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第五十二話

「武器はこちらで預かります」

 そういうゲート管理員に武器を渡し、入れられたのは牢の中。

 窓も無く分厚い壁に囲まれ、鉄格子は手の中におさまらない大きさだ。

『捕まったが、どういう事だよ』

『さあ?』

 カレンは退屈そうに欠伸をして、肘を枕にして横になる。

 遊び道具は募集されなかったからか、シノブとエレノア、アジュールはカードゲームをしている。

 

「何かの間違いじゃ!母上を、母上はどこにおるのじゃ!そこの牢屋番達、儂らを出すのじゃ!」

 間違いも何もない。

 シノブとカレンが実際にゲート管理員を打ち倒しているのは事実なのだから真っ当な対応だろう。

 だが、自分の国で捕らえられたというのがショックだったのか、シアが一人だけ悲壮な表情で叫んでいた。

「儂は王女じゃぞ!王位継承権も一位で儂いちばん王に近い存在なんじゃぞ?ここから出すのじゃぁ!」

 

「おいおい、不敬な事を言うんじゃない。王女様がお前みたいなチンチクリンな訳が無いだろう」

「そうだ。こんな下品なガキが王女の訳がない」

 牢屋番達は嘲笑うかのようにシアを煽る。

「キィィィィィ!!」

 煽り耐性が無いシアが綺麗な水色の髪を粗く掻きむしる。

 そんな事をしてるから枝毛が増えていくんだぞ……。

 

「こ、この……下級兵の癖に!ワシが出たら左遷してやるのじゃ!」

 シアが何度か魔法を使おうとするが形になる前に霧散する。

 その姿を見て門番がさらにバカにするように嘲笑う。 

『牢の中は魔封じがあるからねえ……。魔法は使えなくなるんだよ』

 動物園のライオンの威嚇のような、絶対安全な檻の外からからかわれてシアが涙目で地団駄を踏む。

 

「シ、シアも、カードゲーム……する?」

 シノブがそう言ってジョーカーを差し出す。

「いやじゃ!お前らはイカサマするからいやじゃ!」

「し、してないよ……?」

 

 反射神経や速度が必要なゲームではシノブが圧倒する。

 聖女だからか、徳があるからか。運が必要なゲームだと幸運なエレノアが圧倒する。

 

「まあまあ、何かを賭ける訳でもありませんし、時間つぶしですわよ?」

「……むぅ」

 暴れても意味がないと悟ったのか、エレノアとシノブの隣へと腰を下ろす。

「二枚交換じゃ」

「あら、ごめんなさい。ロイヤルストレートフラッシュですわ」

「嘘じゃろ、それジャンボ宝くじ三十枚買って一等が当たるくらいの確立じゃぞ!?」

 ……幸運なだけだよな?イカサマしてないよな?

 

 牢屋から出ろとすぐ言われるだろうと思っていたが、いつまで経っても迎えは来ない。

 

 二時間が過ぎ、カードにも飽きてきたのか、みんな横たわって休んでいる。

『ちょっと長すぎるんじゃないか?』

『そうだね、あの程度の軽犯罪なら一時間くらい留置されるだけのはずなんだけど』

 アジュールが首を傾げる。

 セルリアが話を付けると動いているにも関わらず、この留置時間はおかしいだろう。

 そう考えていると、別の兵士がやってきて牢の中へ人数分の首輪を投げて来た。

「まずそれを付けろ。そしたら出してやる」

『なんだこれ……』

『魔封じ、スキル封じ、力封じの首輪だよ』

 嫌な響きの首輪が出てきた。

『魔法もスキルも使えなくなって力が下がる。後は遠隔で爆発させたりできる。凶悪犯罪者用だね』

『ダメだろそれ……』

 カレン、エレノア、シノブ、シア、アジュール。

 全員が首に着けたのを確認すると、牢屋の鍵が開けられた。

「さっさと出ろ、陛下がお会いになる」

 牢から連れ出され、ニ十分程待った後に謁見の間へと通される。


『あれ何だよ』


 ブクブクと太っている脂ぎったエルフだった。

 ハーフオークだと言われても、なるほどとすぐ納得するような容姿。

 金色の宝飾具を多量に身に着けているが、飾りつけられた豚にしか見えない。

『何の儀式が始まるんだよ、あれを生贄に捧げたりするのか?』

『……あれが陛下なんじゃないの?』


 俺達に首輪をはめた牢屋番が、並んでいる騎士の一人に耳打ちする。

 俺達全員の首輪を確認した後に、階段前で(ひざまづ)かされる。

 

「直答を許そう。我が国の第一王女、シアの名前を騙ったそうだが、それはまことか?」

「騙るも何も、儂がシアじゃが……貴様は何者じゃ?」

 そう言うと、シアの背後のエルフが不敬であるぞ!と槍の持ち手でシアの肩を叩く。

 小柄なシアが叩かれ倒れる。

 それを見てカレン達、アジュールが怒りで顔を歪めた。


「儂の名はアジュール・エルブンシア。この国、エルブンシアの王である」

 そして、王の傍に居るぶくぶく太っている脂ぎったエルフ二人が言った。

「私の名を騙るなんて……とんでもないですわね、お父様、お母様」

「ええ、こんな薄汚いのがシアを名乗るなんて、とんでもないわ」

 (トン)でもないと言うエルフはセルリアのつもりなのだろうか。

 

『実はシアが王女って言うのが信じられなかったんだが、お前ら俺を騙したのか?』

『騙してないよ、オルタ君は何を言ってるのさ……』


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