変態欧州海軍事情―超フ級戦艦編―
「大佐、日本の新型戦艦の秘密を探ろうと各国のスパイが躍起になっているのは知っているな?」
「ポーツマス周辺にはそれっぽい奴らがわんさかいますよ。もう少しうまく隠せと言いたくなりますな」
MI6の長官室で語らう二人の男。
一人は部屋の主であるマンスフィールド・スミス=カミング海軍中将。もう一人は、ダブルオーナンバー筆頭の凄腕エージェントであるシドニー・ライリー海軍大佐である。
戦艦『扶桑』の存在は、欧州列強の海軍に強い衝撃を与えていた。
各国の諜報機関は情報収集に躍起となっていたのである。
将来的なソ連の脅威に対して、英国は欧州列強と対ソ共闘を望んでいた。
『フソウショック』は戦後復興の名のもとに戦力整備をサボっていた各国海軍に活を入れる絶好の機会であった。
「幸いというべきか、我々は既にフソウの詳細な情報を入手している」
「フソウの情報を餌に連中の首根っこを掴めと?」
MI6は各国の諜報機関に先んじて、扶桑の詳細な情報を掴むことに成功していた。元より、扶桑の建造には英国の技術者が大勢関わっており、情報収集の前提条件からして勝負になっていなかったのであるが。
「この際、末端だけでなく統括している大物も把握しておきたい」
「また無茶を仰る」
史実知識を活かして常に主導権を得ていたMI6なだけに、今回のスパイの大量流入は面白くない事態であった。そのため、扶桑の詳細情報を餌にすることによって、国内に侵入している大量のスパイを炙り出すことにしたのである。
「君はヨーロッパだけでなく、ソ連とアメリカにも人脈があるから適任と判断した」
「旧大陸の連中はともかく、なんでアメリカまで?」
「つい最近入った情報なのだが、アカ共はアメリカに戦艦建造を打診しているらしい」
「俺が居た頃のアメリカの造船業は軍縮で干上がってましたからね。相手がアカでも受ける可能性はあるでしょうな」
MI6はアメリカとソ連の密約については知らなかった。
というよりも、疑いすらしていなかった。自由主義国家の騎手とも言えるアメリカが、社会主義の親玉のソ連と組むなど有り得ないと思い込んでいたのである。史実知識による弊害と言えよう。
「というわけで、君にはダブルスパイを演じてもらう。経歴は用意してある」
「それとなく情報を流せば済む話では?」
「同盟国の機密を流すのだ。それなりの手順を踏まないと後々にまで悪影響が出るだろう」
「やれやれですな」
肩をすくめるシドニー・ライリーであるが、悲壮感は微塵も感じられなかった。
『諜報活動こそ、男子が一生を傾けるに足るスポーツである』との考えを持つ彼は、難しい任務ほどやりがいを感じる強者だったのである。
彼の暗躍によって扶桑のデータを得た各国の海軍は、超フ級戦艦の建造を目指した。それぞれのお国柄や経済事情、その他諸々が反映された結果、比較的真っ当な艦から火葬艦まで出揃うことになるのは数年後のことである。
「どうするのだ!? 我らの現有戦力ではフソウには対抗出来ぬぞ!?」
「情報によると日本海軍にはフソウ以外にも、有力な戦艦が4隻あるらしい」
「コンゴウタイプだったか。とすれば最低でも5隻は必要だな」
フランス・コミューンの人民海軍首脳部は頭を悩ませていた。
戦力の大半がフランス共和国へ亡命した結果、彼らの手持ち戦力は雑多な補助艦艇のみであった。
「そういえば、建造中のまま放棄していた戦艦があったな。あれを流用出来ないか?」
「ノルマンディー型か。名案だな」
「新たに建造するよりも早くて安上がりだ。それでいこう」
史実と同じく、この世界でも第1次大戦の戦局ひっ迫によってノルマンディー型戦艦は建造中のまま放棄されていた。人民海軍はそこに目を付けたのである。
「でもあれの主砲14インチだろ? 最低でも15インチは欲しい……」
「砲の新規設計は時間がかかるぞ?」
「ボーリングすれば良いだろう。1インチくらいならどうにかなる!」
超フ級戦艦を目指す以上、火力は優越する必要があった。
しかし、新たに大口径砲を開発するとなると時間がかかる。早急な就役を目指す人民海軍は、内筒をボーリングすることで手っ取り早く大口径化を図ったのである。
既存の砲身を加工するだけなのでコストが抑えられ、砲架の補強と揚弾機の改正で済むため主砲塔を新設計するよりは時間を短縮出来るメリットが存在するが、当然ながら砲の寿命は短くなるデメリットもあった。
「主砲の仰角もこの際上げよう。装甲を弄る時間は無いからせめて射程だけでも増やさねば……」
「理想は遠距離から封殺だが、そんなに上手くいくか?」
「やらないよりはマシだろう。とにかく一刻も早く戦力化する必要がある」
この改装によって、従来は14インチ砲弾を最大仰角18度で最大射程18000mであったが、15インチ砲弾を25000mまで到達させることが可能になった。しかし、砲身が薄くなったことに加え、装薬を増やしたために砲身命数は著しく減少することになった。
「火力は良いとして、このままでは速力が足りん。せっかく会敵しても速度差で逃げられたらお話にならんぞ」
「ボイラーを重油専燃の新型に、機関は全部タービンに積み替える。これで速度は上がるだろう」
「でもタービンは燃費が……」
「根拠地に貼り付けて、迎撃に徹するなら多少足が短くてもなんとなる!」
