変態日本御遊戯事情―サバゲー編―
「はぁ、今日も今日とてデスクワークか」
「このままだと体が鈍っちまうぜ」
「俺は前線で活躍したいんだよっ!? 俺に銃を撃たせろぉぉぉぉぉぉっ!」
陸軍省内の端の端、明らかに隔離されている部署。
通称『タヌキの巣』と呼ばれる一室で、平成会派のモブ軍人は手を動かしながらも嘆くことしきりであった。
自ら陸軍に志願入隊するだけあって、彼らは平成会の中でも異端であった。
それもそのはずで、彼らの前世は自衛官やSAT、果てはフランス外人部隊など特異な経歴を持つ人間ばかりだったのである。
『上官殿、検算終わりました! 終わったんで前線に飛ばしてくださいっ!』
『……君たちの旺盛な敢闘精神には敬服するが、生憎と兵は足りてるのだ。これからも軍務に励みたまえ』
そんな彼らがいつまでもデスクワークに甘んじているわけもなく、上官への直訴は日常茶飯事であった。その全てが跳ねのけられていたが。
「そもそも、なんで俺らがこんな計算をしなきゃならんのだ?」
「軍内では俺らは完全に計算屋扱いだからなぁ」
彼らが計算屋呼ばわりされる理由は、平成会謹製の電子計算機が原因であった。
蛍光表示管をスイッチング素子に採用したことで長寿命とダウンサイジング化に成功しており、この時代の人間からすれば瞬時に計算結果を取り出せる魔法の箱だったのである。
「タッチタイピングなんて難しいものじゃないんだがなぁ」
「でも、この時代だとタイピストなんて職業もあるからな」
「俺らの世代は余裕だが、スマホ世代は苦労してたって話だし。結局は慣れの問題だと思うぞ」
愚痴を言いつつも、キーボードで数値を入力していくモブたち。
タッチタイピングで怒涛の勢いで入力出来るのは、生前に〇ースネク〇トの某タイピングソフトで鍛えられていたからである。これがスマホ世代ならばこうはいかなかったであろう。
「経理局からは毎日のようにラブコールが来るけど全然嬉しくない。はぁ……」
「陸軍一等監督待遇で迎えるって言ってくれてるけど、俺らが求めてるのはそういうのじゃないんだよなぁ」
平成会派は経理局の関係者からは救世主の如き扱いをされていた。
陸軍一等監督は大佐相当官なので破格の待遇と言えるが、彼らが欲するのは前線での華々しい活躍なので論外なのである。
「どうもこの時代の人間は、計算機を自分で使おうって発想に乏しいと言うか……」
「いや、ごくまれだが興味を持つ人間もいるぞ? 最終的に価格で尻込みしちゃうけどな」
平成会の完全お手製の電子計算機は車1台買うよりも高価であった。
高価な計算機を扱える人材は希少なわけで、前線行きを志願する平成会派が強く慰留される原因になっていたのである。
「最近は量産化で値段も下がってきたから多少は売れてるんじゃないか?」
「あれって、一部の業界だけじゃないか? 陸軍では1台も売れてないらしいぞ」
「中島飛行機が大量にお買い上げしてたぞ。最近は三菱も負けじと導入してるって知り合いが言ってた」
これまで平成会内部でのみ運用されていた電子計算機であったが、中島飛行機が大量に導入したことで航空業界に売れ始めていた。大量発注に応えるために平成計算機工業が設立されて量産の真っ最中だったのである。
しかし、陸軍は電子計算機を頑なに導入しようとはしなかった。
『そんなものを導入しなくても、うちには平成会派がいるから問題無い。そんな金があるなら他に回せ』
――という意見が陸軍上層部の大半だったからである。
平成会派に舞い込んでくる仕事は増える一方であった。
右肩上がりの仕事量にたまりかねて退役しようにも、あの手この手で慰留されてしまう。気が付けば、陸軍の平成会派はブラック企業と化していたのである。
「はぁ、サバゲーしたいなぁ……」
社畜な日々に潤いを与えることになったのは、とあるモブの独り言であった。
デスクワークと運動不足に苦しむその他大勢にとって、彼の言葉は福音のように聞こえたのかもしれない。
「そうと決まれば、場所の確保だな!」
「軍の演習場を借り上げましょう。場所も広さも申し分ない」
「お偉方が文句を言ってこないかそれは?」
「日ごろ無茶ぶりされてるんだ。これくらいどうってことないだろ」
サバゲーをするには広い場所が不可欠である。
平成会派が目を付けたのは、陸軍の演習場であった。常識的に考えれば演習場の私的利用など認められるわけないのであるが……。
「許可取ってきたぞ! 土曜日の午後と日曜日なら使用しても良いとのことだ」
「むしろ、それ以外の日だと困るだろ」
「この時代に祝日や週休二日制は存在しないからなぁ」
軍上層部も彼らに無茶ぶりを強いている自覚はあったらしい。
頼み込んだ平成会派が拍子抜けするほど演習場の利用はあっさりと承認されたのである。
「いや、ちょっと待て。この時代にエアガンあるのか?」
「「「あっ!?」」」
しかし、彼らは見落としていた。
この時代にはエアガンどころか銀玉鉄砲すら存在しなかったのである。
「ここまで来て後に退けるか。無いならば作ればよいのだっ!」
「エアコッキングならなんとかなるか? 構造も単純で信頼性も高い」
「どうせなら見た目にも拘りたいな」
上層部の承認を取り付けてしまった以上、出来ませんでしたでは済まない。
彼らとしてもサバゲーをしたいので、エアガンを自作することになったのである。
「……と、いうわけで試作品が出来ました!」
「「「おおおおおおおっ!?」」」
エアガンの試作品が完成したのは1週間後のことであった。
