国の財務報告書は着々と完成していった。


◇◇◇


「あ、ありがとう!本当にありがとう、魔法士様!」


作業を終えた涼に、役人たちが感謝の言葉を述べた。彼らはまるで英雄を見るような目で涼を見つめている。涼はその視線に困惑しつつも、何とか笑顔を作った。


「い、いや…大したことないよ。これ、現実世界じゃ日常茶飯事だから…」


「そんな謙遜なさらずに!あなたの“魔法”のおかげで、王国の財政は立て直されました!我々の国にとって、あなたはまさに救世主です!」


「だから、魔法じゃなくてExcelだってば!」


涼の心の叫びは、やはり誰にも届かなかった。


◇◇◇


その日の帰り道、涼は異世界の街を歩きながら深い溜息をついた。


「まさかExcelでこんなに感謝される日が来るとはな…」


異世界に来てまだ数日だが、彼はすでに自分が異世界の住民たちに“魔法士”として認識されていることに気づいていた。Excelという便利ツールを使っているだけなのに、彼の周りの人々は皆「魔法」と呼んでいる。


「これ、俺の将来どうなるんだろうな…」


涼はそんな疑問を抱きつつも、ついつい頼まれると断れない自分の性格に苦笑いを浮かべた。


「結局、俺は何だかんだ言って面倒事を引き受けちゃうんだよな…」


そんな自分に呆れつつも、涼は異世界での次の仕事がどんなものになるのか、少しだけ興味を抱いていた。


「まあ、次の仕事もどうせ書類整理とかだろうけどな…」


そう言って、涼は夜空を見上げた。異世界の星々が、どこか不思議な輝きを放っていた。


---


次回、涼の「魔法士」としての噂が王国全土に広まり、さらなる無茶な依頼が舞い込む!?

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