この時代の蒸気タービンは燃費が悪く、大西洋での行動を想定していたノルマンディー型は巡航用に蒸気レシプロ機関を採用していた。しかし、運用条件が変わって燃費よりも速力が重視されたことで、蒸気タービンが採用された。
新型ボイラーとオールタービン化によって出力は8万馬力は発揮可能と見積もられたが、1番艦の公試では最大で24ノットが限界であり、急遽艦首を延長する措置が取られることになった。その際に凌波性を意識してかQE型高速戦艦を意識したようなシアの効いた艦首に成型された。
1番艦『ノルマンディー』は1923年に進水し、以後続々と完成していった。
戦力的な価値はともかくとして、超フ級戦艦5隻は周辺国には重大な脅威であり、他の列強も超フ級戦艦の完成を急ぐことになるのである。
「共産主義者達は建造を放棄していたノルマンディーを戦力化するつもりらしい」
「その手があったか……!」
「さすがに建造中の船までは持ってこれなかったからな」
「感心している場合か!? 我らも早急に手を打たねば……!」
アルジェリアに建国されたフランス共和国では海軍首脳部が頭を悩ませていた。
MI6から、フランス・コミューンが建造している超フ級戦艦の情報がもたらされたからである。
「我らもプロヴァンスを改造するべきでは?」
「コミュスト共は建造途中だからやってのけたが、同じ真似をするとなると無駄に時間がかかってしまうぞ」
「しかも、ノルマンディーは15インチ4連装3基12門、仮にプロヴァンスに同様の改装をしたとしても……」
「15インチ連装5基10門では火力不足というわけか」
ノルマンディー型戦艦の改装案を手に入れた共和国海軍では、同様の改装をプロヴァンスに出来ないか試算してみたものの、その結果は芳しくないものであった。火力も速力も劣ると分かっているのに、わざわざ改装する酔狂な人間はいなかったのである。
「とすると、新たに建造するしかないな」
「可能なのか? 設備はともかく、工員が足りるか?」
「巡洋艦くらいならなんとかなるが、さすがに戦艦クラスの建造は厳しいだろうな……」
英国の援助によって急速に工業化しつつあるフランス共和国であったが、現状で戦艦の建造は難しかった。造船業は労働集約型の産業であり、大量の工員が必要だったのである。
現在急ピッチで工員の育成が進められていたのであるが、到底間に合うものでは無かった。であるならば、取るべき手段は一つであった。
「……イギリスからQE型を安く譲ってもらうのはどうだ?」
「それは良いな! 連中も作り過ぎただろうから恩も売れる」
「とりあえずノルマンディーと同数は欲しいな。早速打診してみよう」
QE型高速戦艦は37隻も建造されたのだから、5隻くらいなら安く譲ってくれるかもしれないという期待を抱き、外交筋を通して英国に譲渡を打診したのであるが、返ってきた答えは意外なものであった。
「16インチ砲搭載の新型戦艦を建造しないかだと!?」
「い、いや、確かに道理にかなっている。それに仮にQE型を5隻譲ってもらっても、運用する下士官が足りん」
「それくらいなら、量より質で対抗しようということか」
「16インチ砲搭載艦なら2隻あれば十分だ。これは作るしかない……!」
英国はQE型をスケールアップして、16インチ砲を搭載する新型戦艦を提案していた。戦間期に可能な限り造船所に仕事を振っておきたいという思惑があったのであるが、他国を実験台にする英国の悪い癖が発揮されたとも言える。
『リコンキスタ』(再征服)、『マルトー』(鉄槌)と命名された2隻は、1922年に英国のヴィッカース造船所で起工された。設計図を流用したことに加えて、16インチ砲の開発が既に済んでいたこと、さらにブロック工法を採用したために、わずか2年で進水することになる。
既に日本で長門級戦艦(史実の天城型巡洋戦艦もどき)が進水していたために、世界初の16インチ砲搭載艦の名誉を得ることは出来なかった。しかし、その強烈な存在感は他国(特にイタリア)を発狂させたのである。
「ジャポネーゼはなんという戦艦を作ったのだ!?」
「エチオピアの悪夢を繰り返すなと世論が沸騰しています」
「政府も新型戦艦の建造に積極的です。ここはチャンスと見るべきでは……?」
イタリアに返礼使節団を乗せた戦艦『扶桑』が来航すると、歓迎ムードと同時に危機感が沸き起こった。『アドワの戦い』の記憶が未だ生々しいイタリアにとって、有色人種が作り上げた戦艦に危機感を抱くのは当然のことであった。海軍に対する突き上げも厳しいものとなり、対応を迫られたのである。
「カイオ・ドゥイリオの改装でお茶を濁すわけにはいきませんよね?」
「弩級をどう弄ってもフソウには勝てんだろ。却下だ」
「とすれば、アレしか無いですね」
「船台に載せたまま放置してたフランチェスコ・カラッチョロか。でもあれは時間がかかるぞ?」
「対抗策があると分かれば世論も落ち着くでしょう。日本とは直接敵対することは無いでしょうし」
フランチェスコ・カラッチョロ級戦艦は戦前に起工していた超弩級戦艦である。
第1次大戦勃発に伴う資材不足により全艦が建造停止していたのであるが、国内世論の後押しを受けて建造が再開されることになったのである。
完成すればQE型と同等の主砲と28ノットの高速を発揮可能な高速戦艦となり、戦力的には十分であった。しかし、建造を再開してからとんでもない凶報がもたらされたのである。
