異世界転移を書いてエタりましたが、何とか書き直して完結させた件。~勝手にカクヨムに武者修行、よもやま話~
『宮廷を追放されそうなゲス王子ですけど、中身はマジおっさんです。~何かと耐えてみましたが、もう我慢の限界。今さら遅いってぇの。好きにやらせてもらいます~』
上記の作品は2019年8月に書き始めたものです。同年に『探偵ゲーム』という作品がネット小説大賞の第一次選考に通ったのに気をよくして書き始めたのですが、悲しいかな更新が滞るようになって、ついには2021年10月にエタりました。
原因は、異世界から帰らそうとした、帰ることを目的にしてしまったことです。
実際、大変な思いをしました。設定やプロットは有りました。後は書くだけだったんです。ところが、書いてみるとそう簡単ではない。僕の実力ではかなりのハードルでした。
通常、異世界に行くのには神様や精霊が必要で、何かの手違いがあったと理由付けられる。もっというと、神様も何も出て来ず、理由付けさえされない場合がある。よくよく考えてみればそりゃぁそうです。僕たちだって何で生まれて来たか、どうしてこの両親なのか、なんのために生まれて来たのかなんて誰にも教えられていない。
変な理屈をこねるよりもこれはよっぽど、いや、これ以上ない説明、設定なんです。転生したのにストーリーの中で何の説明もないとか言う人がよくいるでしょ。違いますって。自分の胸に手を当てて考えてみて下さいって話です。そっちの方がリアルでしょ。
では、異世界から帰らそうとすればどうすればいいか。異世界はとどのつまり虚構で、作者の考え次第で何とでもなる。現実はそうじゃない。そこにちゃんとあって僕らの考えなんて入る余地が無い。
現実からファンタジー(虚構)の世界に行く。ファンタジー(虚構)から現実に戻る。有るものから無いものへ。無いものから有るものへ。
無から有。それが“帰りにくさ”に繋がっていると思う。神様も、手違いは一度償っていますしね、神様に頼らずに帰らなくてはならない。つまり、異世界から帰らすには神様以上の説得力、読者を納得させる理由がいるってこと。そもそも神様自体もファンタジーの一部で、神様が現れた時点で異世界スタートなんですがね。
そのまま異世界でスローライフを送ったり、ハーレムを造ったり、最強になる方が読者としてはしっくり来るし、その方のが現実を忘れて楽しめる。
それをもくつがえさせる設定の妙とは? 異世界から帰還させる。それはちょっとやそっとじゃない。複雑怪奇、奇妙奇天烈。僕らが何で生まれて来たのか以上の理屈を考えなければならない。
それを読者に分かり易いようファンタジー(虚構)を現実に近付けてみたりして物語全体に違和感を持たせず、ファンタジー(虚構)の世界へ自然に組み込んでいく。
ストーリーとは別に、そんな馬鹿げた設定について幾つもの伏線を張らなくてはならない。当然、張った伏線は回収されなければならないし、異世界の成り立ちとか秘密とか謎とか設定を説明しないといけない等、やることはいっぱいある。
悩ましい上に相当な文字数がいる。書き手にとってなかなかのハードルであることは言うまでもない。だから、WEB上ではあまり見かけない。まぁ、読者としてもそんな海の物とも山の物ともつかぬ物語に貴重な時間を使いたくないはずだ。
だって、目の前に間違いないスローライフとか、ハーレムとかがあるじゃないですか。
ここまで書いといて何なんですが、転生先から簡単に戻る方法を考え付いた人もいます。それは虚構から虚構へ。そうです。異世界から異世界へ。Aの異世界からBの異世界に転移し、Aの異世界に帰る。
これは大発明だと思います。これなら転移と帰還に文字数を割かなくてもいい。ストーリーにもすんなり入れるし、没頭できる。考えた人、頭いい。
