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32 災難か?役得か? 


 個室に通された女性侍医は首を横に振り、残念ながら適合する解毒薬は無いとアーレス王子に告げた。



「国王ご夫妻に報告後、公爵閣下への連絡を手配します」



 一礼し、顔が真っ青になったイリスの侍女を引き連れて部屋を去って行く。


 要するに『オメーがイタシて解毒しろ』という事だ。


 アーレス自身も媚薬の入った水に口は付けたが、殆ど飲んでいなかったので耐えられない程ではないと思った。


 だがイリスは、グラスの半分程度を確実に飲んでしまっている――


 解毒薬がないのなら媚薬による発情を解消させるしか助かる方法は無い。



『このままだと耐えきれず心臓の負担になります』



 全く耐性の無いイリスの血流は、急激に兇器の様な媚薬を全身に巡らせる。そのせいで呼吸が早くなりすぎて心臓の負荷が激しいのだと侍医は平然とした顔で王子に告げた。



「こんな形ですまない・・・」



 アーレスは上着とシャツを脱いでソファーに置くと、呼吸の荒いイリスが横たわる寝台に乗り上がる。



「心配せずとも閨の教育は済んでいるから」



 そう言いながら彼女に贈った自分の瞳色のドレスを脱がし始める。


 アーレスは目の前に現れたシミ1つない肌の白さに鼓動が跳ね上がったのを感じた。


 身体を締め付けていたコルセットの紐を緩めると、僅かに彼女の呼吸が深くなった様に感じた。



「謝らなくとも大丈夫です」



 額に汗を浮かべ、切なそうな笑顔を見せる彼女をアーレスは搔き抱いて深く口付けを落とした。









 アーレスの舌と唇が、媚薬により熱を帯びた肌に心地よく感じてイリスはゾクリとした。


 手の平へのキスから始まり、全身を舌が這い回りはじめると息も絶え絶えになり快楽に身を捩るが、身体の奥がもっと欲しいと訴えその強欲な欲求に身震いする。


 時折チクリとする度に白い肌に赤い小さな花弁が散ってゆく。


 赤い印がつく度に嬉し気な顔をするアーレス王子を頭の隅で冷静に見る自分と、快楽に堕とされていくのを嬉々として受け入れていく雌の自分がせめぎ合うのを感じた。



「怖い?」



 耳元で低くて優しい声がする。


 彼女は首を横に振り、その先を求めた。



 2人の息は上がり、角度を変えて何度も何度も重なる唇。


 聴こえないはずの早鐘を打つような心臓の鼓動が何故か耳に響き、抱きしめ合い触れ合う肌は刻々と熱を持ちつ。そしてしっとりと甘やかな匂いに感じられる汗が混ざり合う。


 潤んだ菫色の瞳と深い青い瞳の視線が切なげに絡まると、アーレスが眉尻を下げて一瞬情けない顔をした後で、



「ごめん。やっぱり止まれなくなった」



 最後にイリスの目に映ったのは、()()()()()()のアーレスだった―――





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