「フランス共和国が16インチ砲搭載艦を計画しているだと!?」
「2隻しか作らないようですが、こちらよりも早く完成するかもしれません……」
「こちらも完成を急がせろ!」
「無茶言わんでください!? 予算と資材は確保出来ても工員の確保が出来ませんよ!?」
フランス共和国が建造を進めている『リコンキスタ』級戦艦の情報によって、イタリア海軍首脳部は恐慌状態に陥った。英国で建造されているリコンキスタ級は16インチ砲搭載艦であり、フランチェスコ・カラッチョロ級よりも早く就役する見込みだったのである。
「落ち着け! 地中海は我らのホーム。地の利を活かせば負けはせんっ!」
「確かに、地中海ならば砲戦距離は近くなる。数で差し違えることも可能か」
「だがしかし、一時的とはいえ地中海の覇権を新興国に取られるのは気にくわん。何か策は無いものか……」
地の利を活かせば、フランチェスコ・カラッチョロ級4隻でリコンキスタ級2隻に対抗可能とイタリア海軍首脳部は判断していた。しかし、貧乏なイタリア海軍としては宝石よりも貴重な戦艦を失うのはなるべく避けたいところであった。
「……そういえば、戦時中に鹵獲兵器を改造した試作兵器があったな」
「ミニャッタか? そうか、あれならば……!」
ミニャッタは史実イタリアで第1次大戦末期に開発された人間魚雷である。
人間魚雷といっても史実日本の特攻兵器ではなく、魚雷を改造した水中スクーターというべきシロモノであり、密かに敵艦の船底に近づいて工作員が時限式爆薬を設置する特殊兵器であった。
この世界では、史実よりも早期に戦争が終結したために戦果を挙げることは出来ずに倉庫の片隅で埃をかぶっていたのであるが、急遽引っ張り出してテストしたところ、停泊した戦艦相手ならば充分に撃沈することが可能と判断された。
この結果に狂喜乱舞した海軍上層部は、決戦兵器としてミニャッタの生産を指示した。戦艦を餌にミニャッタで撃沈するという、前代未聞の戦術を完遂するための戦術運用の研究や、ミニャッタ自体の性能向上が図られることになる。
フランチェスコ・カラッチョロ級4隻と大量のミニャッタの配備によって自信を深めたイタリア海軍は、以後も地中海の覇者を気取ることになるのであるが、その自尊心が木っ端みじんになるのはそう遠くない未来のことである。
「おのれ、やっとトロツキーを追放して政権基盤が盤石になろうかというこの時に!? ヤポンスキーめ、余計なことをしおって!」
スターリンは、フランス・コミューンからもたらされた扶桑の写真を見て怒り狂っていた。
「この写真から推察しますと、14インチ砲4連装3基12門で3万トンクラスと思われます」
「結論から聞きたい。我が国でフソウに対抗出来る戦艦を作ることが出来るかね?」
「それは……」
スターリンからの質問に側近は言いよどむ。
下手なことを言えばシベリア送り確定であるから当然であろう。
「作れないのかね?」
「い、いえっ、その……!?」
側近とて赤色艦隊の重鎮である。
老朽化著しいソ連国内のドックでは戦艦を作れないことは理解していたが、この齢になってシベリア行きは御免こうむりたかった。かといって、嘘を言ったところでいずれバレる。そうなれば、シベリア行きどころか絞首刑であろう。
「……現状の我が国では作れませんが、新型戦艦の当てはあります」
極限の選択を迫られた側近であったが、突如名案を思い付く。
それは天啓というべきものであった。
「どういうことかね?」
「アメリカに建造を依頼するのです。かの国の造船業は不況で困っている様子。こちらの提案を受ける可能性は高いかと」
「……良かろう。建造費は資源と労働力提供のバーターとせよ。ただし、価格に妥協は許さん。1ルーブルでも安く作るのだ!」
「「「は、ははっ!」」」
転がるように飛び出していく側近達。
それほどに眼前の暴君の怒りは凄まじいものだったのである。
(トロツキーの暗殺を進言したかったが、今下手なことを言ったら藪蛇になるかもしれん。ここは機を待つことにしよう)
同席していたGPU(内務人民委員部附属国家政治局)長官のフェリックス・ジェルジンスキーが、スターリンの勘気に触れるのを避けたため、トロツキー暗殺計画は先延ばしにされた。
その後、厳重な監視をかいくぐってトロツキーはアメリカへ逃亡。
アメリカ共産党と共に地下へ潜り、来るべき日のために力を蓄えていくことになるのである。
アメリカはソ連からの戦艦建造の依頼を諸手を挙げて歓迎した。
復興債の発効で連邦政府の財務状況は悪化の一途であった。貴重な外貨獲得のチャンスをみすみす逃すわけにはいかなったのである。
連邦政府はペンシルバニア級戦艦2隻に目を付けた。
予算難で建造が半ば放棄されていたが状態は良好であり、船体は完成して砲塔を据え付けるだけであった。
ソ連が扶桑を上回る15インチ砲の搭載を強く要望したために内筒をボーリングして口径を拡大した。速力向上のための機関強化と艦首延長も計画されたのであるが、時間がかかるので今回は見送られる形となった。
ソ連待望の新型戦艦『ウラジオストク』『ナホトカ』は、15インチ3連装4基12門の戦艦として1923年に進水、パナマ運河を経由して太平洋に回航され、アラスカで引き渡された。
ソ連にとって初めてアメリカから購入した戦艦であったが、使い勝手と運用実績は非常に良好であった。それだけに、速力の低さが目立ってしまう形となり、より高速な戦艦を計画することになるのである。
