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第四十九話

 内乱になっている原因は王が不在だからだ。

 アジュールから国について聞いたが、王が居なくなれば血が繋がっている子へと受け継がれるらしい。

 シアの国は男子優先長子相続制が取られている。

 この場合、先に女子が生まれても後に男子が生まれれば男子が王位を受け継ぐ。

 アジュールとセルリアがまだ若かった事もあり、シアが女王となる可能性は低かった。

 自由にさせて貰えていたわけだが、アジュールが失踪、生きていないとすると。

『シアは次の王になるだろう』

 女王と結婚した場合、王配もしくは共同国王となる。

 この共同国王の座を狙って、内乱が起きているのだ。


『王様ってのもいいものじゃないよ?自由はないしね』

 そして一呼吸ためて、頭を掻きながらアジュールはこう続けた。

『ぼくみたいに、暗殺されたりするかもしれないしね』

 緊迫感の無い表情で。

 アジュールは笑いながら、ぼくはもう生きていない、と言った。

 

 コピーカレンがあったから、アジュールも失踪しているだけで生きていると思っていた。


「シア、整理してみよう。シアはどうしたいのかな?」

 そうアジュールがシアに優しく話しかけた。

「内乱を止めるのに一番いいのは、セルリアの薦める誰かと結ばれる事だろうね。きっと問題ない人物を選んでいるはずだ」

「オルタ……何でおっさん臭い事を言っとるんじゃ……?」

 アジュールが固まった。

『オルタくん……ぼくおっさん臭かった?』

『おっさんがなんでショック受けてるんだよ……』


「内乱を止める為にはワシが婚姻せねばならん。国の貴族と結婚となれば、もう今みたいに冒険もできなくなるじゃろう?」

「……まだ冒険するつもりなのかい?いや、オルタくん……いや、ぼくとくっついても王の仕事はしないといけないだろ」

「オルタは賢者の時から割と何でもできるからのう。王の仕事やっといて、とか言ったらやってくれるじゃろう?」

 この女王モドキ、旦那に丸投げする気かよ……。

 

「それだったら、セルリアのお薦めと結婚して丸投げする方がいいだろう?」

「ダメじゃ、あの女は男を見る目がなさすぎるんじゃ。自分の旦那もスカを引いとるし。儂も冒険者つづけられなくなるしの」

 スカ扱いのアジュールが泣きそうな顔をしている。

「でも、国の事が全然わかってないオルタくん……いや、ぼくだと……」

 そしてアジュールがブツブツと言いながら何かを考え込み始めた。

『シアとオルタくんがくっついて困った時にぼくが交代すれば……もしかしていいアイデアなんじゃないか?』

『お断りだ!』

 断る!そんな窮屈な生活は断じて断る!

 

 

「シアが全員を叩き潰せばいいんじゃない?」

「ん……?」

 カレンが不穏な事を口走る。

「全員叩き潰してシアのお母さん?セルリアさんに従えって言えば終わりじゃないの?」


『いや、そんな簡単にはいかないよ……?個人と軍は違うんだから』

『いや、……シアはおかしいから。シアならいけるかもしれないぞ』


「もし儂が負けたらどうするんじゃ?」

「その時は『儂を倒すとは見事、天晴!お前に国を動かす権利をやろう!』とか言って戻ってくればいいんじゃない?」


『王ってのはそんな簡単に渡せる物じゃないよ』

『いや、……シアはおかしいから。あの顔は多分本気で検討してるぞ』


 超逆説的段階……ストックホルム症候群に似たこの現象はマインドコントロールの一種だ。

 人は追い込まれた時、いいアイデアが浮かばない時などに愚策をいいアイデアだと思い込む事がある。


 人は高負荷のストレスを与えられると、そのストレスから逃れようと思考が逆転する現象がある。

 痛みを与え続けたラットは、痛みを求めるようになる。

 明らかに搾取されるブラック企業に、愛社精神を持つようになる。

 カルト教団でもセミナー後には狂信者をうむように、いかに安全にストレスを与えて思考を逆転させるかを研究している所もある。

 ストレスを与え続けると、嫌悪が好意に変わるのだ。

 

 徹夜で書いた小説が翌日赤面するようなデキだったりするような、ああいう現象である。

 まともな精神状態ではない。


 いつものんべんだらりと生きてきたシアにとって酷いストレスだったのだろう。

 

「何を愚かな事を言っておるんじゃ……」

 いつものシアならこう答えていたであろうカレンの言葉に、シアは頷いた。

「なるほど、いいアイデアじゃのう……」

「でしょう?」


 そんな言葉を交わし、シアが俺の部屋から飛び出していく。

 カレンは満足そうに解散の合図を出して俺の部屋から出て行った。

 

『ねえ、オルタくん。シアのあれ本気じゃないよね?』

『……』

『シアがアホの子になってしまった……』

 

 そう嘆くアジュールに俺は言ってやった。

『アイツ、昔からあんな感じのアホだったけどな……』


 そんな解散した翌日、俺とアジュールがギルドに顔を出すと……

 セルリアさんが机に突っ伏していた。

「……ど、どうしたセルリア……セルリアさん」

「シアが……訳の分からない事を言ってるの」

 そして半ば強引に、セルリアさんに護衛依頼を出させ……カレン達一行はシアの国へと向かう事を決めるのであった。

 

頭痛が酷くて投下を大分サボってしまいました。

読んで頂きありがとうございました!


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