平成会傘下の模型メーカーの全面的な協力が無ければ、ここまで短時間で完成させることは出来なかったであろう。
「凄いリアルだ。まるで実銃のようだ……って、これ本物じゃないか!?」
「一から図面を引いてたら時間がかかるんですよ。実銃にエアガンのメカを組み込んだほうが早いんです」
「それはそうだが。うーむ……」
短期間で完成出来たもう一つの理由は、実銃をベースにしたことであった。
三八式歩兵銃(史実九九式)の機関部を取っ払って、エアガンのメカニズムを移植していたのである。
ちなみに、史実においても無可動実銃にエアガンのメカを組み込む試みがあった。法律的には限りなくアウトに近いセーフであるが、場合によっては銃刀法と武器製造法に抵触する恐れがあるのでお勧め出来ない。やるなら自己責任である。
「というか、どこからフレームを手に入れたんだ? まさか軍の倉庫からくすねたりしてないだろうな?」
「そんなことするわけないでしょう。正規のルートで正規の代金で購入していますよ」
「なるほど。こいつは輸出品か」
この世界においても、三八式は外貨稼ぎの手段として海外へ輸出されていた。
特に満州国陸軍に多く輸出されており、平成会傘下の商社を介せば簡単に入手することが出来たのである。
「よし、ちょっと試し撃ちするか……って、えらく重いな!?」
「威力と確実な作動を重視してスプリングは強めにしています。その分、コッキングが重くなりました」
ガシャコンと、ポンプをコッキングするモブはスライドの重さに驚く。
生前はサバゲーマーでエアコッキングライフルを扱ったことがあったが、三八式の重いコッキングは無視出来るものでは無かった。とはいえ、慣れの問題と言えばそれまでなのであるが。
「スチール缶への接射で凹みが出来た。威力は充分だ」
「ボルトアクションライフルがモデルなんだから連射する必要も無いし、実用上は何ら問題は無いな」
凹んだサクマ式ドロップの缶を見てモブ一同は満足した。
エアガンの三八式は史実のガスガン並みの威力があったのである。
「有効射程はどれくらいなんだ?」
「事前のテストでは80mといったところです」
「電動ガンでもそんな数字にはならんぞ!? なにをどうすればそんな射程が出せるんだよ?」
「銃身が長いからインナーバレルも長く取れたのです。ポップアップシステムも組み込んでますので弾道も安定していますよ」
エアガンも実銃も基本的は原理は同じと言える。
インナーバレル(銃身)が長いほど初速が上がって射程が伸びるのである。
銃身全てにインナーバレルを組み込んだ結果、三八式改造エアガンのインナーバレルの長さは800mmとなった。この数字は史実21世紀の電動ガンの倍近い長さであり、強化されたポンプの出力と相まって長射程を実現していた。
「……BB弾の袋に乾燥剤っぽいのが入ってるんだが?」
「デンプンを固めているので、湿気ると膨張して使えなくなるんです」
「旧世代のバイオBB弾かよ」
「演習場で撃ちあいして弾の回収などしないでしょう? むしろこっちのほうが都合が良いのです」
バイオBB弾は自然に分解される材料で作られている。
ちなみに初期のバイオBB弾はトウモロコシのデンプンで作られており、湿気ればすぐに膨張して使い物にならなくなるシロモノであった。
素材にデンプンを使用したのは、材料が身近でハンドメイド出来ることも大きかった。業者に頼むとロット単位で最低1万発以上製造する必要があり、エアコキでそれだけ消費するのにどれだけ時間がかかるか分かったものじゃないのである。
「フェイスガードはこれか。水中眼鏡っぽいデザインだな……」
「実際、水中眼鏡ですが何か? 業者にデザインを渡したんですが、形状が複雑過ぎて間に合いませんでした。今回はこれで我慢してください」
「まぁ、実用性に問題は無いからよいか」
サバゲーでは必須のフェイスガードであるが、デザインの複雑さ故に製品化が間に合わなかった。止むを得ず初期のサバゲーでは水中眼鏡で代用していたのであるが、これが原因でこの世界ではフェイスガードが水中眼鏡呼ばわりされることになるのである。
「ところで、服装はどうするよ?」
「適当な私服で良いじゃん」
「演習場に私服で入れてくれるか? 入口で守衛に止められる未来しか見えんぞ」
「制服で行って、中で着替えれば良いだろ」
「それもそうだな」
この時は楽観していたかモブたちであるが、実際にゲームをしてから後悔することになった。演習場に更衣室など存在しない。更衣だけならともかく、私物の管理のためには更衣室は必須だったのである。
『屋内戦闘の研究のために必要である』
――という建前で演習場にビルを建てることで、後にこの問題は解決された。
平成会派としては単に更衣室が欲しかっただけなのであるが、実際に屋内戦闘の研究に用いられて帝国陸軍にCQCの概念が芽生えてくることになるのである。
「最後にこれです」
「なんだこれ?」
「竹刀袋です。まさか、エアガンを裸のまま持ち歩く気だったんですか? いくらなんでも通報されますよ」
「いや、こういうのは普通はバイオリンケースとか、ゴルフバッグなんじゃないのか?」
「制服着てそんなの背負ったら違和感ありまくりじゃないですか!?」
バイオリンケースやゴルフバッグにライフルを隠すのはお約束であるが、陸軍の制服を着てそんなものを所持していたら確実に周囲の注目を浴びてしまう。竹刀袋であれば道場通いと見られるかもしれないので、多少はマシであろう。