「どういうことですか!? よりにもよって、完成目前の戦艦を売り飛ばすなんて!?」
「しかも、相手はコミュストとか正気ですか!?」
「まぁ、待て。皆の気持ちも分かるが……」
ワシントンD.C.の海軍省ビル。
その3階に所在する合衆国艦隊司令部では、若手将校達が部屋の主に詰め寄っていた。
史実では1922年末に太平洋艦隊と大西洋艦隊を統合して設立された合衆国艦隊であるが、この世界では軍縮とそれに伴う維持費節減のために史実よりも早く設立されていた。
第1次大戦のころから主力艦の補充が出来なかった合衆国海軍にとって、ペンシルバニア級戦艦2隻は期待の新戦力であった。予算難やマフィア共の難癖によって遅れに遅れた建造であったが、それでもどうにか完成までの目途が立ったというときに、突然の売却話である。激昂するなというほうが無理な話であろう。
「これが落ち着けますかっ!? 今こうしているうちにも、ハワイはジャップ共に取られかねないんですよ!?」
「奴らはハワイ王家の末裔とも結託しているんです。放っておいたらクーデターを起こすかもしれないんですよ!?」
まるで日本がハワイ乗っ取りを企てているような言いぶりであるが、その実態は異なる。
アメリカ風邪によるパンデミックから逃れようと、西海岸からハワイへの逃避行が一時期盛んになったのであるが、そのハワイでもアメリカ風邪が蔓延して大量の犠牲者を出していた。
本国に救援を求めようにも、そちらもアメリカ風邪への対応で手いっぱいであり、やっとのことで送られてきた救援もなしのつぶてであった。そのような危機的な状況で立ち上がったのが、旧ハワイ王国の末裔達であった。
ハワイの窮状を訴える王国の末裔達の訴えは日本で大々的に報道された。
その結果が、人道主義を拗らせたマスコミ主導によるハワイを救えの大合唱であった。
平成会としても、なんとしてもアメリカ風邪をハワイで食い止める必要があり、そのためには支援を惜しまなかった。結果としてアメリカ風邪の水際防御に成功したのであるが、ハワイの多数派だった白人コミュニティはアメリカ風邪のために壊滅してしまった。残されたのはハワイの先住民と日系人のみだったのである。
「……私としては、むしろこの状況はチャンスと捉えている」
司令長官の言葉に目を剥く将校達。
そんな彼らに構わず言葉を紡ぐ。
「考えても見ろ、ハワイが失陥したら如何なる? あのエンペラーの海軍がハワイに進出してくることになるだろう。太平洋は奴らのものになるだろうな」
「だったら……!」
「まぁ、聞け。逆に考えるんだ。もし、そうなれば西海岸は壊滅する。困るのはマフィア共だ」
「まさか……」
「マフィアがいくら強かろうと海軍に、ましてや戦艦には勝てまい。そこを突破口にする」
司令長官の思惑通り、太平洋艦隊の再編成に必要な予算が議会に認められた。
ハワイ、最悪は西海岸に来航してくるであろう日本艦隊を撃破出来るだけの艦隊を、可及的速やかに整備することになったのである。
しかし、この司令長官が太平洋艦隊の指揮を取ることは無かった。
ネームシップである『サウスダコタ』の進水式の前日に謎の凶弾に倒れてしまったからである。
後任にはマフィアの息がかかった人間が送り込まれた。
これを機会に海軍のマフィア化も進行していくことになるのである。
「……うーむ、陸軍の支援をするということは、それなりに弾をバラまく必要があるか」
「沿岸から支援するというのであれば、可能な限り長射程が望ましいだろうな」
「射程を延ばすには砲身を延ばすか、大口径化するのがセオリーだが……」
「大口径化すれば、その分砲弾が大型化して搭載数は落ちるだろうな」
「ならば、比較的小口径で砲弾の威力を追求するべきでは?」
「小口径な砲弾を、装薬マシマシでぶっ放しても至近距離でしか威力は出せないし、砲弾が軽量過ぎると対地破壊効果に欠ける。本末転倒だろう」
ドイツ帝国内のとある造船所では、技術者達が頭を悩ませていた。
海軍からの要求があまりにも無理難題だったのである。
「どっちにしろ、フソウを凌ぐ大口径砲は開発中で今回のコンペに間に合うか微妙だぞ」
「だとすれば、28cm砲を使うしかないじゃないか……」
「28cmで40cm級の大威力、かつ長射程な砲弾があれば良いんだがな」
「そんなのがあったら苦労していない。とはいえ、砲が決まらないと船体設計が出来ないぞ。どうしたものか……」
考えても埒が明かないので検討会はいったんお開きとなった。
酒場でビールをがぶ飲みすれば、きっと良いアイデアが浮かぶであろう。彼らはドイツ人なのである。
「……おい、これを見ろ、これをっ!」
「なんだこれ? ライミーが描いたコミックか?」
「うちの息子が読んでいたのを強奪してきた!」
「酷い父親もいたもんだな!?」
「しかし、技術者の俺らが見ても説得力のある絵だな……」
「連装垂直2連砲? 斬新過ぎて発想も出来なかった。こいつは紅茶の臭いがぷんぷんするぜ……!」
事態が急展開したのは技術者の一人が持って来た同人誌がきっかけであった。架空兵器が細かく精緻に描かれており、詳細な解説まで付いているので軍艦好きなお子様も大満足なシロモノであった。
「しかし、砲を全部後ろに付けるというのは如何なものかな?」
「うむ、これでは卑怯艦のそしりを受けてしまうだろうな」