異世界から帰って来ましたよ、ってところから物語をスタートする手があったりもする。ですが、これは僕の考えている異世界からの帰還ではない。帰還するために謎を解いたり、冒険したりしない。それは大体が異世界から帰還した者が現世で魔法を使ったり、物語自体をギャグにしたりしている。
かといって、異世界からの帰還を目的にした面白いファンタジーが今までにないってわけじゃぁない。カクヨムに掲載されている『職員室転移~先生たちのサバイバルと、会議と、恋愛と、謎と、いろいろ~』 夏井涼 著。
これは、今まで僕が語って来たことに踏まえ、ストーリー全体でも楽しめる。実際人気もかなりある。おそらくは異世界からの帰還というより、学校が教職員と共にそのまま転移したってところに皆の目が止まったのだろうと思う。
ただ、転移した教職員にはそれぞれ事情がある。だってそうでしょ。現実世界に家族を残して来ているんですから。
異世界からの帰還を目指すっていうのが面白くないってわけでない。複雑な設定やかなりの文字数を読まなくてはならないかもしれないが、それに挑戦している物語は設定が十分練られ、緻密に計算されたプロットで一話一話を積み上げて行っていると思っていい。だから絶対に第一話からエンディングは決まっているはず。
読む価値はあると思う。というか、もっと異世界からの帰還があってもいい。ジャンルとしてスローライフやハーレムと並んでいいはずだと僕は思う。読者としての僕の個人的な感想ですが………。
本タイトルにもある通り、僕はカクヨムで武者修行をしてきました。一つに『宮廷を追放されそうなゲス王子ですけど、中身はマジおっさんです。~何かと耐えてみましたが、もう我慢の限界。今さら遅いってぇの。好きにやらせてもらいます~』を書き終えることが目的でした。
環境を変えればなんとかなると思い、一念発起し、カクヨムで再チャレンジをしたのです。
で、思ったのはカクヨムにも面白い作品があるわあるわ。向こうの方がテンプレに限らず自由に書いているって印象でした。それを押して敢えて言うとするなら、強いのは配信ものとラブコメでしょうか。
ざまぁとか婚約破棄とかは、なろうでやってくれ的な感触を受けました。あくまでも僕個人の感想なんですが。
いずれにしても、カクヨムはまだ煮詰まって無いような気がします。コメントのやり取りなんかも頻繁で、コミュニティーもしっかりしていて、仲間内の推しがしっかりとある。読者本位ではなく、作者さんたちにも楽しんでもらおうって考えが見え隠れしている。
対してなろうは生き馬の目を抜くって印象ですかね。エタッてしまって、ずっとそれが心に引っかかり、戦う気力が失われた男が立つ戦場では無い。僕の勝手な推測なんだろうけど、なろうの方のが全作品でのエタり率が高いのではないでしょうか。
そのうえ、僕の書いているものが書いているものです。異世界から帰還してオチなのだから最後まで読んで、ああ、そういうことだったんだ的な話を投稿するところではない。
日間ランキング優先なところがある。回転が速いというか、回転する円盤に初動で中心にいないとあっという間に遠心力で外に吹き飛ばされてしまう。それが生き馬の目を抜くって表現になったのですがね、初動で失敗したらそれで終わり。だから、ランキングにある良作も長編ではなく短編ばかりになってしまう。
もちろん、初動の失敗は、小説の内容にしろ、投稿の方法にしろ、自分が下手だからです。それは分かっている。だけど、書き始めたら最後まで書きたい。
僕は2年以上更新が滞っている『宮廷を追放されそうなゲス王子ですけど、云々』を書き直し、カクヨムで完結にこぎつけることが出来ました。
カクヨムには応援ハートシステムがある。これが有るか無しか、この差はデカイ。
一話一話にハートを付けていく仕組みなんですが、これがすごくやる気にさせられる。底辺にとっては星を貰うより、こっちの方が嬉しかったりする。だって星なんてすぐ頭打ちしてそっから微動だにしないじゃないですか(笑)。
