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殿下に大事な話を打ち明けました

「え~。ガブリエル、またその男の話?」


「殿下。デービッド様の話ではありません! もし、もしも、その、えっと……」


 ごきげんよう。

 ガブリエルです。


 殿下にとても大事なお話があるのですが、どう切り出して良いものか、困ってしまいます。


「その、えっと? 何? その男、ガブリエルの元カレとか?」


「全然違います!! も、もしも、わたくしたちの間に紫色の瞳の子供が生まれたら、その子が魔王と悪役令嬢になるのです。だから、ガーコ財閥の当主の妹の血筋について、ある程度の知識を備えておいた方が良いと思うのです」


「わたくしたちの子供? 紫色の瞳??」


 殿下には珍しいビックリ顔です。

 涼し気王子顔よりも数段幼く見えてこっちの方が好きですわ。


 いえ。そんな場合ではありませんでした。



「ええ。先日、いにしえの聖女と勇者パーティーの子孫の話をいたしましたね? 聖女が勇者パーティーを率いて魔族を武力で滅ぼそうとしていた時代の話ですが……」


「ああ。勇者パーティーの『僧侶』が今の皇王家なのではないかという話?」


「そうですわ。その頃は、人族の領土、魔族の領土などの概念はなく、世界のすべてが魔王が治める土地でした。聖女は、多くの場合、魔法が使えない人族の集落に生まれ、『仲間探し』をしたのです」


「行く先々で魔族を惨殺しながら、ね」


 魔族と人族の悲劇の過去です。


「聖女の仲間のジョブは、様々ですが、聖女と結ばれることが多かった『勇者』は、魔素が扱えない代わりに腕力があり、『僧侶』は、神力と呼ばれるグラビトン系の魔素を扱い、『魔魔法使い』はフォトン系の魔素を扱い、『シーフ』は、エレクトロン系の魔素をそれぞれ扱っていたのではないかと、推測される資料があるのです」


「聖女の仲間には、『踊り子』や『ハンター』なんてのもいただろう? それらのジョブも毛色の違う魔素を扱ったのかな?」


「ええ。『錬金術師』や『遊び人』というのもありましたわ。でも、わたくしが注目しているのは最後の勇者セントリアのパーティーです。つまり、『剣士』、『僧侶』、『魔法使い』、『シーフ』ですわね」


「ふぅん」


 いけません。

 殿下が退屈そうなお顔をはじめました。


 少し、ぴりつかせてみましょう。

 スルーされるよりましですわ。


「剣士セントリアの名をそのまま苗字として掲げた人族の王セントリア家、僧侶は恐らく現在の皇王家、魔法使いは恐らく現在のブライト家、そしてシーフはこれからわたくしたちの親戚になるかもしれないガーコ財閥の宗家ですわ」


 殿下のお顔が「何っ?」という風に険しくなりました。

 話を聞いてくれる気になったかしら?


「それじゃぁ、ブライトと神聖国は元は敵勢力だったってことじゃないか? しかもガーコ財閥も??」


「わたくしの問題は、千年前の敵勢力がどうだったかではなく、その3つの家は、他のどこよりも厳密に血統管理をしてきたということですわ。皇王家は水盆に子供が生まれやすい『相性の良い相手』を選ばせるようになった。ブライト国は混血化して体内の魔道回路のほとんどを失ったことをひた隠した。でも、ガーコ財閥については、政略結婚を徹底していることしかわかっていませんの」


「商会は市井の組織だからね。プライベートなことは、堂々と隠せるからね?」


「つまりですね。殿下。もしも、お兄様とガーコ財閥の令嬢の間に子供ができなかったら、わたくしと貴方の間に紫色の瞳の子供が生まれるということなのです。そして、おそらくわたくしたちの間には2人以上の子供が生まれないのです……」


「ん? どこからそんな話になるの?」


 説明がへたでしたわね。

 殿下の顔に「はて?」と書いてあります。


 殿下の素の表情は、本当に幼く見えて、かわいいわ。


 っと、それどころじゃないのでしたわ。

 わたくし、どうもダメですわね。

 つい、殿下の表情に反応してしまいます。


「殿下も以前、話題に出されたことがあります。ダジマット王女アレクサンドラ様の取り込みに失敗したピーターバラ王子ジョナサン様の失敗理由は、お二人に紫色の瞳のお子が生まれたからなのです」


「え?」


「殿下が話題に出された後、調べましたところ、アレクサンドラ王女とジョナサン王子は、第一子のサミュエル様がお生まれになった後、剣術修行を称してセントリアに渡っています。きっと紫色の瞳の子供を隠すためですわ」


「その代のダジマット王子の子供は紫色の瞳ではなかったの?」


「いいえ。その代の王太子に子供が生まれた記録がないのです。そして、その時のダジマット王太子妃はガーコ商会の宗家の令嬢だったのです。それで、もしかすると『シーフ』の末裔も魔族との間にお子ができにくいのではないかと……」


「ええっ? それって、もしも、ガブリエルの兄君と奥方の間にお子が生まれなかったら、私たちの間に次期魔王と次期悪役令嬢が生まれちゃうってこと?」


「その覚悟が必要なのです。もともと殿下とわたくしが婚約するなんて想像できませんでしたので、悪役令嬢の試練が終わったら、ダジマットに帰って国内貴族のどなたかとお見合いでもしようかと思っておりましたの……」


「なっ! そんなのダメだからね?」


「無論ですわ。でも……」


「でも?」


 あ。いけません。

 殿下が何か誤解して、背中から怒りのオーラが立ち上っていますわ。


「違います。とっても失礼な言い方になるので言いよどんだのですが、リーズ王族のスペア的なポジションで、公爵令息のデイン様がピーターバラに婿に出ることになったら……」


「あぁ、なるほど。リーズ王家の後継者がいなくなるから、ガブリエルがダジマット王になって私がその王配になると差し支えるということだね?」


「はい。だからデイン様の婿入りの話を聞いたとき、両親と兄に相談したら、両親も兄もわたくしたちの間に紫色の子供が生まれたらダジマット家は断絶して、リーズ王家に『魔王』職を譲ろうと……」


「は?」


 まぁっ!

 かわいい。


 いえいえ。いけません。

 大事な話ですもの。

 緊張感を持たないと!


「いにしえの昔から『聖女』はピンク色の髪色で、『魔王』と『悪役令嬢』は紫色の瞳なのです。そして、紫色の瞳は実はもともとのダジマット家の色ではないのです。だから他所の王家に移るのであれば、それはそれでよいだろうとの返信でしたわ」


「はぁっ?」


「いえ。まだ、わかりませんのよ? お兄様にお子が生まれるかもしれませんし、わたくしたちは、まだ、その、そんな……」


 え?

 殿下、何を呆然としているのですか?


 ここは照れるところですわよ?


 まぁ、呆然としたお顔もかわいいからいいのですが……


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