20 牽制ってこんなもんでいいでしょうか
「初めまして、アーレス王子殿下の婚約者に選ばれました、レージュ公爵家当主が娘イリスで御座います。今後とも殿下共々宜しくお願いします」
皇子と王子、2人の挨拶と謝罪を受けるためにイリスが美しい所作で最上級のカーテシーを行ったあと、顔を上げると何故か彼らは赤面していた。
「いや、これは・・・」
「美しいな。父上の言っていた通りだな・・・」
2人は目を若干ギラつかせて傾国の美女と謳われた女性の忘れ形見を穴が開くほどガン見している。
「アーレス、羨ましいな。こんなに美しい婚約者とは。恐れ入ったよ」
皇国の皇子が、テーブルにサーブされている紅茶に手を伸ばしながら、イリスを見つめるものだからティーカップに指を突っ込んでしまう。それを見てプッと笑う隣国の王子も耳が赤く染まっている。
「ふふ、羨ましいかい? でも彼女は誰にも渡さないからね」
そう言いながら、アーレスとイリスはピッタリと身体の側面を引っ付けるようにして、2人掛けのソファーに腰を落ち着けた。
未婚の男女が客人の前で見せる姿というよりは新婚ホヤホヤのバカップルの距離である・・・
「なあ、アンタら距離が近すぎない?」
「そうだぞ、ちょっと見せつけ過ぎだろうアーレス」
「そうかな? いつもこうだけど。ねえ、イリス」
そう言いながら、アーレス王子は自分の手をイリスの腰に回した。
「ええ。国王陛下ご夫妻に習って私達も仲良くしなければいけませんもの。ねえアーレス様」
ニッコリと花が綻ぶような、美しい笑顔で微笑むと彼女は、婚約者の肩にコテンと頭を載せる。
「その通りだよ」
そう言いながら王子は、腰に回していた手をイリスの肩に置き直して、彼女の虹を湛えた様な銀髪の毛先を指先でもて遊びながら彼女の頬をスルリと撫でた。
それに気が付いたイリスは妖艶に微笑むと、可愛いピンク色の舌先でペロリと軽く彼の指先を舐めたのだった。
まだ年若い王子達は顔が真っ赤になった。