「よし、準備は出来たな?」
「服装オッケー、荷物オッケー!」
「よぅし、行くぞ!」
「「「おおっ!」」」
週末の帝都を練り歩く平成会派は、はっきり言って目立ち過ぎた。
竹刀袋を背負った将校制服を着た集団が注目されないわけもなく、彼らのサバゲーは陸軍内でも知られることになったのである。
「やぁ、また面白いことをやっておるな」
「!? な、中村閣下!?」
思わぬ来訪に慌てて敬礼するモブたち。
とある日のタヌキの巣に顔を出したのは、中村精一陸軍主計監だったのである。
「あぁ、敬礼はよいぞ。他の連中は将校扱いしてくれないというのに、君たちは相変わらず律儀だな。そういうところも気に入っているのだが」
史実よりはマシになっているとはいえ、この世界でも経理局は軽視されがちであった。平成会派のモブからすれば、部署が違おうと上官に違いないので当たり前に敬礼しているだけなのであるが。
「ところで、今回はどういったご用件なのですか?」
「聞いたぞ。兵科の連中を完膚なきまでに叩きのめしたそうじゃないか!」
つい先日のことであるが、平成会派のモブたちはサバゲーで古参兵相手に完勝していた。身内扱いしている平成会派の快挙に、中村を含めた経理局の人間は快哉を叫んでいたのである。
「と、いうわけで経理局に移籍しないかね?」
「さらっと勧誘しないでくださいよ!?」
「君らの能力と電子計算機があれば、経理局は大助かりなのだ。良い返事を待っているぞ!」
ご機嫌なまま去っていく中村。
平成会派のモブたちは、その背中を複雑な表情で見送ったのであった。
『内勤連中の戦争ごっこに負けるとは恥を知れ!』
意気上がる経理局に対して、自信満々に喧嘩を売ったあげくにワンサイドゲームで敗れた古参兵たちは悲惨であった。陸軍の恥とばかりに、同じ古参どころか新兵にまでボコられるハメになったのである。
『これ以上平成会派にデカい顔をさせるな!』
ここまで来ると勝ち負けを越えて面子の問題であった。
平成会派を打ち負かすために、毎週のように兵科連合チームがサバゲー勝負を挑んでくるようになったのである。
「広報部? あぁ、最近出来たという……」
「どうも。早速ですが、取材させてください」
毎週のように返り討ちにしている日々の最中に平成会派は広報部の取材を受けていた。広報部にとって、サバゲーで無双する平成会派は格好の取材対象だったのである。
ちなみに、広報部は史実では存在しなかった部署である。
軍の広報を重要視した内閣調査部の提言によって、陸軍省の外局として設置されたばかりであった。
「……これまでの戦績は全戦全勝ですが、勝利の秘訣とかあるのですか?」
「見も蓋も無いことを言えば、相手側はチーム戦術がなってないですね」
いきなり本題に切り込む広報部のスタッフ。
それに対する回答もまたシンプルなものであった。
「チーム戦術ですか。分隊指揮とは違うということですか?」
「分隊だと隊長の命令は絶対ですが、チームだと状況に応じて各個の瞬時の判断が求められるんです」
「つまりは、柔軟性にかけると?」
「あくまでもサバゲーの場合ですけどね」
サバゲー初心者にありがちな行動パターンは以下の通りである。
・一方向しか見ていない。
・死角チェックを忘れている。
・遮蔽物を有効に活用出来ていない。
・警戒体勢をとらずに移動して咄嗟の反撃が出来ない。
・同じ行動パターンやルートで行動を先読みされる。
・敵を発見出来ず、撃たれてから初めて反撃する。
・不確かな状況で威嚇射撃を行いすぎる。
現役の軍人なだけあって兵科連合チームは初心者よりはマシな動きをしていた。
生前にバリバリな現役サバゲーマーだった人間からすれば、それでも敵では無かったのであるが。
「有意義な取材でした。最後になりましたが、読者の皆様に伝えたいことなどあればどうぞ」
「……なんでも良いの?」
「なんでもどうぞ」
「では――」
メモを片手に、ずずいっと身を乗り出す広報部の取材班。
逡巡した平成会派のモブたちであったが、意を決すると思いの丈を遠慮なくぶちまけたのである。
『ヒットしたら即退場しろ。当たってないふりするんじゃねぇ!』
『エアガンで着剣した馬鹿はどいつだ!? そりゃ実銃ベースだから付けられるけど、サバゲーで白兵戦するんじゃねぇよ!』
『便衣兵ダメ絶対。見つけたら問答無用で潰すからな!』
後日、広報部が発行する新聞に平成会派の意見が一言一句間違いなく掲載された。その内容は衝撃的なものであったが、勝つためになりふり構わない兵科連合チームの実情を如実に示していた。ここまでやっても、未だに1勝も出来ていなかったのであるが。
サバゲーは紳士のスポーツと断言出来る。
ヒットして退場するのが自己申告だからであるが、負けず嫌いな兵科連合チームの中にはルールを無視した行動に走る者が多かった。ゾンビ行為や着剣、便衣兵はその最たるものであり、ブチ切れた平成会派は審判を置くことで厳正に対処したのである。
しかし、彼らも負けっぱなしでは無かった。
サバゲーの立ち回りは戦場における兵の動きと共通するものが多い。一度コツを掴むと猛烈な勢いで上達して、平成会派を脅かすことになるのである。
『休日も訓練に励むとは、敢闘精神旺盛で大変よろしい』
『実弾よりも安上りに訓練出来るのが素晴らしい』
『古参と新兵の連携が目に見えて良くなった。もっとサバゲーを普及させるべきである』
陸軍上層部もサバゲーを評価していた。
軍隊スポーツとして大々的に奨励して、陸軍内部での普及に努めたのである。
