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第六十九話

 武器に当たったら以降戦闘に参加してはいけない。

 指揮官が倒されれば終了。

 

 申告制で、当たっただの当たってないだのと言い訳をする事はできない。

 訓練場自体に魔法がかかっており、武器が当たった場合はアウトになる。

 

 模擬戦はこういうルールの元で動いている。

 

 シフトが率いる若手領軍、百人のうちの最前列。

 二十人が右翼と左翼、中軍に挟まれ倒されていく。


 右翼と左翼の二方向。

 三人一組で相手を絞り各個撃破する事により、シフトの遊撃部隊はわずかな時間で壊滅した。

 

『すげえなぁ、練度は向こうの兵の方が高いのに』

『複数方向を相手にして戦うというのは難しいんだよっ』


 人は後ろに目がついてない。故に前後から攻撃されると死角ができ身体が動かなくなる。

 人の目は横についていない。左右にいる複数対象を同時に広く見る事ができない。

 

『左右は、見えているようで処理がおいつかない。片目で相手をする事になるから距離感が掴みにくいんだよっ』


 片目だと両目でしっかりと捉えている時よりも対処はしづらくなる。

 球技をする時に、片目をつむって打ってみると解る。一個の標的を捉える事も難易度がぐんとあがるはずだ。

 標的が二個別々の方向からあれば、片方に気を取られて身体が上手く動かなくなる。

 

 

『歴史上、強兵を集めた大軍でも挟撃や包囲によりあっさりと沈んだりしてるんだよっ』


 少し間を開けている二列目の二十人を突っ込ませる前に、散開し再び鶴翼の形へと戻る。

 

「あんな見え見えの手に引っかかりおって!」

 二十人ずつに分けていた五列のうちの一列目が潰れ、残りは八十名となった。


『無策に一列は剥がせたけど、向こうも本気を出してきたねっ』


 シフトは残りの八十人を、中央を除いた九人、九列で密集陣形へと変え前進させる。

 練度が高く、決められた陣形の位置まで素早く動き、陣形を変化させる。


『よく、傭兵学校とかで行進や決められた位置への駆け足移動、とかやらされなかったかなっ?』

『学校の時は俺もやらされた気がするな』

『平和な世の中でも足並みを揃えた行進、集団行動、組体操は陣形変化訓練から来てるんだよ』

 そう言って眺めると、二十秒程度で陣形を方陣……四角の密集陣形へと変化させた。

「前進せよ!人数が多いのだ、方陣にして中央を打ち破れ!」


『人数差がある上に密集陣形を組まれると各個撃破がしづらくなるねっ』


 本来は密集させた陣形は外側が攻撃を防御し、内側から弓や槍で攻撃する事になる。


『あの厚みを囲うにはかなりの人数が必要になるな』

『長槍の密集陣形。ファランクスは騎兵を繰り出してもびくともしなかったんだよっ近代まで使われた陣形で、剣と盾の歩兵同士の戦いでは最強と呼ばれている陣形だねっ』


 盾を左手に持ち戦うため、右側面。剣を持っている側への突撃で打ち破るのがセオリーである。

 今回は訓練なのでみな盾は持っていないが、それでも簡単に打ち破れそうにはない。


『こっちの中軍はわずか九人だが、あの厚みで前進されると辛いな』

『そうだねっ』


 アロナは前進の速度にあわせて中軍を後退させる。


『ただ、密集させると渋滞が発生するんだよねっ』

 互い違いに配置させると渋滞が抑えられるが、完全な密集陣形よりも当たりは脆くなる、と言うアロナ。

 

 アロナは距離を取りながら右翼と左翼から手に持った武器……木の棒を投擲させる。

 木の棒に当たった兵達が、一人、また一人と離脱していく。

 上から来る攻撃は、密集陣形だと見えない。


 歩兵同士で最強を誇る方陣は、砲や投石器に弱い。


 右翼と左翼は今回の武器、木の棒を方陣の中央へと投擲する。

 通常兵装の方陣と槍であれば盾を上部に構えて防ぐが、訓練で扱うのは木の棒のみ。

 投擲とも言えないような放物線を描く木の棒に、自由に身動きが取れない兵達が当たり倒れていく。


 アロナも一緒になって放った木の棒は大きな円を描いて方陣の中央に居るシフトへと当たった。

『敵指揮官の首ゲットだよっ』


…… ……


「……オルタ殿、武器を投げるのは禁止だ!」

 アロナはそれを聞いて笑いながら煽るように言った。

「負けそうだから遠距離攻撃をするなとか。これが本番。弓や投げ槍だったらどうするつもりなのかなっ?覇気が無いねっ」

 

 煽るように言うアロナに、シフトは掴みかかろうとするがアロナはすっと後ろへ下がり躱す。

「昨日、シフトさんも負けたから攻撃辞めてって言ってら本番だとどうするって言ってたよねっ」

 イラっとした?人がやられて嫌な事はやらないって教えられなかった?

 そう煽るアロナに、シフトはますます顔を赤くする。


「こんな醜い戦い方をされては訓練にならんではないか!」

 そういうシフトに、アロナは吹き出しながらこう言った。

「ダブルミーニングで眼鏡が必要だねっ」

『眼鏡?』

『見にくいなら眼鏡が必要だし、醜いなら目がおかしいから眼鏡が必要だよっ』

 うまい事言うな。

 ……いや、うまい事言ってるのだろうか。

「本当の戦闘なら武器を投げるバカなんて居ない!それに歩兵隊が盾を持ってたら防がれて武器を失うだけではないか!」

「模擬戦だからやったんだけどねっ訓練にならないって言うのなら木の棒を飛び道具に使うのは明日から無しにするねっ」


 三日目にして、ようやく一勝をもぎとった。

 シフトが去った後で俺はアロナとハイタッチをした。

読んで頂きありがとうございました!

ここで一つ。

なぜ投稿時間が深夜なのか?→書いてたら深夜になったりするからです。

なぜ投稿時間が朝なのか?→疲れて寝てしまい、朝書いたりするからです。

不定期な投稿時間でごめんなさい(._.;

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