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殿下のインスピレーションが爆発しています

「ガブリエル。随分楽しそうだったね? 何の話をしていたの?」


 ごきげんよう。

 ガブリエルです。


 今夜は、「魔族の守護者」のお披露目夜会です。


 殿下が両手で大事そうにわたくしの手を包んでいるのですが、皆様に誤解されることはないのでしょうか?



 リーズ国では、男性の髪が短髪なので、女性の長い髪に特別な思い入れがある男性が多いとか、

 リーズ国は、魔法剣士の国なので、お姫様抱っこは、リーズ紳士の「作法」で深い意味はないとか、

 リーズ国は、恋愛主義国なので、女性から男性へのアプローチが肉感的とか、

 母国ダジマットと異なる点が多すぎて、困惑し続けております。


 男性が女性の手を大事そうに包むなんて、母国では夫婦や婚約者の間でしか行わないスキンシップですが、リーズではお姫様抱っこ同様にエスコート相手に対する「作法」のようなものでしょうか?


 振り払うわけにもいかず、ただただ困っていますわ。



 殿下のエスコートで入場し、ファーストダンスを踊った後、沢山の貴族令息、令嬢達とお話させていただきました。


 聖女は、神より「攻略対象」が抱える「心の闇」の情報を得ていると言われています。


 殿下が生まれるタイミングに合わせてベビーブームが来たらしく、騎士枠には騎士の家系の男爵令息と騎士団長の次男という2人の「推定」攻略対象がいます。


 女官たちの話では、騎士の家系の男爵令息の方がイケメンらしいです。


 魔術師団についても、魔術師団長の四男と殿下の側近候補の魔術の鬼才の2人が聖女や殿下と同じ学年で学園へ入学します。


 聖女にとって、家格、将来性、美醜のどれが最大の選択要素になるのかわかりませんし、わたくしはリーズ国の貴族に詳しくありませんから、基本は殿下の隣で話を伺っているのですが、闇を抱えていそうな方なんて、見つかりませんわ。



 婚約者のいない殿下は引く手あまたで、ちょいちょいダンスに誘われて抜けるのですが、その度に「何の話をしていたのか」聞かれるので、殿下がいない時は、殿下の話をすることにしました。


 繰り返しますが、わたくし、リーズ国の貴族事情に詳しくありません。

 話についていけていないことが多く、聞かれても上手く答えられないのです。


 殿下がいない間は、殿下の話をすることにすれば、大事なことを聞き逃す心配がありませんもの。



「殿下がファッショニスタだという話ですわ」


 殿下はわたくしの男装衣装だけではなく、リーズに滞在する間にダジマットの姫が着用するデイドレスや訪問着などの手配にも熱心です。



「ほぅ。私の話をしていたんだね?」


 リーズ国は、フェアリードレスというか、スケ感のある素材を何重にも重ねて色をつくる繊細で裾にかけて広がったドレスが多いようです。


 明るいオレンジ色の素材に白を重ねて柔らかい色調に仕上げたり、鱗みたいに重ねてグラデーションを作ったり、花びらのように重ねて動きを付けたり?


 個人的にはあまり興味がないので、わたくしの説明では美しいドレスに思えないかもしれませんが……



「ええ。訪問着を作るのがあんなに大変だと思わなかったという話です」


 殿下がパターンナーとアレコレ相談している間、体中に布切れをたくさんピン止めされましたわ。


 特に殿下の髪色のシャンパンゴールドの訪問着と、瞳の色のグリーンのデイドレスをあつらえた日は、半日ぐらい掛かりましてよ。


 光沢のある青地のドレスに黄色のシースルー素材を重ねて、神秘的な淡い緑に見せるとか何とか言ってましたわ。

 恐ろしく気合の入ったデイドレスですわね?



 公務が滞っていないか心配だわ。

 殿下が学園に行っている間はわたくしが少しお手伝いするのもいいかもしれません。



「あぁ。出来上がるのが楽しみだね」


 殿下は婚約者がいらっしゃらないので、着せ替えができる相手がわたくししかいないのが問題ですわね。


 きっと長年くすぶっていたアーティスト魂が爆発したのです。


 学園で良い人が見つかるでしょうか?

 いえ、正確に表現するなら、学園で殿下のインスピレーションを刺激する人が見つかるでしょうか?



「さて、ラストダンスだよ」

「はい」

 

 殿下に連れられて、ラストダンスに入ります。

 わたくしたちのダンスを観賞しようと、踊らないことにした人も多いみたいで、ホールは広々としています。


 練習した甲斐があったというものです。

 ええ。殿下は何事もこだわるタイプですからね。

 ファーストダンスに際しても、いろいろと指定がありましたの。


 でも、リフトはやりすぎでしたわ。


 次の夜会は普通に踊りましょうね?



 聖女は殿方の心の闇をついてくると言われています。

 殿下はファッショニスタで、いろいろと細かい方ですが、闇を抱えているようには見えません。


 今夜お話をさせていただいた方々も、普通の美しい殿方にしか見えませんでした。


 もっと親しくなれば闇が見えてくるのでしょうか?


 兎も角も、今日の任務はこれで終わりです。


 つかれましたわ。


 え? お姫様抱っこで送ってくださる?

 あ、ありがとう。

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