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34 見た目8割強の法則


 前世の夢の中に時折現れるヤツがいる。


 彼は



「アンタねえ、男女の仲なんて見た目8割強から始まるんやぞ。だからな、見た目に気を使わないヤツなんか最初から敗者だよ。それとな寝取られるなんてぇのはさ、お互いにさあ、ほしい言葉も態度も与えないからそんな事になっちまうんだよ。要するにコミニュケーション不足ってヤツだよな」



 と、言いながら狭い寝台のような場所に横たわる患者の顔をぎゅうぎゅう押しては、悲鳴をあげさせるのである。



「相手の性格なんか初めて会うときに分かるか? 汚え格好の顔面崩壊した男好きになる? なんねぇでしょ? 男前好きでしょ?」



 もう1回、額に手をかけるとグッと目の上を引っ張り上げるようにして力をいれた。


 きゃ~! 痛い! と騒ぐ女性に向けて



「女だって、最初見たときダッサイ服着て顔がわかんねえくらい化粧されたら、俺等だって好きになれねえよ~、ホントの顔見せて? ってなるって。ほらよ、顔ちっちゃい美人ちゃんになっただろ~」



 寝台で痛い痛いという女性に手鏡を渡して、どこが変わったのかを説明する。


 女性は小顔になったかどうかを自分の手で包むようにして確認し、大喜びで飛び起きて



「センセ~! ありがとう! 顔ちっちゃい~! 目めっちゃ大きい!」


「綺麗に土台は整えたからさー、後はメイクと笑顔で頑張れや。そんでもって見た目で上手いこと釣り上げたヤツは、後から躾をして上手いこと飼いならせばいいんだよ」



 一旦考える様な仕草で天井を見上げると、



「あとな、時間作って一緒に出来る趣味と、1人でやりたい趣味をする時間を作んねえとお互いに飽きちまうから、気を付けろよ。ああ、それとなぁ、付き合ってからもお互いに尊重しあえる相手じゃないと駄目だぜ」


「分かった。センセに言われたら説得力あるね。奥さんとめっちゃラブラブだもんねえ~」


「おう。任せとけ」



 彼女は財布からお金を取り出して彼に渡す。



「あとはブティックにでも行ってセンスのいいマヌカンにでも服を見立てて貰いな。婚活頑張れや」



 そう言いながら彼は煙草に火を点けると、こっちに向かって手を振った。



「健闘を祈る!!」








 パチリ、と目を明けると目の前にいつもの寝室の壁紙が見えた。



『・・・あれ?』



 つまりは、ほしいモノをお互いに与え合う事と、共通の趣味を持つ事と、私的な趣味と相手とのコミュニケーションを取る時間が必要って事?


 え、確かこの国の王族って仕事漬けだけど?



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