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第三十四話

 しばらく待つとカレンパーティーが現れた。

「よう、エレノア」

「あら、オルタさん……なんですの?」

 エレノアを捕まえると、カレン達パーティーメンバーも何事かと後を付いてくる。

 カレン達、フォナ達、ガスト達、カガリと俺。

 

 酒場の二つのテーブルに分かれて座り、エレノアに事情を話すと、返って来たのは呆れたような声だった。 

「借金が八千万イエン……?この方が売られる……?そんなバカな事はありませんわ」

『あるはずがない』ではなく『ありません』と言い切った。


「で、でも実際に補修工事でそれだけかかったと……」


 カガリがそう言うと、エレノアは首を横に振った。

「女神教の教会は完全に寄付で運営されています。仮令たとえ大規模な補修工事やお金がかかる事が発生したとしても借金をする事はありません」

 大規模な工事が必要だったり、土地を購入したり、とお金が必要な場合は本部から送られるらしい。


「だが、工事後の支払いの前に盗まれたら、支払えないという事もあるんじゃないのか?」

 寄付金を送って貰っても工事して支払う前に盗まれたら払えないのではないかと口にする。

「人を動かす場合は規則として工事の前に支払うはずです。この街には銀行がありますし、現金を持ち歩くというのも考えられません」

 踏み倒した等と噂がたたないよう、女神教は商品を受け取る前に必ず先に支払いを行う事になっているらしい。

 銀行があれば確かに余分な現金を持ち歩いてもいい事はない。


「業者に持ち逃げされる事はあっても借金にはなりません」

「持ち逃げされたらどうするんだ?」

「業者は身元がはっきりしている信者の中から選ぶ事になっています。女神教に指名手配されますわね」

 世界中の女神教から、とエレノアは言った。

 鑑定には名前が出る。顔を変えようが風貌を変えようが鑑定された時点で捕まる事になる。

 そしてこの世界はステータス社会だ。ほとんどの人が身分の証明のために最低でも一年毎に鑑定を受ける事になっている。


 鑑定票が無ければ働く事もできないし、買い物もろくにできないだろう。


「それに、ありえない事ですがもし教会が借金を背負う事になったとしても、貴方が売られる事はありません」

 エレノアは売られる事は絶対に無い、と繰り返した。

「なぜだ?教会が孤児から育てた子供は教会の資産なんだろう?」


「ええ、そうですわね。成人するまでにかかったお金を返済するための期間が終わるまでは助祭扱いとして『女神教本部』の資産という扱いですわね」

 本部の資産。それはつまり……

「鑑定の際の寄付金は本部のお金であり手をつけられない。それは正しいですわ」

 でも、とエレノアが続ける。

「彼女の身柄も本部の資産ですわよ?そちらにも手を付けられる訳がありませんわ」

 カガリは呆然としている。

 

「そもそも司教様は本当に貴方を売ると言ったんですの?」

「教会の司教様から私を借金の利息として受け渡す事を了承したと、ダースさんから言われました」


…… ……

「ごちゃごちゃ考えるよりも、教会行けばいいじゃない。司教かダース、どっちかが詳しい話を知っているんじゃないの?」

 カレンの一言で、俺達は顔が聞くエレノアを先頭に、教会へと向かった。

 暇だから、という理由でカレンもシアもシノブも一緒についてきた。


「暇って言っても、大して面白い物でもないだろ」

 ついてきてエレノアと一緒に話を聞くだけだぞ?と言うとカレンは解ってないという風に首を振った。


「何言ってるの。問題が起きたら原因があるのよ。原因があれば、大体悪者がいるの。そしたら暴れられるじゃないの」

「うむ。大規模魔法を使って街を半壊させてもおとがめもなしじゃろう?」


 そんな事はない。お前らに文句を言うとますます暴れるから取れる所から取ろうとするだけだ。

「……カレンさん、シアさん。もし万が一司教に原因があっても暴れないでくださいね?」


「エレノアが面会に来たと伝えて頂けるかしら」

「これは聖女様!少々お待ちください」

 司祭が急いで司教を呼びに走る。

 ふと気付いた事を聞いてみた。

「なあ、司教と聖女ってどっちが偉いんだ?」

「バカね。聖女なんて位階は無いわ。聖人認定されているだけで私の教会の地位は助祭よ。カガリさんと同じ、司祭様の下ね」

 助祭……エレノアは司祭に様付けされてパシらせてたけどな。

「お前の親の大僧正はどのあたりなんだ?」

「女神教は複数の宗派の共同体なの。大僧正は僧の最上位、女神教では教皇様と同等の位階として扱われているわ」


 それって、もしかしてものすごく偉いんじゃないのか……?

 

 待つこと数十分。司教様が慌てた様子で現れた。

「こ、これは聖女様、一体何用でしょうか?」

 そしてエレノアはカガリを引っ張って司教の前に持っていく。

「彼女を借金のカタに売り飛ばすと言うのは本当ですの?」


 そういうと司教は、怪訝そうな顔をした。

「借金……?彼女を売る……?すみません、話が見えません。聖女様は教会の運用をご存じではないのですか?」

 そして先ほどエレノアが説明したような話……ほぼ同じ内容を司教は話した。

「ね、言った通りでしょう?」

 ドヤ顔をするエレノアに、俺達は何も言えなかった。

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