アンドロイドの整備
ここのところアンドロイドからの整備の要求が多い。
そんなに長く使っているわけじゃないので、何が原因だろうと思っている。
「あなたのことを考える度に、エラーを起こして思考も身体もうまくいかなくなります」
と、それは言った。
アンドロイドなので、当然心臓も脳もない。部材の位置関係で不協和音でも起こしているのか。振動数を調べないとな。
チェックをしたが、特に問題のある個所は見当たらない。
まいったな。エラーの原因が見つからない。
「それ、物語で定番の『恋』じゃねーの?」
「恋?」
その手の知人と話す機会があったので尋ねてみたが、返ってきたのはそんな言葉だった。
「アンドロイドに惚れられるとは、お前も魅力的になったもんだよ。できれば生身の人間との話であってほしかったくらいだ」
「悪かったな」
俺はものに囲まれて暮らしている。人との接点はそれほど多くない。知り合いはだいたいエンジニアで、分野の違いはあれど、ある程度お互いの話を理解できる。
しかし、恋なんてものが出てきたのは初めてだ。
人間と接しているうちにその仕組みを覚えてしまったのだろうか。はたまた、その言葉を使うのが何か役に立つのだろうか。
人間でいうホルモンの分泌にあたるものは搭載させていないはずだ。当然、感情うんぬんの話ではない。
何かアンドロイドがそう言っている理由があるはずだ。
結果、本屋で役立ちそうな資料がないか漁っている。
ない。
本が大量出版された時期とアンドロイドの台頭の時期は合わない。やはりネットで探すのが無難だろうか。
しかし、ネットにそこまで専門的なことが載っているだろうか。
帰ったら、他の知り合いにも連絡をとってみよう。
何かヒントになることがあればいいのだけど。