「しかし、発想そのものは悪くない。砲塔を前部に持っていってだな……」
「逆に前部にある航空甲板は後ろに移動だな」
「弾着観測射撃には航空機がたくさん積めるのに越したことは無いからな」
この同人誌はテッド・ハーグリーヴスが描いたものであった。
生前に見た、とあるサイトの仮想兵器が忘れられずに描いてしまったのであるが、それがどういうわけかドイツに渡り、ゲルマンな技術者達の目に留まってしまったのである。
「問題は砲と砲弾の実用化だが……」
「構造も理屈も分かりやすいし、何よりも28cm砲を流用出来るのは大きいな」
「たとえSFであっても、実用化してしまえばこっちのものだ」
「ペーネミュンデ矢弾か。良い名前じゃないか」
「この砲が実用化されたら、このコミックの作者に特許料を払わないといけないな!」
「「「はっはっはっ!」」」
幸いにして、技術者達の提出した『ペーネミュンデ矢弾』はドイツ帝国海軍司令部と陸軍参謀本部の興味を引くことに成功。程なく試作が行われ、試射で150kmという驚異の超射程を叩き出して関係者を狂喜させた。
試作的要素があまりにも強いため、史実同様に船体のみ完成して放置されていた『マッケンゼン』型巡洋戦艦を改装して洋上で砲撃試験が実施された。こちらも結果は良好であり、2番艦『グラーフ・シュペー』にも同様の改装が加えられた。以後、『プリンツ・アイテル・フリードリッヒ』『フュルスト・ビスマルク』と立て続けに進水することになる。
「……少し刺激が強すぎたようだな」
「えぇ、まさかここまで事態が大きくなってしまうとは思いませんでした」
ロンドンの首相官邸。
その会議室でロイド・ジョージとチャーチルがため息をついていた。
円卓の想定以上にフソウショックは欧州列強を刺激した。
各国の超フ級戦艦の建造ラッシュにより国際緊張度が高まり、あちこちで紛争や小競り合いが勃発したのである。
「ここは史実に則って軍縮会議を開くべきだろう」
「妥当ではありますが、そうなるとロイヤルネイビーも妥協を強いられるかもしれませんぞ?」
「条約明けまで新規の戦艦建造は認めない。建造中の戦艦を完成させるのは認めるといったところだろうな」
「つまりは、現状維持ですか。果たして奴らがそれを認めますかね?」
「従わないのならば、ポンド借款を停止するか最悪引き上げると脅すまでだ」
後に開催される『ロンドン軍縮会議』によって、戦艦の建造ラッシュに一応の終止符が打たれた。ただし、戦艦の保有を制限しただけなので、英国と日本は史実通りに空母の開発に勤しむことになる。
「……で、もうひとつの懸念事項なのだが」
「テッド君のやらかしの後始末ですな」
二人の視線がテーブル上の一冊の本に注がれる。
その本は、ドイツ人技術者達を暴走させた同人誌であった。
「前回の円卓会議で各国の超フ級戦艦の情報を出してからというもの、テッド君の様子がおかしいから怪しんではいたのですが……」
「マルヴィナ君に頼んだのは正解だったな。残らず白状してくれたよ」
マルヴィナの搾精によって、テッドは洗いざらい白状させられた。
その内容は恐るべきものであった。
「テッド君の描いたSFコミックがクラウツの戦艦に採用されてしまったとか、質の悪いジョークと思いたいな」
「しかも、その手のコミックを過去に大量に執筆しているみたいです」
「さすがに、今回のようなことが二度と起こるとは思えないのだが……」
「万が一ということもあります。国外に流出した彼のコミックはMI6に処分させましょう」
かくして、MI6の任務に海外に流出したテッドの同人誌の始末が加わることになるのであるが、大量に流出した同人誌の始末は困難を極め、そうこうしているうちに各国の兵器開発に多大な影響を与えることになるのである。
以下、今回登場させた兵器のスペックです。
ノルマンディー
排水量:27900t
全長:189.0m
全幅:27m
吃水:8.7m
機関:重油専焼缶+直結タービン4基4軸推進
最大出力:80000馬力
最大速力:26ノット
航続距離:12ノット/5500浬
乗員:1100名
兵装:42口径38cm4連装砲3基
55口径13.9cm単装速射砲24基
47mm単装砲6基
装甲:舷側装甲帯300mm(主装甲) 240mm(舷側上部) 180~130mm(艦首尾部)
バーベット284mm
甲板50mm(上甲板・下甲板) 70mm(主甲板傾斜部)
主砲塔350mm(前盾) 250mm(側盾)
副砲ケースメイト部160~180mm
水線下10mm+10mm+10mm
フランス・コミューン人民海軍が建造した超フ級戦艦の一番艦。
同型艦は『ラングドッグ』『フランドル』『ガスコーニュ』『ベアルン』
建造が途中で放棄されていたノルマンディー型戦艦を対扶桑用に改良した戦艦。
半ば以上完成していたためか、超フ級戦艦としては最も早く完成しており、一番艦の『ノルマンディー』は1923年中に進水している。
ボーリングによる主砲の口径拡大、機関換装と艦首延長による速力の向上を果たしているが、装甲はオリジナルのままであり、防御力には不安の残るものとなっている。
性能的にはともかく、超フ級戦艦5隻を早期に就役させたことは周辺国を大いに刺激することになる。
※作者の個人的意見
史実のノルマンディー型戦艦に、計画のみ存在した改良案をぶちこんだものです。