「邪魔するぞ」
「大佐殿!? 何故ここに?」
思わぬ珍客に驚く平成会派のモブたち。
とある日のタヌキの巣に顔を出したのは、禿……もとい、頭頂部の髪が薄い壮年の男性――東條英機陸軍大佐であった。
「儂のことを知っておるのかね?」
「そりゃあ、大佐殿は有名人ですからね」
関東軍のクーデター未遂に端を発した昭和の大粛清によって、東條は島流しとなった。しかし、出世願望が強い彼は腐ることなく平成会派が主催する勉強会に積極的に参加していた。
軍事的な才はともかくとして、元々秀才な東條は勉強会大好きマンであった。
精神主義に頼らないデータに基づく教育方針と相性が良かったのか、ずば抜けた成績を叩き出して中央に舞い戻っていたのである。
「最近、経理局が君らのことを噂しているのでな。気になっておったんだ」
史実の東條は経理局を高く評価していた。
その経理局が平成会派にラブコールを送っているのを知って、わざわざ見学に来たのである。
「ほほぅ、これが噂の電子計算機か!」
モブが操作する様子を熱心に見学する東條。
彼は計算結果だけを欲しがる大多数の軍人とは違い、電子計算機そのものに強い興味を示していた。
「今の操作は何かね?」
「あぁ、これは前の計算結果を呼び出して加算したんです」
モブの操作は、『M+』キーと『MRC』キーを使用したものであった。これらのキーを使用すると電卓で複数の計算結果の和を求めることが出来るのである。
モブが東條に見せた操作は以下の通りである。
・t2000円の米を1500t購入予定→[2000][×][1500][M+]→3000000(円)
・別業者から追加でt1500円で600tを新たに購入予定→[1500][×][600][M+]→900000(円)
・合計金額→[MRC]を1回→3900000(円)
「なるほど、複数の計算をまとめることが出来るのか。経理部が欲しがるのも分かるな」
「操作に慣れが必要ですけどね」
電子計算機の使い勝手の良さに感心する東條。
とはいっても、性能的には史実の電卓程度の性能でしかないのであるが。
「この計算機が世間に広まれば世の中変わるぞ!? 何故売り出さないのだ?」
「販売はしているんですけど、価格が高すぎて一部の界隈にしか売れないんですよ」
「価格は如何ともし難いか。物の価値が分からん人間が世の中には多いな……」
ちなみに、この世界の英国ではパラメトロン素子を使用した電卓(史実アレフゼロ101相当)が既に販売されていた。平成会謹製の電子計算機より演算速度は遅いものの、安価であるため大学などの教育機関に普及し始めていたのである。
「これはタイプライターかね? 儂が知っているタイプライターとはだいぶ違うようだが?」
東條が電子計算機の次に興味を示したのは、平成会謹製の電子タイプライターであった。和文タイプライターを知っている彼からすれば、モブが画面(?)を見たままJIS配列のキーボードをタッチタイピングする様子は異様な光景に見えたに違いない。
電子タイプライターは、電子計算機の副次的な産物である。
顧客側の要望で大画面のドットマトリクスを製作したことが開発の切っ掛けであった。
「打った内容を確認出来るのだけでなく修正も出来るのか!? これは凄い!」
打ち直しが出来ないタイプライターとは違い、平成会謹製の電子タイプライターは印刷前に入力内容を画面で確認して修正することが可能であった。機能的には史実のワープロと大差無い性能を実現していたのである。
「……もっと大画面に出来ないのかね? 具体的には縦方向に伸ばせば推敲もやり易いと思うのだが?」
とはいえ、問題が無いわけでない。
出力画面は蛍光表示管を用いたドットマトリクスなのであるが、大画面化に限界があったのである。
画面が大型化すればするほど、配置するドットは多くなる。
タイプライターが印字出来る横幅いっぱいまで表示範囲を取った結果、製造と制御技術の問題で現状は2行分(実質1行分)の表示が精一杯だったのである。
スクロールが可能なので実用上は問題無いのであるが、それでも大画面が望ましい。平成会の技術陣は蛍光表示管でフル画面を実現するべく奮闘中であった。
「ほぅほぅ、ボタンを押す度にカナを漢字に変換出来るのか。これは便利だな!」
それでも漢字の表示に対応しているのは画期的と言える。
日常的に使用する漢字全てに対応しているわけではなかったが、史実の漢字ROMの如く後からメモリーに追加することも可能になっていたのである。
電子タイプライターで作成した文書は専用のプリンターで印刷された。
文字そのものを印字するのではなく、ドット単位で印字することで文字の配置や全体的なレイアウト変更も可能になっていたのである。アルファベットや数字その他記号にも対応出来るのも強みであった。
この方式の弱点は印刷速度が遅いことである。
ドット単位で印字するので作動音の割に印刷が進まず、公式文書以外は手書きで済ませているのが実情であった。
「素晴らしい、素晴らしいぞ。儂にも操作方法を教えてくれ!」
「そ、そういうことならば平成会が主催する資格検定がありますけど……」
「ぜひ受講させてくれ!」
鼻息荒く迫る史実の最高権力者をモブが拒否することは不可能であった。
後日、平成会の新人モブに混じって資格試験を受ける東條の姿があったことは言うまでも無い。
『で、電卓検定で名人級!?』
『タッチタイピング10分で1000文字入力で誤字無しって、ワープロ検定1級クラスじゃんか!?』