でも、ハートは一話更新するたびに確実に増えていく。どこかの誰かがちゃんと読んでくれているって証拠。それを目の当たりにするとその人のためだけでも話を進めなくてはならないと思ってしまうのは人の心情ではないでしょうか。
これのいいところはどこかの誰かがハートを付けてくれた、はて? 誰だろうとハートの主をチェック出来るところにある。
ハートの主が分かると次にこう思う。僕の作品にハートを付けてくれたんだ。だったら、もしかして、この人の作品は僕の感性に合う、とね。おそらくはそうやってカクヨムのコミュニティーは出来あがって行ったんだろうと思う。
ともかく、そうやってハートの主に応援して貰って『宮廷を追放されそうなゲス王子ですけど、云々』を何とか書き上げることが出来ました。
完結バージョンは全て一新され、2024年4月29日より第一話から新作的に再度投下する予定です。タイトルは
『バック転からのバックロール。パワード・エクソスケルトンで召喚者をぶっ飛ばす! ドラゴンと魔法の王国のゲス王子になってしまった俺がどうやって現世に帰還したか。【完結バージョン】全202話』
『宮廷を追放されそうなゲス王子ですけど、云々』については【エタりバージョン】と表記させて頂き、そのまま残しておこうと思っております。
理由はコメントやブックマーク、ポイントをお付け下さって応援して頂いた方々に申し訳ないからです。どう考えてもこれを無にできない。
【完結バージョン】は文字通り完結しています。【エタりバージョン】をお読み下さった方で、もし、引き続き読んで頂けるなら有難い限りです。随分と長い時間お待たせして申し訳ありませんでした。
【完結バージョン】は基本的に【エタりバージョン】から全て書き直していますが、特に大きく変わって行くのは第7章以降からです。この辺りから完結に向けて徐々に伏線を加えていっています。
改めて【エタりバージョン】を読んで頂いた方々に深くお詫び申し上げます。特に評価を付けて下さった方、ブックマークをしてくださった方におかれましたは多大なご迷惑をお掛けいたしました。
この場を借りて深くお詫び申し上げます。
なお、カクヨム武者修行の成果として下記の作品を上げておきますね。僕の大事な戦利品です。
嘘(笑)
大変勉強させてもらえた作品です❤
『ギリシャ物語』 本城 冴月 著
https://kakuyomu.jp/works/16817330648949826464
『ギリシャ物語』はシリーズもので、人によって何作目が好みだと論争が出来るほど全てクオリティーが高い。
歴史ものでもあるが、読む人を選ばない。特にファンタジー好きには是非とも読んで頂きたい。色んな発見があるはずだ。というか、この作品に出合ってから歴史に興味を持ったという人も出て来そう。
なにしろキャラクターの存在感に引き込まれていく。応援もしたくもなるし、その世界に一緒にいるんじゃないかと思えるほど没頭できる。一つに、語りがえらッそうでもないってこともあるんじゃなかろうかと僕は分析する。歴史物は得てしてそうなりがちですもの。
『ギリシャ物語』を一作ではなく、最初からシリーズ通して読んでほしい。主人公がどうしてそうなったか、最後にどうなるか、多くの人に見届けてもらいたい。
『毒好きエルフの即し旅~勇者パーティーから追放された聖人に拾われました~』 神霊刃シン 著
https://kakuyomu.jp/works/16818023213614364150
おそらく作者は食べ物関連の仕事をしているんじゃないかと推測する。食べ物についての描写は一切手を抜いていない。ファンタジーについても、相当な巧者だと見ている。
例えばダンジョン探索。洞窟を進んで階段を下りる、ただボスが強いってだけのダンジョンは描いていない。描かれているのはオーソドックスなダンジョン。でも、他と全く違う。ゲームでもそうでしょ。ゲーム本を見ないと攻略出来ないダンジョンがある。