計画だとオールタービン化して8万馬力で24ノットだったのですけど、それだと速力が足りないので艦首を延長しています。凌波性を考慮してシアの効いた艦首形状にしたので、見た目はだいぶ変わったものになるでしょうね。
リコンキスタ
排水量:34500t(常備)
全長:228.3m
全幅:32.0m
吃水:9.2m
機関:バブコック・アンド・ウィルコックス式重油専焼缶28基+パーソンズ式直結型タービン(低速・高速)2組4軸推進
最大出力:87000馬力
最大速力:26ノット
航続距離:12ノット/5200浬
乗員:1100名
兵装:42口径41cm連装砲4基
45口径15.2cm単装砲20基
45口径7.6cm単装高角砲8基
12.7mm4連装機銃8基
装甲:舷側380mm(水線部主装甲) 176mm(艦首尾部)
甲板88mm
主砲塔382mm(前盾) 323mm(側盾) 132mm(天蓋)
主砲バーベット部382mm(砲塔前盾) 254mm(甲板上部・前盾) 206mm(甲板上部・後盾) 176mm(甲板下部・前盾) 118mm(甲板下部・後盾)
副砲ケースメイト部176mm(最厚部)
司令塔320mm(側盾) 88mm(天蓋)
英国がフランス共和国海軍向けに建造した超フ級戦艦の一番艦。
同型艦は『マルトー』
QE型高速戦艦の拡大発展版とも言える16インチ砲搭載艦。
設計図の流用に加えてブロック工法を採用した結果、わずか2年で進水までこぎ着けている。
設計を流用した結果、全体防御形式も引き継いでいるために非効率な装甲配置であるが、スケールアップしたことで重装甲になっている。本級が就役したことで地中海のパワーバランスが一気にひっくり返ってしまい、地中海の覇者を気取っていたイタリアを発狂させることになる。
※作者の個人的意見
QE型をスケールアップすれば、16インチ砲搭載艦を短期間に作れるんじゃね?という考えで作ってみました。史実の長門がウォースパイトの設計を参考にしているので、異母兄弟というか遠い親戚というかなんというかそんな感じです(オイ
単純にスケールアップしただけなので、全体防御形式で半端に厚い装甲となってます。地中海決戦仕様にするならば、無駄な部分は削って側面と主砲、バーベットに装甲を振るべきだったのですが、それをやると完全に再設計となってしまい、短期間での建造が不可能になるので却下されたという裏設定があったりします。
フランチェスコ・カラッチョロ
排水量:29400t(常備)
全長:212.0m
全幅:29.6m
吃水:9.5m
機関:ヤーロー式重油専焼水管缶20基+パーソンズ式直結タービン(低速・高速)2組4軸推進
最大出力:108000馬力
最大速力:28ノット
航続距離:10ノット/8000浬
乗員:1480名
兵装:40口径38.1cm連装砲4基
45口径15.2cm単装速射砲16基
45口径9cm単装速射砲12基
45cm水中魚雷発射管単装8基
装甲:舷側300mm(最厚部)
甲板38~86.3mm
主砲塔396mm(前盾) 30mm(側盾・後盾) 150mm(天蓋)
主砲バーベット部396mm(最厚部)
司令塔355mm(側盾)
イタリア海軍が超フ級戦艦として建造したフランチェスコ・カラッチョロ級の1番艦。同型艦は『クリストーフォロ・コロンボ』『マルカントニオ・コロンナ』『フランチェスコ・モロシーニ』
名目上は超フ級戦艦であるが、実際のところはフランス共和国のリコンキスタ級戦艦への対抗馬である。リコンキスタ級相手に火力と装甲では勝ち目が無いので、地中海の地の利と数の差を活かして差し違えることを想定している。
※作者の個人的意見
史実だと戦前に起工していたのですが、資材不足&財政難で戦後に解体されてしまったフランチェスコ・カラッチョロ級戦艦そのまんまです。この世界だと早期に戦争が終結したので、解体されずに船台に残ったまま放置されていたのを建造再開して進水にこぎ着けたという設定です。
ミニャッタ
重量:不明
全長:8m
直径:0.6m
機関:空気エンジン
最大速力:2ノット
航続距離:16km
兵装:220kg時限式機雷
イタリア海軍が開発した特殊潜航艇。
敵艦の船底まで密かに接近して、時限式爆雷を仕掛けて撃沈する決戦兵器。
基本的に停泊している艦船にしか効果が望めないため、イタリア海軍では様々な手段を講じて敵艦を足止めすることに腐心している。一例をあげると、偽装貨物船を敵船にわざと臨検させて、その最中に船底から出撃して爆薬を仕掛けることが想定されていた。その他にも、潜水艦に搭載して泊地への襲撃が想定されている。
宝石よりも貴重な戦艦を失いたくないイタリア海軍によって執念じみた改良が進められた結果、さらなる派生・改良型が開発されることになる。
※作者の個人的意見
史実のミニャッタの仕様そのままです。
スペック的に頼りないですが、こんなのでも史実WW1では弩級戦艦を撃沈していたりします。排水量が小さいほど活躍するといわれたイタリア海軍の片鱗が既に見え隠れしていますねw
波が穏やかな内海という特性からして、地中海ではこの手のミゼットサブが発展する余地があったのかなと個人的に思っています。後継機のマイアーレは史実通りのスペックで出すのも悪くないのですが、火葬っぽく突き抜けたヤツを考え中だったりします。乞うご期待?
