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第三十五話

「司教様、急な面会に応じて頂いてありがとうございます」

 エレノアが五万イエン程を司教に手渡した。

「聖女様ならいつでも歓迎致します。女神様のご加護があらん事を」

 

 教会を出ると、日は落ちていた。

 エレノアが不機嫌そうに口を尖らせて俺を睨んだ。

「全くもう、オルタさんのせいで司教様に呆れられましたわよ」

「悪かったよ、付き合ってくれて助かった。一つ貸しにしてくれ」

「……オルタさんの貸し、大量に不良債権化しておりますわよ?」


 割とエレノアはお願いを聞いてくれる。

 カレンは面倒見はいいが自分が乗り気にならないことは絶対やらない。

 シアもカレンと同じだ。

 シノブは良くて無視、悪ければ邪魔してくる。

 そんな中、エレノアは聖職者という職業柄か本人の性格か。

 困ってる(オレ)に手をさしのべようとしてくれる。

 そしてエレノアが動くと、なんだかんだ言いながらカレンもシアも手伝い始める。

 何度エレノアに窮地を救われたことだろうか。


「聞いてますの?」

「うん、ありがとな、エレノア。いつでも回収してくれ。ヌードモデルでも何でもやるぞ」

「縁を切りますわよ?」


 真顔で言われる。よっぽど俺にイラついたんだろうか。

「それにしても、エレノアは人がいいよな」

「何がですの?」

「何だかんだ言いながら俺の頼みを聞いてくれるし、足を向けて眠れないな」

 そう言うと、エレノアは視線を外した。

「オルタさんもですわよ。教会のリルイにお金を貸したと聞きましたわよ?」

「……ああ、困ってるみたいだったし、幸い金に余裕はあったしな」

 そう言うとエレノアは、何かを言いかけて飲み込んだ。


「……お腹がすきましたわ」

 エレノアはカレン達に声をかけて、食事に行くといい別れた。


 

「結局、借金はどうなってるんだ?」

 フォナが怪訝そうな顔をする。

「教会は借金の事を知らないようだったが、借金自体がダースによるでっち上げなのか?それとも司教が嘘をついている可能性もあるな」

 ガストはそう言って腕を組んだ。


 ダースが借金をでっちあげ、リルイが騙された被害者

 そうであれば解りやすい悪人(てき)が居て楽だったんだがな。

 

「なぁ、カガリ。リルイはどこに居るんだ?」

『他のパーティーに助けられて。幸い怪我はしなかったんだけど、戦いになると震えてスキルが使えなくなってしまった』

「怪我をしなかったんなら、リルイは家に居るんだよな。どこだ?」


「……それを聞いてどうするつもり?」

 俺が尋ねると、やや警戒したようにカガリは答えた。


「お前でもいい。お前か?リルイか?」

「どういう事ですか?」

 フィナが首を傾げてカガリを見るが、カガリは俯いて何も答えない。

 

「片目を赤黒く腫らしたリルイが来ただろう?なんで目を腫らしていたんだ?」

 そう尋ねると、口を開いたのはガストだった。

「ダースさんに殴られたんじゃないのか?借金返せないとなったらあの人なら怒って手をあげるだろ」

 そうガストが言うが、俺は首を横に振った。


「どうしてリルイが殴られるんだ?あいつは教会の雇われ賢者だろ?」

 そう言うとカガリはかすかに震えた。


『教会に泥棒が入ったらしくてな。教会の司教が運用資金を借りたのに返せないと言ってきてな』


「ダースは司教が借りたのに返せないと言った。ならダースが殴るのは司教の方だろ。なんでリルイを殴るんだ?」

「個人的に恨んでたみたいだし、見知った顔だからリルイの方を殴ったんじゃないのか?」


 教会が借金をして返せないと言うから、雇われている人間を殴りました。

 無いだろう……。そんな理不尽な暴力を通せる訳がない。 

 教会が訴えたら捕まるのはダースの方だ。

 

「大丈夫だ。司教様も教会の本部へかけあってくれている」

 リルイが以前言った言葉を繰り返すと、カガリは目を泳がせる。

「司教が嘘をついているかリルイが嘘をついているか。どっちかだよな?」

 教会の本部へかけあうと言って、しらをきるよりもリルイが司教に伝えていないんだろう。

 

 パーティー参加の希望も出さないまま、ダンジョンにソロで潜った。

 偶然居合わせたパーティーに怪我無く助け出されたがショックでスキルが使えなくなってしまった。

 

「賢者職ならどこのパーティーにも入れるはずなのに、なんでソロで潜ったんだ?」

 そう俺が呟くと、カガリの顔が青ざめる。

 

「参加の希望くらいはしてもいいよな。カガリは理由を知っているのか?」

「し、知らないわ……」

 カガリは今にも泣きだしそうな顔をしていた。 

「どういう事だ?オルタは何か解ったのか?」

「推測でしかないんだが、聞くか?」

「ああ、教えてくれ。私はオルタが何を気にしているのかが解らない」

 俺のカガリを詰問するような様子に、フォナが訝しんで話せと俺を促す。

 

 これは他人事ではない。

 俺が味わった痛みでもあるが……、俺は思い切って続きを話した。


「なぁ、カガリ。リルイは賢者じゃなくなったんだろ?」

 そういうとカガリは……観念したかのように、首を縦に振った。


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