聖人はそれをスラスラ攻略して行く。エルフも頑張って付いていく。だってエルフは聖人に恋してしまったから。
聖人に何かされる度にドキドキしている。それがクスッとなる。ラブコメ味付け大さじ一杯って感じ。読んでいて楽しい。
エルフの語りもおもしろい。女性目線で読めば共感を持てるし、男目線で読めば可愛い。上手く出来ている。男女、読み人を選ばない作品。
『カクリヨの鬼退治~追放された少年が。サメの着ぐるみ少女と共に、勇者パーティに逆襲する冒険譚~』 上野文 著
https://kakuyomu.jp/works/16817139557990913699
語りが凄い。連載が現423話で現在更新中で、当然、登場人物もごまんといる。なのに読んでいて、「こいつ、誰だっけ」とはならない。その点について作者は相当気を使っているはずだ。
語りもリズミカルでスラスラ読めてしまう。初めは技術を駆使して挑んでいたって感じだけど、今や作者固有のスキル、“芸”まで昇華している。
ストーリーも少年紙を思わせる造りで、戦いがあって、終わったら大団円、ヒキがあって新たな強敵。そして、それに伴う主人公の成長。敵より弱い状態で敵に挑んで、最後にはその敵を上回る。
かっけー。マジでエンターテーメント。しかも、毎日更新で程良い長さ。何もかも忘れて楽しめる作品。
『『花』魔法✿のぷち勇者と世界樹☘の迷宮』 左手でクレープ 著
https://kakuyomu.jp/works/16817330655737293302
これは完全に出来あがっている。この作者唯一の語りではないだろうか。ポップというのかなぁ。なかなか言葉には表せないけど絶対に読んでもらいたい。読めばわかるさ(by アントニオ)
すべった。シロ目。
癖になる。またあの語りを読みたくなる。もちろん語りだけでない。世界観も面白い。
フローター達はギルドから、世界樹にある迷宮のクエストを請け負うんだけど、そのクエストも何やら世界樹の意思と関係あるらしい。階層を進みモンスターを倒す度にその謎に近付いて行く。
ファンタジーとって世界観は重要だ、と僕は思う。それが面白いだけで読む価値がある。
登場人物も個性豊かだ。大の大人がビビるクエストも主人公ら少女は全く物おじしない。それどころかピクニック気分だ。それがいい。世界樹の迷宮は僕から見ても普通にやばい所なんですよ。
皆、ワイワイガヤガヤやっている。読んでいて楽しい。ワクワクもする。
『職員室転移~先生たちのサバイバルと、会議と、恋愛と、謎と、いろいろ~』 夏井涼 著
https://kakuyomu.jp/works/16817330651238395614
この作品は風の便りというか、噂はかねがね聞いていた。マジで凄い作品。作品に風格さえ漂っている。
職員室転移も初めは皆、力を合せ和気あいあいだったん。それがさぁ、サバイバルとか、会議とか、恋愛とか、となれば分かるでしょ。それも孤立した共同生活。
悪いやつがいるんですよぉ。謎の部分に差し掛かって来ると、そいつらはもう正体を隠さない。お前本当に先生だったんか。まぁ、えげつない。皆の心もてんでバラバラになっていく。和気あいあいからのこれだから、その落差で読者はのめり込むこと間違いなし。
『漂流教室』(古くてすいません)ってあったでしょ。あれはね、残酷描写しか印象に残っていない。『職員室転移』の方は残酷描写が一切ない。むしろ、それがリアリティーとなって、僕の年齢ぐらいになると、まぁ、そうなるわなって納得してしまう。
現342話で更新が続いている。ここまで来るともう最後の最後まで目が離せない。誰が生き残って、誰が現世に帰れるのか。
『戦国自衛隊』みたく(古くてすいません)、生き残れるが現世には帰らないってパターンもあるかもしれない。頼む。悪いやつだけは必ず悲惨な最期を迎えてくれ。
〈 了 〉