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殿下は心配性です

「ガブリエル! 急に神聖国に行くなんて、心配するじゃないか! しかも5日もなんて!!」


 ごきげんよう。

 ガブリエルです。


 殿下に転移紋の前で、出待ちされましたわ。


 ヒマなの?



「殿下が『侍従服はダメだ、神官服にしよう!』とおっしゃるから、神聖国の神官試験を受けに行ったのですよ。女官たちから聞いていらっしゃるでしょう?」


 神聖国の神官試験は3日間です。

 一般教養、魔術知識、魔術実技が1日ずつあります。


 神官試験は、そのテスト内容が包括的かつ網羅的なので、魔術師のレベルを計るのにも大人気です。


 神官にならない魔術師の腕試しとしても受験できます。

 就職にも有利です!


 リーズ国から神聖国までは国を2つ跨いでいますから、わたくしの魔力量では1日では転移できないため、往路と復路でそれぞれ中間地点で一泊しました。


 計5日間。

 寄り道はしていません。


 それもこれも、殿下が「神官服にしよう」とおっしゃったからですよ?


 ダジマットの姫には神官の身分なんていりませんからね。

 「神官服」だけが目当てで試験を受けたのですよ?



「なっ! 適当なローブを着て、神官ですって言えばいいだけじゃないか?」


「何をおっしゃってますやら。ダジマットの姫が身分詐称なんてするわけがないでしょう?」


 殿下はわたくしの耳をふにふに触って、魔力残量を確かめています。

 耳は薄っぺらいので指で挟むと魔力の量が測りやすいのです。


「あぁ、全然魔力が残っていないじゃないか? 話は明日聞くから、今日はもう寝なさい」


 殿下が転送紋の前で出待ちをしていなければ、もうすでに湯に入って、寝る支度をしていましたよ?


 それに、神官試験を受けただけですから、おもしろい話なんてないですよ?


 殿下はわたくしをお姫様抱っこで部屋まで運ぶつもりらしいです。

 流石、魔法剣士ですわね?


 まぁ、疲れているので、今日はこのまま甘えることにしました。


 うん。

 なんというか、お姫様抱っこって、いいですわね。

 女官達がキュンだと言っていた気持ちがわかりましたわ。



 翌朝、早くから殿下より呼び出しがありました。

 しかし、お話よりも先に神官衣装を確定させなければなりません。


「殿下、わたくしのワードローブまでお連れしますので、お手をこちらに」

「ああ」


 わたくしが手を差し出すと、素直に乗せてくださいました。

 短い距離でしたが、転移ははじめてなのか、着地の際に膝をついておられましたわ。

 次回は腕をお支えして転移しましょう。



「わたくしは今回、飛び級で下から3つ目の神官試験を受けさせてもらいました。第3位階の神官に許されるローブは3色ですの」


 殿下が着せ替えをしたがると思ったので、少なくとも3色準備したのです。


 神官の第1位階に受かると、小麦色の麻のローブに神官紋を入れることが許されます。

 第2位階は茶色で、第3位階は赤です。


 それ以降も虹の色の順に神官の最上位の紫まで全9位階ありますが、今回は一発で合格する必要があったので、安全を見て第3位階を受けさせてもらいました。


 混沌、深淵、幽玄などの特別な魔術師は、黒ローブを着ています。


 魔法使いの憧れです。



「ベージュと茶色と赤か……」


「はい。黄色は第5位階の色なので、ゴールドはダメです。第1位階は小麦色までと決まっています」


 ファッショニスタな殿下が、わたくしが神聖国で購入してきた標準ローブを着せ替えては、思案しています。


「そうだな。色はベージュが似合っているようだが、羽織るだけで前が締まらないのだな」


 実に殿下らしい保守的なご意見ですわね。



 殿下がノッてきたようなので、後は任せます。

 殿下はわたくしに服を着せるのが得意なので、後は言われた通りに動くだけですわ。


 脱がせるのが得意だとわたくしも困りますが、着せるのが得意な分にはいいのではないでしょうか?



 ベージュというか小麦色は、初代混沌が残した映像活劇の中のヨーダローブ色です。

 わたくしも大好きです。


 茶色のオビワンローブも好きですから、別の日にでも殿下に頼んでみますわ。

 今日はベージュだけにしないと衣装係の負担が増えて可哀そうですからね。



 神聖国の民族衣装は、この初代混沌が残した映像活劇「星間戦争」に影響を受けた着物風の戦闘服にローブを羽織るスタイルで、かっこいいのよ。


 ちなみに母国ダジマットの民族衣装は2代目混沌が残した映像活劇「指輪物語」のエルフ服に似ていたので、これを参考に更に美しさを磨いたスタイルになったと聞いておりますわ。



 わたくしが考え事をしている間にも、殿下はベージュのローブの首元や胸元に隠しボタンを着けて閉められるようにするとか、フードは大き目に、でも重くなり過ぎないようにとか、袖は伸ばして手が見えないようにするとか、裾も伸ばして足首まで隠すとか、ブーツはこれにしようとか、テキパキと女官と衣装係に指示を出していますわ。



 殿下はわたくしの身体をアチコチ触ってしまっていますが、これは「おさわり」には抵触しないのかしら?


 エスコートに差し出された腕に胸をくっつけるよりも、よっぽど「おさわり」っぽいと思いますけれど?


 でも、わたくし、殿下に触られるのはイヤじゃないのよね?

 アーティストや医師は、異性と別枠にいるのかしらね?


 しかし、いくら保守的だといっても、手まで隠さなくても良いと思いますのよ?



 あぁ、ファッショニスタな殿下に振り回されて、また話が前に進みませんでしたわ。

 殿下の趣味に付き合い続けたらエタりそうですわ。


 でも、心配しないで。

 悪役令嬢は、未完成の日誌は公開しないから!

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