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10 アーレス第1王子


 国王夫妻、つまりアーレス王子の父と母に彼が言い含まれていた事はこうである。



『いいこと? アーレス。イリス嬢を貴方の魅力で惚れさせるの。そうすればレージュ公爵だって、お前とイリスの婚姻を快く承諾するわ』


『そうだ、アーレス。母の願いを叶えてやってくれ。イリス嬢を娘として迎え入れたいというのは、もはや王妃の悲願なのだ』


『・・・はあ』



 別に他の御令嬢でも良いじゃないかと思う王子なのだが、父は母に滅茶苦茶甘い。其れは幼い頃から王族にはあり得ないと周りから云われる位の愛妻家だ――子供の頃から側でその砂糖を吐きそうなイチャイチャ具合を知っている身としてはあまり逆らいたくはない・・・身の破滅を招きかねないので――。


 しかもどうやら父親達と公爵閣下はお互いに意固地になっているような気がする・・・ 


 彼は未だに養子を迎えておらず、イリス嬢を王家に送り出す準備は全くしていないように、王子の目から見てもそう感じる。


 そもそも婚約者の打診など望んで居なかったのだろう。



『父上、何故にそこまでイリス嬢に固執するのですか? 別に他にも優秀な候補がいるのではありませんか?』



 その言葉を聞いていた母が悲しげな顔をした。



『あの子の母親であり、私の親友でもあったアイリスとの約束なのよ・・・私達の子供を一緒にさせて、この国を私達で良くしていくのよってね』



 残念ながらその約束を果たす前に、公爵夫人は流行病で突然亡くなったと聞く。



『そうね、意地と云われようともこれだけは譲れないの。私とアイリスの最後に交わした約束だもの。でもね貴方も本当のイリスの事を知れば、絶対に婚約者に選んでしまうわよ』



 母である王妃は、少しだけは嬉しそうに表情を変えると自分の頭上に輝く王冠をそっと撫ぜたのだ。


 そういうことか――


 王子は前日の事を急に思い出しながら、自分の手の中にスッポリ収まる彼女のレースグローブで覆われた指先にキスをする。


 

「君をもっと知りたいと思う。私の婚約者になってほしい」



 懇願するように、青い瞳が瞬いた・・・



 でかした! と王座から若干身を乗り出す国王夫妻と、其れを遠目に見て、若干不機嫌になる公爵閣下。



 ・・・あ。面倒くさい。



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