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殿下は保守的です

「ガブリエル! 侍従服はダメだ! 神官服にしよう!!」


 またですか?


 ごきげんよう。

 ガブリエルです。


 あと3週間で聖女が学園に入るというのに、聖女の「この世界の案内役」であるわたくしの男装設定が再び変更されることになりそうです。


 まず、学生になるのはダメだとなって、近侍になったのですが、侍従の制服である軽装騎士服がお気に召さないようです。


 服なんかのことよりも、近侍の仕事を覚える作業に集中したいのですが……



 この軽装騎士服は、初日からケチがついておりました。

 それでも何とか殿下をなだめながら1週間やり過ごしたというのに……


 初日はリーズ宮殿の女官たちの渾身のキュン装備で殿下にご挨拶差し上げましたの。



 そうしたら殿下が飛んできて、シャツの第一ボタンをパパっと締めた後、わたくしの手を引いて、殿下の寝室の奥の衣裳部屋に連れていかれました。



 そして、わたくしの着せ替えが始まったのです。


 殿下が3年ぐらい前に使っていた胸当てや金属製の手甲、膝当てなどを手際よくつけていくので、わたくし流石に止めましてよ。


 これでは軽装騎士ではなく、重装騎士ですわ。


 どこに鎧で身を固めた姿で学園に殿下をお迎えにいく近侍が存在するのですか! って。


 金属防具はナシの方向でご納得いただけたと思ったら、今度は、軽装騎士のピタピタタイツを隠すためロングのサーコートを着せられました。


 サイドベンツのスリットが入っていて、動きやすくはあるものの、股もお尻も完全に隠れるようになっていますわ。


 殿下は保守的ですわね。



 でも、殿下のお召し物ですからね、わたくしが着ても王子様に見えましたわ。


 わたくしがそう指摘しますと、女官たちが王宮の衣装係に相談して「同じ路線のもっと庶民的な衣装」を探してきてくれましたの。


 それでようやく、王子様から、若き司令官ぐらいにクラスダウンしましてよ。


 このあと女官達が王宮の衣装係と連携して、学園が始まる前に、同じ路線で更にクラスダウンさせて「侍従」っぽく見える衣装をあつらえてくれることになっていましたのよ。


 そこまでしたのに、「侍従服はダメだ!」なんて、困った方です。



 何故こんなことになったかと申しますと……

 「おさわり」が発生したからですわ。


 いえ、正確には、「おさわり」が発生したところを殿下に見られたからです。



 この、若き司令官風は、モテ装備ですの。


 王宮を訪れる若い令嬢たちが、よく目の前で転ぶようになりましたわ。

 手を差し伸べるしかないでしょう?


 それで、足をくじいたと言う令嬢に腕を貸して医務室まで連れて行くのです。


 この1週間で10回以上、医務室へ行きましたわ。


 こういうのは新鮮ですわね。

 恋愛結婚主義だと、こういうことになるのかしら?


 母国ダジマットでは、10才ぐらいの頃には婚約者がいるのが普通ですからね。

 年頃になって異性に触ろうとする令嬢はおりません。


 そもそもダジマット宮殿には若い令嬢が来ません。

 若い魔術師の女性だったら来ることもありますが、皆さん質素なローブ姿で、歩きやすい履物なので、転んだりしません。



 ここの令嬢達は、腕を貸したら、しがみついてきたり、胸を押し付けてきたりするのです。


 その度に殿下付きの女官に「王太子妃レース脱落者リスト」に加えてもらうように連絡しておりますわ。

 女官によると、体を密着させることで、男性側の筋肉量をチェックしているのですって。


 殿下は保守的ですからね、ああいう方は合わないと思いますの。



 もしかすると令嬢達はお姫様抱っこなどを、期待されていたのかもしれません。


 リーズ国は、魔法剣士の国なのです。

 誰でも身体強化魔法が使えて、お姫様抱っこは紳士の嗜みなのですって。


 でも、わたくしも姫ですからね。

 他の令嬢をお姫様抱っこなんて、したくありませんわ。


 むしろ物質転送魔法で、令嬢だけ医務室にお送りしたいところです。


 でも、一緒に歩いてみて実は性格が良ければ「王太子妃レース推薦者リスト」の方に加えてもらおうと思って医務室までお連れしていますの。


 今のところ該当者はいらっしゃいませんけれどもね。

 わたくしの目は、厳しすぎますかしら?



 兎も角も、そうやってわたくしが貴族令嬢を医務室に連れて行く様子が殿下に見つかったのです。


 ぶっ飛んできましたわ。


 テキパキと指示を出して、他の侍従にお姫様抱っこで運ばせていました。


 そして、わたくしは、殿下の執務室で、「不用意に人に触れさせないようにしなさい」とお説教を受けています。



 実はわたくし、聖女の活動期に魔法剣士の国に入ることを想定して、剣術の聖地セントリアで、修行しましたのよ。

 わたくしに触れようとする者の手を切り落とすので、狂犬バイオレットと呼ばれていますわ。

 ほほほ。


 わたくしの場合、剣術じゃなくて、自己流の魔法剣で、断面を凍結するので、後でちゃんとくっつきますけどね。


 だから、殿下に心配されなくても、結構強いのです。

 ちょいちょい触れてくるのを許しているのは、後にも先にも殿下のみですわ。

 

 作戦会議に出なかった殿下はご存じないようね。


 でも、今、それを言い出すともっと火に油を注ぐかの如くお怒りになられるかもしれませんわ……


 困りました。

 本当にストーリーが全然進みません。

 今回なんて、殿下のセリフ一つ分しか話が進みませんでしたわ。

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