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第七話

本日二本投下予定。

10:00と15:00の二回です!

「ふぁぁぁ、おはよぉ、オルタはん」


「お前、神様なのに寝るんだな」

「当然やろ?オルタはんの身体使わせてもろうとるからな。ヒトは睡眠無かったら死ぬ生き物なんやで?」

 そして俺の前で寝ぼけ目を擦り起き上がるマニー。

「しかし一泊か。一週間予約すればもっと安く泊れたのに勿体ねえな」

「まだ受けていないサービスにまでお金を払うっちゅうのは嫌いなんや。それにわっちは今日までやしな」

 少し割高な宿泊代を払い、俺とオルタは宿を発つ。


「ん、どこに行くんだ?石や木を売るんだろ。河川敷だよな?」

「アホか……あんなん続けてたらヤバいに決まっとるやろ。あんなん昨日限りや」

ギルドに入ると昨日流木と石を買った冒険者が凄い形相で掴みかかってきた。

「おいオルタ。金返せよ」


『な?酒が抜けたらなんでこんなん買ったんだって後悔するものやで?』

『どうすんだよ、すげえ怒ってるぞ』

『大丈夫やって』


「何言うてんのか解らんのやけど」

「このゴミを十八万イエンで売りつけただろ!」


『【石と流木を売りつけた】やったらたらある程度の価値を認めとるんやけど。【ゴミ】と言うとる時点でこいつの中では価値ゼロやね。怒りを感じ取るわ』

『どうすんだよ、金を返すのか?』

『なんで返さなあかんねん。わっちが売りこいつが買うた。商売は成立しとる。ゴミの返品は不可やで?』

 自分でゴミと言ってる時点でマニーにも価値はゼロらしい。


冒険者の持っている石と流木を半目で見て、マニーは笑った。

「プッ……何をバカな事言うとんの。こんなゴミ売ろう思っても売れんやろ。そんなアホな商売成り立つと思うとるの?あんたは石や木を買う癖でもあんのか?」


 悪びれも無く言うマニーに冒険者は呆けて、改めて石と木を見る。

売った人物に改めてゴミと言われ、催眠が解けたように首を傾げた。

「……あれ、なんで俺はこんなものを買ったんだ?」


 昨日、一緒に酒場から出てきた仲間に尋ねる冒険者だったが、その仲間も首をひねった。

「酒でも飲んどったんか?夢と現実一緒にしたらアカンで?」

「夢だと?でも確かに昨日……。いや、無いな。やっぱり夢なのか」


『ありえん商売に騙された時ほど信じられんものなんや。石を高く買ったアホな行動をした、と認めるよりも、そんな騙され方はしないと思う方が強いんやで。人は自分の事は信じる者なんや。割高な健康器具とかにも効果があったと納得したりするんと同じやな』

『お前、鬼だな……』


 考え込んだ後、冒険者は頭を下げる。

「……すまん。石と木を高値で売るとか買うとかよく考えたらありえないよな。絡んですまん」

「ええよ。どこかに置き忘れ取ったんなら店主が預かっとるかもしれんよ。昨日行った所をまわってみたらどや?」

「ああ、ありがとう。探してみる」

 冒険者を軽くあしらうマニー。商売の神と言うより詐欺の神様じゃないだろうか。


「で、何をして稼ぐんだ?」

「せやなあ、ある程度金もあるし、ええ商売があんねん」

「いい商売?」

「わっちらは冒険者やろ?なら素材手に入れて売れば大儲けできるやろ?」


 昨日、冒険者から貰った金が十八万イエン。宿屋一泊で一万イエンが消え残り十七万イエンである。お金というのは、お金を産み出すために必要なのだとマニーは主張する。


…… 冒険者ギルド ……

 町から少し出た所に、一角ウサギという魔物がいる。

 小さなモフモフで冒険者をはじめたばかりの人達が狩る魔物だ。

 足が速く捕まえ辛いが攻撃してくる事はほぼ無い大人しい魔物のため、初心者向けの魔物である。


何匹倒しても討伐依頼にはなっていないため、金にならない。

それでも狩る人が居るのは、その角が売れるからだ。

 冒険者達は皆素通りするが、そのウサギの角はすりおろしアルコールと混ぜる事で薬草や毒消し草の成分を抽出してポーションにするために必須である。


ギルドの買い取り価格は一本百イエンだ。


新人冒険者達は、朝ウサギを狩り午前と午後で十五本ずつ。合計三十本程度を納品する。

新人冒険者達がウサギの角を持ち込むのは、よくあるギルドの風物詩であった。

「すいません、一角ウサギの角を十本貰えますか」

「はい、一本二百イエンになります……あら?す、すいません。ちょっと取ってきますね」 

 薬師が一角ウサギの角を買いに来て、ギルド職員が商品を出そうとした時……角が無い事に気付く。

「ギルドマスター。一角ウサギの角が一個も無いんですけど」

「なんだと?千本くらいあったはずだろ。倉庫を圧迫すると愚痴っていたじゃないか」

「そ、そうなんですけど。ほら、見てください。一角ウサギの角が全く無いんです」

 ギルドマスターが他のギルドの受付に尋ねていく。


「なんだか薬師のお使いの依頼でしょうかね?二百本買っていかれましたよ」

「私も二百本売りました」

「えっ、私も三百本売りましたよ?」


 そしてギルドマスターが尋ねる。


「誰が買っていったか分かるか?」

「「「オルタニートさんが買っていきましたよ?」」」

 合計、七百本。十四万イエン。偽金じゃないかと調べてみたが本物だった。

 あのカレン達のパーティーから追放された元賢者か。

 薬師のお使いをまとめて受けているのか、とギルドマスターは考えた。

「もうすぐ午後だ。新人冒険者達が持ち込む時間だろう」

 午後になり、新人冒険者達が帰って来たが一角ウサギの角を持っている冒険者が一人も戻ってこなかった。


「あ、ギルドマスター。お疲れ様です!」

「お前ら、いつもなら一角ウサギの角を持って来てただろう。今日はどうしたんだ?」

「一本百イエンで冒険者さんが買い取ってくれました。おかげで午後に往復する手間が省けて、五十本くらい取れたんですよ」

 冒険者が冒険者に素材を売るのは禁止されていない。

 欲しい魔物の素材の売買はよくある事だからだ。

 だが……。

 ギルドマスターは嫌な予感を感じ、顔を歪めた。


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