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マディス大森林

応援ありがとうございます。

楽しんで読んで貰えると嬉しいです。

 マディス大森林は、我が忌々しき故郷である騎士国家アルビオンと、数年前から滞在するようになった工業国家バルカンの間を大きく跨ぐように存在する天然の国境線である。

 およせ千年以上昔から存在する森林は、人類が横断するには向かない魔境であったが故に、自ずと二国の国境になったともいえる。



 その魔蠢く土地に、今二人の男女が足を踏み入れていた。


 一人は、俺。

 もう一人は、カレン。


 目的は魔物の討伐。

 正しくは、間引き。

 一応、冒険者の端くれとして街に滞在する俺の、主な収入源の一つである。


 冒険者には、自由度の高さと数の多さを見込まれて様々な仕事を組合(ギルド)を通して、受けられるシステムができている。

 魔物討伐だけでなく、希少薬の素材集めや戦争の傭兵など、種類は様々だ。


 ただ、誰しもが見境なく好きに仕事を選べるというわけじゃない。

 そんなことをしたら、誰も受けない仕事などが出てきたり、ものによっては冒険者の数を減らすだけになったりもするからな。


 だから階級、というものでどの仕事を受けられるかは明確に決められているのだ。

 銅級、銀級、金級の形で。

 俺は、銀級冒険者だ。


 仕事を大して受けてないというのもあるし、金級にあがるには素の実力。

 要は、神代具(アーティファクト)無しで様々な試験を超えなければならず、俺はそこで引っかかって上がれないらしい。


 困ってはないから別にいいんだが、腹は立つものだ。

 足りないものはどんな手段を使ってでも、補えばいいじゃないか。

 強さとは、そういうものだろ。



 嫌な感情に支配されつつあったから気晴らしに、冒険者なりたてのカレンにちょっかいを出してみる。


「足、挫くなよ。初心者が森に入った時に一番多い怪我だからな」

「大丈夫ですっ。気をつけてますから!」


 朗らかな返事を返す彼女。

 だが、顔は思いっきり足元を見ていた。


「気をつけるって、それはダメだろ」


 指で銅貨を弾き、彼女の隙だらけな後頭部に当てる。

 弾かれた銅貨は綺麗に俺の手の中に帰ってきた。

 当てられたカレンからは小さな呻き声が漏れる。


「お前、その状態で戦ったり逃げたり出来ねえだろ。ちゃんと前向いて歩け。あくまで、自然体。自然体を維持しつつ、足で地面を感じながら歩け」

「そ、そうは言いましても……難しくないですか?」


 別に無理難題を言っているわけじゃないんだがな……と、頭をかく。


「これからここに立ち入る機会がぐんと増える。奥に行く前に身に付けないといけないんだよ。言い訳しないで、やれ」


 そう言うと、カレンは少し考え込み。



「あっ! なんかそういう神代具ありませんか!? アルクノラクニナール、みたいな!」


 バカなことを言ったアホの額に、もう一度銅貨を当てた。


「いたぁい!」

「お前、随分とふてぶてしくなったな? 数日前までは、殺さないでー!とか言ってたくせに、どういう心境の変化だよ」


 本当に、そう。

 ほぼ自分のためだけに、彼女へ力を貸してやると言ったあの日から、だいぶカレンは変わった。

 不満もよく漏らすようになったし、よく笑うようにもなった。

 以前感じた雰囲気とは全然違う。

 これが素なのか?と不思議がるぐらいにはアホの子になっていた。


 その変わりようには、彼女に寝場所を提供してやっているナターシャもたいそう驚いている。


 そういや、ナターシャはお留守番。

 いや、店番である。

 彼女もカレンを手伝うことを決めたようだが、しばらくは店にかかりきりになるため、もっぱら俺が彼女の手助けをしている。

 ナターシャは金級冒険者だし、さっさと動けるようになって欲しいんだけどな。

 純粋な強さ、などよりも二人より三人の方が出来ること増えるし。



 そうやって、ちょっとした教えをカレンに仕込みながら、森の中を進んでいく。

 やがて、目的地に着いた。


 身を隠しながらある地点を指さし、カレンにそれを伝える。

 そこには白黒模様の巨大な熊が居た。


「今回の目標、デビルパンダだ。戦い方は教えたから、分かるな? 俺の合図で飛び出すぞ」

「えっ、あんな可愛いのに、殺すんですか……」



 腑抜けた発言に、心へ不安を抱えながら、腰に下げたベルトから一つの銃を取り出す。


「頼むぜ、『空蝉』。狩りの時間だ」

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