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39 愛は世界を救うのです


 天国から地上を見下ろすことのできる大きな水鏡を覗く女性が1人。


 背中に真っ白な大きい羽が生えていて腰まである長さの銀色の髪がキラキラと虹のプリズムを湛えて柔らかな陽の光を反射する。



「上手くやってるわ。流石は私の愛娘だわねぇ」


 

 ニッコリとその艷やかな唇の端を引き上げると、花が綻ぶような微笑みを見せた。


 手に持った菫のブーケを水鏡の脇にそっと置く。



「うふふ、生きて約束は守れなかったけれども、ちゃんとお互いの子供が一緒になって国を豊かに幸せにしたから、許してちょうだいね? フローラ」



 水鏡を微笑んで覗いていると、小さな羽根の生えた天使達がワラワラとやって来て、女神のような(かんばせ)の女性の周りに集まった。



『そろそろ出発だよ、アイリス』



 何処からともなく、優しげな声が響く。


 花が咲き誇る草原の上を一陣の風が吹き抜ける。



『君の娘の記憶の1部に前世の魂のエッセンスを与えたことで、1つの世界が平和になったみたいだね』



「ええ、神様。ありがとうございました」



『約束通り君は天使になってしまうから、もう人に生まれ変わることは出来ないのだけど、後悔はしてないね?』



「ええ。何もせずに指を咥えて友人の愛する国の崩壊を見るだけなど、死んでも死にきれませんでしたから。それに私の娘が断罪される運命から逃げ出すことが出来ただけでもありがたいですわ」



 彼女は、コロコロと笑った。



『天使になってしまうと、人としての感情と記憶は失われるけれど、地上に降りて愛する者たちの守護をする役目はこなせるからね』


「ええ。私はそれで幸せですから」


『じゃあいってらっしゃい』



 一瞬世界が白く輝くと、アイリスと呼ばれた天使が羽を広げ菫色の目を閉じた。



「創造主様。これから生まれてくる彼の国の王子の守護天使として地上に向かいます」



 一礼して顔を上げ目を開けると、彼女の顔にはもう既に笑顔はなく感情の機微は感じられない。


 その顔はイリスに瓜2つだった。


 彼女は優雅に一礼し、地上へと向かって1歩を踏み出し空に飛び立った。



『ああ。お願いしますね守護天使』



 草原に神の声が響き、水鏡の横に置かれた小さなブーケを小さな天使達が水面にポトリと落とすと、ゆっくりゆっくり水鏡の中へと金色のリボンで纏めた菫色のブーケは沈んで行った。



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