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第七十七話

『悪夢の谷に増えた魔物の討伐』

 ファーストの街から十五キロ程の距離を南に歩くと、二つの大きな山脈が交差している場所がある

 

 山は険しく、土はもろく崩れやすい。

 崖が崩れ雨が降り注ぎ。今の悪夢の谷になったと言われている。

 山の谷間には五十メートル幅くらいの小さな川が流れ近くの街へと流れ込む。

 

 危険な山を登って谷に降りる?そんなバカな真似はしない。

 山にも終わりがあるように、谷の入り口へいけばいいだけなのだから。



「野生動物や魔物で危ない奴は出てきてほしくない。完全に塞ぐと川の幸を得られない」

 そういうエゴから、水面に沿い流れをあまり妨げないような形で大きな壁がたてられている。

 

 小さい野生動物や魔物は川に潜り、間を抜けて街へとやってくる事もある。


 猪、子熊、ゴブリン、子オークは普通に川を泳げば街へ出られるのだが、元の場所に戻るためにはまた川を潜らなければならない。

 物を奪っても物を抱えたまま集落へ戻るのは難しい。

 人を攫っても人を抱えたまま集落へ戻るのは難しい。

 

 溺れている子供を助けようと大人が手を伸ばしても、しがみつかれる場所で人は簡単に溺れる。

 水の中は安定しない。筋肉質な水に慣れた大人でも小さな幼児が捕まるだけで溺れる事もあるのだ。

 

 さらに交代制で警備が壁についており、現れるとすぐに退治するか応援を呼び退治する。

 悪夢の谷はこういう運用がされていた。

 

 物も奪われず人もさらわれないのなら安全ではないか。

 それは違う。


 悪夢の谷の近くの村に俺達は来ていた。

「ええ……最近出てくる魔物が増えまして」

 村長が額の汗を拭いながら、そう言った。

「ここ数年、一日に五匹や十匹ほど出て来ましてな。警備も複数人で対処しておりますが怪我人も増え困っておりました」

 川があり、野草や植物。山の幸があり、食べ物が溢れる自然一杯の所に生き物が住めばどうなるか。

 

 増えるのだ。

 増えていっぱいになると新天地を目指して他の場所へと移ろうとする。

 それが生き物の摂理なのだから。


…… ……


 カレンもシアもエレノアもシノブも、金属鎧ではない。


 川を潜り、壁を越える。

 悪夢の谷の内側についた俺達が陸に上がった時、彼女達の服がぴったりと水で張り付き、やや透けていた。

 

「川が冷たいですわね……」

 聖職者服……神父服やシスター服は基本黒や灰色が多い。

 教会付きの聖職者は服が汚れる作業もしなければならないのだから。

 だが、エレノアは聖女という光のイメージのためか、個人的な趣味か。薄い布地の白い服だった。


「全く、魔法で施錠すれば良いのじゃから入り口くらい用意しても良かろうに」

 シアが魔法をかけて乾かす間、まあ眼福だったと言っておこう。


 

「いっぱいいるわね」

 カレンが気配を伺う。囲まれてはいないが確かに多くのゴブリンがパッと見いた。

 

 都会の街中に繰り出して、人の数を数えましょう……答え、いっぱいいる!

 

 都会の街中に繰り出した時の人の数。その程度にはいるゴブリン達の姿を見て、カレンは疲れたように溜息をつく。


「気を付けろよ、お前達が巣に持ち帰られたら、お前達の子供……A級パーティーの能力を持ったゴブリンが生まれるんだろう?」


 ゴブリンは繁殖するために女性を攫い洞窟の奥とかで色々と子供ができちゃう事をしちゃうんだろう?

 

††† †††

 ゴブリン達が作った昏睡系の罠に捕まり、気が付くと洞窟の奥。

 自分の力を発揮する事もできないまま捕まる俺達。


「くっ、殺せ!」

 カレンが悔しそうにゴブリン達を睨みつける。


「や、辞めるのじゃ……」

 体格が小さいシアは、小柄なゴブリン達に気に入られたのか複数匹に抑えつけられる。


「わ、私は聖職者……聖女ですわよ!下がりなさい」

 ああ、神様……と涙目で祈るエレノア。


「だ、ダメ……こない……で」

 シノブもゴブリンの薬で身体が弛緩させられ、力が発揮できない。

 ただ涙を流して震える。

 

「やめてください、ああ……」

 トミンまで……ああ、なんて事だ。

 

 A級パーティー。特級や上級揃いのカレン達を苗床にした最強のゴブリン軍団ができてしまう!

 

 無力な俺は見守る事しかできない。

 ちくしょう!ちくしょう!

 

††† †††

 

 シノブから腿を蹴られる。

 うずくまるくらい痛い。

「い、痛い……本当に痛い。いい角度で筋肉がはがれるような角度で入った」

「き、キモ……いよ?」


「物語の中の話だけじゃ。魔物と人間の間に子供が出来る訳がなかろう……」

 なんと……。

「だが、たまに人を襲ったと新聞にでてたぞ?」

「……魔物なんじゃから、そりゃあ人を襲うに決まっておるじゃろう?」

 何を言っておるのじゃ、と首を傾げる。

「あれ。ゴブリンが苗床として人を襲う、という事はないのか?」


「ゴブリンにもメスはおろう。なんで人と交わるのじゃ。お主は野良犬がメスじゃったら発情して襲うのか?」

 

 まあ、確かに。

 くそ、騙された。ギルドにあったエロ小説に騙された!


「来たわ!」

 俺達が壁の向こう側から来た事に気付くと、ゴブリン達が威嚇の声をあげ、迫って来る。


 カレンが腰の剣を抜き、目に見えるゴブリン達を潰していく。

 ゴブリン達が持っているのはボロボロに欠けた切れなそうな石を割って作ったナイフ。

 

 危なげなく倒していくカレン達を見ながら、俺は

「頑張れ、そこだ、やっちまえ!」

 戦うカレン達の応援をした。


読んで頂きありがとうございました!


【蛇足なあとがき】

「オルタ、たまにこの小説が朝に更新されている事があるのはどうしてなの?」

「ああ……。書いてると眠くなってしまうらしいんだ」

「子守歌……いや、子守タイプなの?」

 眠くなるようなユルい文だといいたいんですね?解ります。

「羊が一匹、羊が二匹。みたいなノリで文字が一文字、文字が二文字と数えるらしい」

「文字だと羊じゃないくらい大変な数になりそうね」

「2000文字以上で投下って決めているらしくてな。1998文字、1999文字、一文字足りない、とたまに嘆いているらしい」

「それは皿屋敷の方じゃない!いや、そうじゃなくて……書きなさいよ!」

 1文字なら句読点つければいいじゃない、というカレン。

「足りない時には句読点や三点リーダーとかに頼るらしい」

「【・】って全角ドットを三ついれれば三文字稼げるわよ?」

「それはやってたらしい。過去に別作品でそれをやって『見にくいから三点リーダー使いなさいよ!』と指摘されたらしい」

「それ以降三点リーダーに変わって二文字足りなくなってるのね」

「いや、全角ドットにしてても内容がペラくなって、一文字足りない、となるらしいんだが」

「ダメじゃない……」

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