『パソコンすら無い時代の人間に負けた。もうだめぽ……』
エロ中年がアダルトサイト見たさにインターネットを学習するが如く、東條は凄まじい勢いで操作方法を学習していった。挙句の果てには資格検定を首席合格して、試験を受けたモブたちの自信を木端微塵に打ち砕いてしまったのである。
『あのおっさんに悪気は無いのは分かるんだが、うちの部署に入り浸られるのは何かと外聞が悪い。なんとかせねば』
『むやみやたらに触らせるわけにもいきませんからね。機密情報もありますし』
『電卓とタイプライターをプレゼントしたらどうだ? ご執心なおもちゃが自前で使えるようになれば、こっちには来なくなると思うが』
『あの人プライド高そうだから、プレゼントしたら逆に激怒するんじゃないか? 適切な値段で販売するかリースしたほうが良いだろうよ』
電子計算機と電子タイプライターをリースした東條は、執務室に据え付けて業務改善に躍起となった。ここまでは平成会派の思惑通りであった。
しかし、東條は平成会派の存在を忘れてはいなかった。
東條内閣が成立したときに内閣調査部と平成会派の悪夢が始まることになるのである。
「……こないだのゲームで、サバゲーの機材も更新してくれって言われたんだよ」
「あちらさんの言い分は、八〇式自動小銃が支給されたのでサバゲーもそっちでやりたいってことだった」
「日ごろ使っている武器でサバゲーをしたいという気持ちは分かるなぁ」
今日も今日とて、タヌキの巣ではサバゲーの反省会が開かれていた。
最近の兵科連合チームは強敵と化しており、サバゲーで負けることも増えていた。明日の勝利のためにも、反省会に手を抜くことは許されないのである。
「三八式と同じく八〇式のフレームにメカを組みこめば良いだろ」
「それだと八〇式のセミ・フルオートが再現出来ないぞ?」
「単発も良いけど、やっぱりフルオートだろ!?」
反省会の議題はフルオート化であった。
八〇式は自動小銃であるため、エアコキで作動を完璧に再現することは不可能なのである。
「となると電動ガンにする必要があるか」
「ガスガンって手もあるだろ?」
「冬場に威力が落ちるので却下だ。あいつら絶対文句言ってくるぞ」
八〇式には電動ガンのメカニズムを組み込むことになった。
平成会派からすれば、ガスガンは冬場に役立たずというイメージが強かったからである。
「モーターのパワー不足か? 連射サイクルが上がらんぞ」
「バッテリーが重いし、すぐ切れてしまうのはちょっと……」
「快適に作動すれば楽しいのだが、これではなぁ」
純粋に電動ガンとして設計したのであれば多少はマシになったのであろうが、実銃のフレームを流用するとなるとモーターやバッテリーの配置に無理があった。八〇式の電動ガン化は失敗に終わったのである。
「どーすんだ? やれますと言ってしまった手前、このまま放置するとガチで怒鳴りこんでくるぞ」
「ヤクザよりも質が悪いからなこの時代の兵隊は。そんな奴らに職場を荒されるのは勘弁願いたい」
「騒ぎになったら懲罰人事は免れないだろうな……」
頭を抱えてしまうモブたち。
陸軍省内で乱闘騒ぎでも起こそうものなら、喧嘩両成敗を免れることは出来ないであろう。
「CO2ガスガンじゃダメなのか?」
問題解決の糸口となったのは、とあるモブの言葉であった。
CO2ガスは圧力が高くて低温環境下でも安定した動作が可能なのである。
「CO2ガスか。盲点だったな」
「確かに冬場でも安定して動作するし、ガスブロも迫力がある。悪く無いな」
モブたちが現役サバゲーマーだったころは、電動ガンが主流であった。
史実のCO2ガスガンはマイナーな存在だったのである。
連射時や低気温下での作動性の良さで当初のCO2ガスガンは大いに期待されていた。しかし、CO2ガスの扱いでトイガン業界内で意見が紛糾、最終的に団体が分裂する騒動まで起きたのである。
改造ガスガンを使用した強盗殺人事件や発砲事件が立て続けに発生してしまい、2006年に銃刀法が改正されたことが止めとなった。そのころには電動ガンが普及し始めており、CO2ガスガンは日陰者になってしまったのである。
「マガジンにタンクを組み込めばいけるな」
「機関部は三八式に組み込んだヤツを改良すれば大丈夫か」
「ちと軽くなるか? ウェイトを仕込むべきかね」
CO2ガスガンは銃本体にエアガンのメカとレギュレータ、マガジン内部に小型のガスボンベを設置するだけで事足りる。電動ガンと違ってモーターもバッテリーも無いので構造が簡単で軽量に仕上がるのである。
「でもCO2ガスって高圧で取り扱いが難しいんじゃ?」
「フロンみたいにリキッド補充出来ないから、ボンベ内のガスを全部抜く手間があったよな」
「それでも実弾よりはマシだろうよ」
カートリッジを一度セットしたら使い切らなくてはいけないことに加え、高圧なので保管や廃棄方法にも気を遣うことがCO2ガスガンのデメリットである。
『おおっ、この反動は実銃にも劣らないな!』
『連射が気持ち良いぜ!』
『いやっふぅ! やっぱり弾幕はパワーだぜ!』
もっとも、より危険なものがゴロゴロしている軍隊では特に問題にならなかった。八〇式改造ガスガンは、フルオートとガスブロで兵隊サバゲーマーに大いに歓迎されたのである。
ちなみに、CO2ガスボンベに充填する装置は海軍から導入された。
海軍では早期から艦内の消火設備として炭酸ガス発生装置が採用されていたのである。