ウラジオストク
排水量:34124t(常備)
全長:185.4m
全幅:29.6m
吃水:8.8m
機関:バブコック・アンド・ウィルコックス式重油専焼水管缶12基+カーチス式直結タービン2組4軸推進
最大出力:34000馬力
最大速力:22ノット
航続距離:10ノット/19000浬
乗員:916名
兵装:42口径38.1cm3連装砲4基
51口径12.7cm単装速射砲22基
50口径7.62cm単装高角砲4基
53cm水中魚雷発射管単装2基
装甲:舷側343mm(水線部主装甲) 203mm(水線下部)
主甲板76mm
主砲塔457mm(前盾) 229~254mm(側盾) 229mm(後盾) 127mm(天蓋)
主砲バーベット部330mm(最厚部)
司令塔305mm+25mm
ソ連がアメリカに発注した超フ級戦艦の1番艦。
同型艦は『ナホトカ』
建造途中で半ば放棄されていたペンシルバニア級戦艦2隻を、発注主のソ連からの要望で15インチに口径を拡大して完成させたものである。15インチ砲3連装4基12門と、扶桑を凌ぐ火力を有しているものの、装甲はそのままであり攻防のバランスが欠けている。
早期建造のために速力は妥協されている。
使い勝手と運用実績は非常に良好であり、それだけに速度が出ないことを惜しまれる艦となった。そのため、より高速な戦艦が新たに計画されることになる。
史実ではアメリカ海軍に対候性、居住性を高く評価されており、赤色艦隊の将兵からも絶大な支持を受けた。今までのソ連軍の艦艇に比べればホテルのような居住性であり、兵士たちが転属を嫌がったと言われている。
※作者の個人的意見
史実のペンシルバニア級を手っ取り早く15インチにボーリングして戦力化したシロモノです。火力で扶桑に優越出来るので一応超フ級戦艦いなると思います(苦笑
サウスダコタ
排水量:43200t(常備)
全長:208m
全幅:32m
吃水:10.1m
機関:蒸気ターボ電気推進4軸推進
最大出力:60000馬力
最大速力:23ノット
航続距離:12ノット/7000浬
乗員:1120名
兵装:50口径41cm3連装砲4基
53口径15.2cm単装砲16基
50口径7.62cm対空砲8基
53cm水中魚雷発射管単装2基
装甲:水線345mm
甲板64~89mm
主砲塔457mm(前盾) 127mm(天蓋)
司令塔406mm
アメリカ海軍が建造したサウスダコタ級戦艦の1番艦。
同型艦は『インディアナ』『モンタナ』『ノースカロライナ』『アイオワ』『マサチューセッツ』
アメリカ海軍は第1次大戦への不参加と、経済不況による軍縮、さらにアメリカ風邪まで加わったことで、史実の海軍休日を通り越した惨状を呈していた。
太平洋と大西洋の両洋艦隊を維持することすら難しくなり、史実よりも早く合衆国艦隊を設立したうえで老朽艦をスクラップにするなどしていたが、新型艦は補充されずに規模が縮小していく様は海軍の葬式とまで言われていたのである。
風向きが変わったのは、返礼使節団が世界的に報道されたことであった。
戦艦『扶桑』や『金剛』など極めて有力な戦艦群を日本が有していることがアメリカにも知れ渡ったのである。
事ここに居たって、金儲けだけしか興味の無いマフィアも危機感を抱き、子飼いの議員を動かして太平洋艦隊の再編を認めた。ただし、その資金源は復興債から出ており、回りまわって連邦政府の財政をさらに悪化させることになる。
※作者の個人的意見
史実のダニエルズ・プランで計画されていた戦艦です。
16インチ3連装4基12門とか、扶桑は完全にオーバーキルじゃないですかやだー!?
