19 乱入者
「実は今日はね、例の皇国の皇子と、隣国の王子が押しかけて来てるんだよ」
実にいい笑顔だが、怒りのオーラが感じられるのは多分気の所為じゃないだろうなといった様子で続けるアーレス王子。
「え、何故でしょうか」
「あの2人は元々お互いに3つの国を留学しあった仲で、私の友人なんだよ」
アーレスが、何年間か外国へ留学していたのは有名な話である。
「彼らがこの間の無礼な行為を君に謝罪したいんだそうだよ」
額に青筋が立っている?
「だからね、授業の後のお茶会に招待することになったんだ。ごめんね急にこんな事になってしまって」
成程、この間の奇襲は友人の彼女を見物するつもりだったんですねと、表情が抜け落ちるイリス。
「私達の親世代は君の母上のファンが国を跨いで多いらしくてね。彼らは父親達に感化されてるみたいなんだ。今迄彼らの親が大人しかったのは、君の姿がアレだったからかも知れない。ひょっとすると公爵閣下は君の姿を隠して守るために、あの格好をさせていたのかも知れないと今になって気が付いたよ」
王子が困ったように眉根を寄せる。
「彼らは君を自国に呼び寄せたがっているんだ。多分だけど隙あらば、と親達に要らぬ入れ知恵をされてるみたいでね」
あ、青筋が増えた。
「少々私に考えが有るんだが、協力してくれるかい?」
イリスは王子を見上げて頷いた。
王宮の本宮、つまり王族の住居区画にある国王一家がプライベートで使うために構えられた季節折々の花が咲き乱れる特別美しい中庭である。
王子妃教育の後、お茶会は最近ここでよく行われるのだが、今日は国王夫妻は欠席で代わりと言っては何だが、隣国の王子と帝国の皇子が一緒である。
彼らの居なかった直前まで、アーレス王子の背中にブリザードが吹き荒れている幻覚が見えていたが、今は至って平常運転中のようだ。
腹の中は分からないが・・・