史実の海軍では炭酸ガス発生装置をラムネ製造に転用して乗組員の嗜好品として親しまれた。この世界の陸軍も同様の流れであったが、平成会派がコーラ党だったためにコーラが陸軍内で普及することになるのである。
『軍隊にいたときに比べれば楽だけど、サバゲーが出来ないのはなぁ……』
『訓練はきつかったけど、サバゲーやってるときは楽しかったな』
『こんなことなら、除隊するときにパクってくればよかったな』
この世界の帝国陸軍は志願制で満期除隊など存在しないのであるが、それでも諸々の理由で中途除隊する者は存在した。そういった人間が軍隊で経験したサバゲーを娑婆でもやりたいと考えるのは自然な成り行きであろう。
需要があれば供給あり。
平成会傘下の企業からモデルガンとして三八式と八〇式が販売されることになったのも、これまた自然の成り行きである。
『安いから心配したが、この重量感と作動の良さは文句無しだ!』
『照準眼鏡も付けられるのか!? これで狙撃兵が出来るぞ!』
モデルガンなので、さすがに実銃ベースに改造するわけにはいかなかった。
しかし、〇宮模型ばりに実銃を徹底的に分解採寸してリアリティを高める努力が為されたのである。
モデルガン仕様はストックに使用する木材を安い素材に変更したり、一部にプラスチックを使用したりとコストダウンが図られていた。それでも重量感と作動の確実さは再現されており、元兵士たちからは好評であった。
より安価なモデルとして、自動拳銃タイプのガスガンも販売された。
こちらは世界の拳銃シリーズと銘打ってバリエーション展開が図られており、手ごろな価格と扱い易さで女子や子供に人気であった。
この世界では軍隊スポーツとして発展したサバゲーは、退役兵士たちによって社会に認知された。ニュースでも度々取り上げられ、関連書籍も販売されたことで競技人口は爆発的に増えていったのである。
『山中に大量のBB弾。地主たち怒りの告発』
『河川敷で死んだ鳥の体内からBB弾 餌と間違ったか』
『分解されないBB弾 環境破壊への懸念も』
サバゲーが社会的に認知されると同時に、その弊害もクローズアップされることになった。競技人口の急激な増加に商業フィールドの整備が追い付かず、山林や河川敷にBB弾がまき散らされていたのである。
平成会派がサバゲーを始めたころは、コーンスターチを主成分にしたBB弾が使用されていた。史実の初期のバイオBB弾と同様で湿気ると膨れて使い物にならなくなるが、その分早く分解されるので環境に負荷が低い優れものであった。
初期のサバゲーでバイオBB弾が使用されたのは、環境負荷を考慮したものでは無かった。手近に入る材料で必要な分だけ自製出来れば良いという考えで、わざわざ製造機械を自作してバイオBB弾を製造していたのである。
サバゲーが軍隊スポーツとして奨励されると参加人数も増加してBB弾の消費量は増大したが、初期のサバゲーは三八式改造エアガンだったために自家製バイオBB弾でまかなうことが可能であった。
転機となったのは、八〇式改造エアガンへの機材更新であった。
フルオート化が進められたことでBB弾の消費は爆発的に増大していったのである。
平成会派は週末サバゲーのために自家製BB弾を必死になって製造したものの、供給を満たすには程遠い状況であった。再利用も検討されたのであるが、湿気るとすぐに膨れて使えなくなるために不可能だったのである。
『たまに撃つ BB弾が無いのが 玉に瑕』
『フルオート BB弾が無けりゃ 持ち腐れ』
――と、兵隊サバゲーマーが川柳で自嘲してしまうくらいに当時の状況は酷いものであった。八〇式を使用したサバゲーではフルオートが禁止されて、セミオートのみで運用されていたのである。
『何が悲しくて八〇式で単射せにゃならんのだ!?』
『せめてサバゲーくらい遠慮なく撃たせろ!』
このような声に押されたのか、陸軍省でBB弾の供給を行うことになった。
BB弾の大きさと重さを規定し、複数の業者に落札させて安価に調達することを目論んだのである。
陸軍公認の軍用BB弾は、コストと長期保存性が重視されていた。
結果として、分解されにくい普通のプラスチックBB弾が採用されることになったのである。
「撃て撃てっ! 撃ちまくれぇっ!」
「んんん~気持ちいぃぃぃぃ……!」
1袋10kg5万発という大容量は弾不足を一気に解消した。
週末恒例となった軍隊サバゲーでは、訓練のストレス解消もかねてフルオート射撃をしまくる兵士達の姿があったのである。それだけならば特に問題は無かったのであるが……。
「逃げる奴はアカだ。逃げない奴はよく訓練されたアカだ。本当アカ狩りは地獄だぜぇ!」
「ちょ、おまっ!? それは反則だろう!?」
火を吹くヴィッカース重機関銃を見て、慌てて物陰に退避する兵士たち。
もちろん銃口から吐き出したのは実弾ではなくBB弾である。
激化する軍隊サバゲーでは、勝利のために手段を選ばない傾向が強かった。
一部の兵士たちは小銃よりも機関銃のほうが弾幕を張りやすいと考え、用途廃止となったヴィッカース重機関銃を改造して投入していたのである。
小銃よりも大型な機関銃であれば、大容量のガスボンベを仕込める。
ベルト給弾の代わりに外付けの大容量マガジンを付ければ、圧倒的な弾幕を張ることが可能なのである。
「このやろっ、喰らえっ!」
「なぁっ!? 総員退避ーっ!」
対抗するように向けられた三年式重擲弾筒を見て、相手も慌てて退避する。
こちらはモデルガンではなくモノホンの擲弾筒である。