実際、こんなのがハワイに6隻もいたら日本海軍は気が気で無いでしょうねぇ。
史実のネームドが暴走しまくって、平成会は尻ぬぐいに追われそうですw
マッケンゼン
排水量:33000t(常備)
全長:227.0m
全幅:30.4m
吃水:8.7m
機関:重油専燃缶32基+パーソンズ式ギアードタービン4軸推進
最大出力:92000馬力
最大速力:29ノット
航続距離:14ノット/8000浬
乗員:1227名
兵装:70口径31cm連装垂直2連砲3基
45口径15cm単装砲12基
45口径8.8cm単装砲8基
航空機20機(ハンザ・ブランデンブルク W.12 索敵・弾着観測・防空兼用)
装甲:装甲帯100~300mm
主甲板30~80mm(後部飛行甲板除く)
主砲塔270mm(前盾) 230mm(側盾) 230mm(後盾) 80mm(天蓋)
主砲バーベット部270mm(最厚部)
司令塔300mm
ドイツ海軍が建造した超フ級戦艦の1番艦。
同型艦は『プリンツ・アイテル・フリードリッヒ』『グラーフ・シュペー』『フュルスト・ビスマルク』
当初の計画では15インチもしくは16インチ砲を搭載した真っ当な巡洋戦艦になるはずであった。しかし、搭載する予定の砲は未だに設計段階であった。建造が急がれる状況で、新型砲の完成をいつまでも待つわけにもいかず技術者達を悩ませていた。
技術者達の救い?となったのが、テッド・ハーグリーヴスが描いたSF同人誌であった。生前に架〇機の〇で見た『フ〇ン・デ〇・タン 〇ァハ〇』が忘れらずに描いてしまったシロモノなのであるが、それがどういうわけかドイツにまで流れていたのである。
『連装垂直2連砲』『ペーネミュンデ矢弾』のアイデアは、ゲルマン技術者達を大いに刺激した。特にペーネミュンデ矢弾は、詳細な形状まで描かれていたために労せずに完成にまでこぎ着けた。ライフリングを廃した滑腔砲であるために製作が簡単だったことも原因である。
砲身は28cm砲をボーリングして31cmに拡大された。
ライフリングを廃して、内部はクロムメッキでピカピカに磨き上げられた。この砲を垂直に束ねたのが垂直2連砲である。この砲を連装するので砲塔につき4門、3基合計12門の火力を発揮可能であった。
ペーネミュンデ矢弾は、全長2mというこれまでの砲弾の常識を覆す長さである。
砲弾の径は100mm程度であるが、砲弾の中ほどにあるサボと後端のフィンによって砲身内で支持されている。
この砲弾はロケット推進が組み込まれており、発射されて数秒後に点火して推力を発揮した。
極めて細長く、空気抵抗の少ない形状のペーネミュンデ矢弾は、1400m/sという驚異的な初速とロケット推進により最大射程150kmという空前絶後の長射程を達成したのである。
全長は長いものの、細長く容積が小さいペーネミュンデ矢弾は艦内に大量に搭載することが可能であった。長射程と大量に搭載出来ることは、陸軍から求められた支援砲撃能力に合致するものでもあった。
本命の対艦船においては、その長射程を活かしたアウトレンジ戦法が求められた。
アウトレンジするためには敵を早期に発見すること、相対距離を維持するための速力が必要となるが、速力はともかくとして150kmという射程は見通し距離を遥かに超えており、目視以外の索敵手段が必要となった。
当時のドイツにはレーダーの概念すら存在しておらず、索敵手段は航空機に頼ることになった。本級の艦体後部には大型格納庫設けられており、マッケンゼン級は水上機母艦として20機程度の運用が可能であった。
速力があって偵察・通信機能も充実していたことから旗艦として運用されることが多く、良くも悪くも非常に目立つ艦であった。その特異な形状は各国から様々な憶測を呼ぶことになる。
※作者の個人的意見
『フ〇ン・デ〇・タン 〇ァハ〇』最高です。
他に言うことはありませぬ…!(マテ
ペーネミュンデ矢弾については、超細長い弾体を高初速で撃ちだすことで長射程を達成していますが、上昇から落下に転ずる段階で不安定になって命中精度は悪化すると思います。どちらかと言うとAPFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)のように目視で直接狙ったほうが命中させやすいかと。まぁ、陸軍を支援する分には問題は無いでしょうけどね。艦隊戦は……その、お察しください?(哀
ハンザ・ブランデンブルク W.12
全長:8.69m
全幅:9.6m
全高:3.3m
重量:967kg
翼面積:36.2㎡
最大速度:160km/h
実用上昇限度:5000m
武装:IMG08機関銃×1(操縦席前方) パラベラムMG14軽機関銃(後部銃座)
エンジン:メルセデス D.IIIa 液冷エンジン 160馬力
乗員:2名
マッケンゼン級で運用されている水上機。
艦後方の甲板に縛止されているのに加えて、艦内の格納庫に収容されている。
※作者の個人的意見
エルンスト・ハインケルが設計した水上機として有名?な水上機です。
ちなみに、史実だとオランダでもライセンス生産されていたりします。
ちょっと暴走してしまいましたw
でも、火葬艦考えるは楽しいからしょうがないですね!( ゜д゜ )クワッ!!
ついでに、テッド君のやらかしが判明。
彼の同人誌によって、英国以外で火葬兵器が登場する可能性が上がりました。今後の展開にご期待下さいw
日本は日本で平成会がいろいろやらかすでしょう。
史実のネームド技術者も暴走するでしょうし、気合を入れて設定を考えねば…!