擲弾筒の引き金を引くと、カートリッジ内部のガスボンベが大量のガスを噴出する。その勢いでカートリッジ内部に仕込まれた大量のBB弾が一斉に発射されて広範囲にばら撒かれたのである。
平成会派が試験的に投入したガスグレネードを見た兵士は、擲弾筒で同じことが出来ないかと考えた。
そこで製作されたのが擲弾筒用ガスカートリッジである。
サイズは実弾と同一であり、擲弾筒を改造しないで済むのでお手軽な火力投射手段として軍隊サバゲーではよく用いられていたのである。
こんなことをしていれば、いくら広大な演習場と言えどBB弾だらけになった。
演習場ならば問題にはならないが、娑婆でそんなことをやれば社会問題化は必至だったのである。
この事態を尻ぬぐいすることになったのは、当然というべきか平成会であった。
『景観に配慮する』という題目で、平成会傘下の企業がバイオBB弾を民間向けに販売したのである。
バイオBB弾は軍用BB弾と比べて割高であった。
そこで、高研磨、高精度などを謳ってプレミア感を強めて販売された。それでも安価な軍用BB弾を使うサバゲーマーは多く、摘発される事例が多発したのであるが。
商業フィールドの整備も急がれた。
こちらも平成会傘下の企業が主体となっており、郊外の山林フィールドだけでなく、アクセスの良い市内に屋内フィールドやシューティングレンジを設けるなど配慮が為されたのである。
この世界のサバゲーの傾向は、屋外は男性で室内は女性子供が主体となっていた。現役または軍務経験者は屋外でサバゲーをし、サバゲー入門者な女性子供は室内でサバゲーをするといった具合である。
1930年代後半になると民間でもサバゲーチームが多数誕生し、サバゲー大会も開催された。大会には大口のスポンサーもついて、豪華な賞金や商品をめぐって壮絶なサバイバルが繰り広げられたのである。
「おーおー、賞金目当てでぞろぞろと……」
「いや、俺らも人のこといえないだろ」
「ふふっ、優勝賞金はいただきだぜ!」
とある日の帝都某所。
会場には各々のサバゲー服に身を包んだ平成会派の姿があった。
「それは良いんだが、民間の大会に俺らが参加して良いのか?」
「別に禁止されてないだろ。最近はあいつらのノリに付き合いきれんし、こういうのも悪く無い」
彼らが民間のサバゲー大会に参加しているのは、軍隊サバゲーに付き合いきれなくなったのが理由であった。最近はチーム同士というよりも小隊や中隊で大火力の投射合戦と化しており、少人数の平成会派チームは苦戦を強いられていたのである。
「んで、俺らの相手は……なんだ爺さんたちか。こりゃ楽勝かな?」
「おいおい、見た目だけで判断するのは危険だぞ?」
「そうは言うが、腰の曲がった爺さんたちだぞ。負ける理由が無いだろ」
平成会派の最初の相手は、チーム『二〇三高地同窓会』であった。
見た目も動きも高齢者であり、彼らの敵ではないと思われたのであるが……。
「おーい、ちょっと照準の調子を見てくれや」
「あいよ。こんなもんでどうかの?」
二〇三高地同窓会のメンバーの一人が、同僚から受け取った三八式の照準を調整する。迷いなく照準を弄る手つきは、どう見ても素人では無い。
「ふむ、こんなもんじゃろ」
無造作に構えた銃身からBB弾が発射される。
狙いたがわず、離れた場所に置かれた空き缶が吹き飛んだ。
「「「なん……だと……」」」
その光景を見て絶句する平成会派の面々。
老人と空き缶までの距離は20mはあった。それを立射で初撃命中させたのである。
「相手のチーム名を見て気付いたんだが、二〇三高地って、確か日露戦争の激戦地だったような気がするんだが……」
「とすると、目の前の御隠居たちはその生き残りってことか!?」
「おいおいおい!? どうするんだよ!? 相手は戦場帰りだぞ!?」
「うろたえるな! 俺らだって(生前は)自衛官や特殊部隊上がりなんだぞ!? そうそう引けを取らん!」
戦う前から相手に飲まれてしまう平成会派のモブたち。
このことが後々までゲーム展開に影響を与えてしまうのである。
「……不気味なほど静かだ。いったい何処にいる。ぐわっ!?」
警戒移動していたのに、顔面ヒットしてモブは退場するハメになった。
完全に気配を絶った状態で、しかも完璧なカモフラージュで木の上から狙撃されては回避行動もクソも無い。
一人、また一人と隠密スナイプされる状況に平成会派のモブたちは耐えられなかった。多少の損害は覚悟でローラー戦術で狩り出すことにしたのである。
「いたぞっ!? いたぞぉぉぉぉっ!」
「囲め囲めっ!」
「くそっ、腰が曲がっているのになんて速さだ!?」
何のかんの言いながらも、連携してフルオート射撃で追い立てる。
ここらへんの上手さは流石と言うべきであろう。しかし……。
「よし、追い込んだ……ぞ? って、グレネードっ!?」
四方八方から飛んでくるBB弾の投網。
包囲したはずが逆に包囲されていた。慌てて退避するも既に手遅れだったのである。
「わっはっは! これで孫に玩具を買ってやれるのぅ」
「久しぶりに飲むぞーっ!」
「久しぶりに血沸き肉躍ったぞ。とはいえ、二〇三高地ほどでは無かったがな」
同日夕方。
並み居る強豪を撃ち倒し、表彰されているのは二〇三高地同窓会チームであった。
その見た目に騙されたのは、平成会派だけでは無かった。
老人と侮った他チームも実力を発揮する前に瞬殺されたのである。
この世界の日本では、老人のスポーツとしてもサバゲーが流行していた。
サバゲーは基本的に体力勝負であるが戦術で補える。瞬時の戦術判断など頭も使うので運動不足と認知症対策に最適と考えられていたのである。史実のゲートボールの立ち位置と言える。
とはいえ、良い事ばかりでは無い。
史実同様に改造エアガンによる殺傷事件や、銀行強盗事件などが発生したのである。
こうなるとエアガンに対して法規制が入りそうなものであるが、この世界の日本では別の流れを歩むことになった。子供のころからエアガンの扱い方と危険性について徹底的に教育したのである。危険性を学ばせることで悪用を防ぐ意図があったことは言うまでも無い。
平和ボケした平成時代とは違い、この世界は激動の時代であった。
何時戦争になるか分からないご時世なだけに、実銃と操作感覚が変わらないエアガンを扱えることは兵士の訓練期間短縮に利すること大なのである。
自動拳銃タイプのガスガンは、女性の護身用としての需要があった。
市内のシューティングレンジや屋内フィールドで扱う楽しさを覚えた女性たちが、こぞって購入したのである。
特に史実アメリカのサブコンパクトハンドガンをモデルにした小型拳銃が人気であり、その小型さを活かしてハンドバッグに隠したり、レッグホルスターに挿してスカートで隠すことが流行していた。
「今じゃ一家に1丁はエアガンがあるってよ」
「何それ怖い。史実のスイスと似たようなもんだな。あっちは実銃だけど」
「このまま時代が下って平成まで行ったらどうなることやら。ホント、とうしてこうなった……」
平成会のモブが思わず嘆いてしまうほどに、エアガンはこの世界の日本人にとって身近なものになった。その反動で史実で流行したボーリングやカラオケが煽りを食うことになるのであるが、神ならぬモブの身では知りようが無かったのである。
最近読んだサバゲー漫画が面白くてネタにしてしまいました。
この世界の日本では、老若男女問わず遊べるスポーツとしてサバゲーが流行することになるでしょう。
>〇ースネク〇トの某タイピングソフト
画面にガンマンが出てきて早撃ちしていくやつです。
早さだけならワープロ検定1級でしたw
>エアコッキング
1発ごとにスライドを引いて撃つタイプのエアガンです。
子供のころは東京マルイのセンチメーターマスターとか、ベレッタとかで遊んでました。
>法律的には限りなくアウトに近いセーフである
ネットで漁るといろいろな意見がありました。
おいら的にはかなりのグレーで場合によってはアウトと解釈しています。
>特に満州国陸軍に多く輸出されており
満州でドイツ軍と関東軍の戦闘が勃発した際、MP18に頼り過ぎたドイツ軍は八十式自動小銃相手に射程差で苦戦することになりました。そのことを知った満州国陸軍は八十式を欲したのですが、国内に満足に配備出来ていない兵器を輸出出来るわけもなく代わりに三十八式の輸入することになったわけです。
>サクマ式ドロップの缶
この時代には既に存在しています。
2023年1月20日で115年の長い歴史に幕を閉じましたが、分家(?)のサクマドロップスは未だに健在です。
>史実21世紀の電動ガンの倍近い長さ
史実だと改正銃刀法によって0.98J超える弾速を有するエアガンの所持は禁止されています。ポンプ出力とのバランスを取るためにインナーバレルも短くなっているのです。
>デンプンを固めているので、湿気ると膨張して使えなくなるんです
煮たら食べれるらしいですけど本当ですかね?w
>広報部
拙作オリジナル設定。
外局なので立場的には経理局よりも下扱いになります。戦場取材にも関わるので今後も出番はあるでしょう。
>東條英機
左遷されていましたが、目出度く中央に復帰。
平成会との繋がりも出来て、未来の総理大臣の道を驀進中ですw
>史実アレフゼロ101
パラメトロン素子を使用した最初期の卓上電卓です。
テンキー配列や浮動小数点表示の採用など先進的でしたが、地磁気の影響を受けやすいという弱点もあったり。
h ttps://sts.kahaku.go.jp/sts/detail.php?no=900990151001&c=&y1=&y2=&id=&pref=&city=&org=&word=&p=1313
>この方式の弱点は印刷速度が遅いことである。
1列1ドットで、送りも1ドット単位なので印刷が全然進みません。
開発中はスムーズな送りが出来なくて試行錯誤の連続だった――という使わなかった設定があったりします。
>しかし、東條は平成会派の存在を忘れてはいなかった。
本人からすれば、世話になったので取り立てただけなのですが。
平成会派が有能なことは既に知っているので、内閣調査部共々滅茶苦茶に扱き使うことになります。それが何時になるかは現時点ではネタバレで話せませんが、そう遠くないのは確実です。
>電動ガン
全ての季節で安定した弾速で打てることに加えて、充電式バッテリーを使用しているのでコストが安いメリットがあります。さらに引き金を引くだけで連射が可能なので史実のエアガンの主流となっています。
>CO2ガスガン
寒さに弱いフロンガス使用のガスガンとは違い、より高圧で作動する二酸化炭素を使用しているので冬場でも安定した動作とガスブロが楽しめます。史実では業界のゴタゴタと改正銃刀法のせいで日陰者になってしまいましたが、この世界では主流となっています。
>コーラが陸軍内で普及することになるのである。
コーラのレシピの再現にかなり苦労しています。
ネタを追求したら面白そうなので、気が向いたら自援SSで書くかもしれません。




