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第三十二話

 ギルドから出て、銀行へと向かう。

 金を貸すとは言ったが、額が額だ。足取りは重く、ガスト達に押されるようにして銀行へと向かった。

「いいか、返せよ?返せよ?絶対返せよ?振りで返すなよって意味じゃないからな?返せよ?」

「早く渡してあげればいいだろう」

 呆れたようなフォナの声に俺は渋々とリルイに渡す。

 ズシリとまではいかないが、結構な重さになった百六十万イエンだ。

 リルイが俺の金を受け取ると、苦情係と一緒に改めて感謝の言葉を残して嬉しそうに言った。

「ダースさんに渡してきます、ありがとうございます!」


 リルイの姿が消えて、

「良いところあるじゃないか先輩!」

「見直しましたよ先輩!」

「やるじゃねえか、先輩!」


 フォナ、フィナ、ガストが俺を肘でつつきながら俺を先輩と呼ぶ。

 しばらくはこのネタでからかわれそうな予感がして、俺は溜息を付いた。


「でもなんで百六十万イエンなんですか?」


 ん……?


 週に二十万イエンの利息ジャンプだろ?

 四週で大体一月だから月八十万イエン、二ヵ月で八週。百六十万イエンだろ?

 

「パーティー参加希望を出してもすぐにパーティーは組めないだろ?」

 リルイがギルドに申請してパーティー参加希望し、ギルドの掲示板に張り出される。

 人を増やしたいパーティーが目を着けるか、ギルドが増員を勧めて面接をした後でパーティーに入る事になる。

 パーティーのマッチングまで最低でも数日はかかる。

 

「加入して欲しい、と言われたとしても次の清算日の後だろ……?」

 その週はリルイ抜きでパーティーとして働いた動きなのだ。

 均等割りなら週の清算で揉めるのが見えている。

 労働に応じての割合の所だと、どこに入っても二十万イエンには手が届かない。

 

「加入したからと言って即戦力で働けるとしても、入ったばかりのメンバーをそのパーティーが信用しきれるか?」

 命を預ける相手になるのだ。

 探索中にパーティーメンバーを害するような動きをされたら全滅する。

 ゆえにリルイを加えた能力を加味したようなギリギリの依頼は受けない。

 足を引っ張られた時のために、今までと依頼の質を変えないか下げるだろう。

 二、三週間はリルイを加入させて戦力アップを確認するような様子見で依頼を受ける事になるはずだ。

 

「どんな所でもいい。入れてくれ、という活動をしたとしても一月分の利息は必要になる」

 じゃあ一月分でいいんじゃないだろうか?

 上記の場合はとにかくパーティーに飛び込む場合だ。

 リルイの場合はここに週二十万イエンを稼ぐ必要が出てくる。

 週に二十万イエンを稼げない所や、待遇が悪いパーティーへは加入できない。


 名誉よりも稼ぎ重視のパーティー。

 できれば誠実な信用できるパーティーメンバーが望ましい。

 

「賢者職は割と人気があるだろ?」

「そうだろうな」

 フォナが頷く

 

 二月分の利息を先払いして余裕ができればパーティーも厳選できる。

「良いところへ混ざるためにパーティーを厳選すると一月はかかるだろ」

 

 一月目でパーティーを絞りこみ、

 二月目でパーティーメンバーと距離を詰めて、どういう役割を求められているかを確認しながら十万イエンを目標に稼ぐ。

 三月目からは週二十万イエンを稼ぐのを目標にする。不足分は二月目で稼いだ十万イエンから補填していく。

 

 これなら何とかやっていけそうだろう。

 二ヵ月もあれば司教が交渉している教会本部からの金を届けて貰えば借金の原資が返せるだろ。

 そうなればリルイの仕事は終わりだ。後は俺に返してくれればいい。

 

「そういう理由で二ヵ月で足りると思ったが、何かおかしいか?」

 フォナとフィナ、ガストは俺の言葉に呆けたような顔をする。

「す、すごいな」

「オルタさんすごいですね」

「商人っぽいな。なんでそんな事を思いつくんだよ」

 

 カレン達のパーティーで戦闘になると俺は一番役立たずだったからな。

 賢者ジョブ以上にもこういう計画やパーティー運営の雑務をやっていた。

 カレン達は割と脳筋だから、見境なくワリの悪い依頼に喰いつくしな。


 必然的に考える担当が俺になっていたのだ。

 ガストの商人っぽいという言葉に、商売の神、マニーの顔がちらついた。

 マニーならどう考えただろうか。


 姉後肌で頭が良さそうに見えるカレンはとにかく暴れられればいい。脳筋だ。

 もしリルイから相談を受けたのがカレンなら……

「じゃあ、ダース達を()ちのめしにいくわよ!」とでも言いだしそうだ。


 もしリルイから相談を受けたのがシアなら……

 長くを生き知識を蓄えたシアは楽しそうな事しか頭を働かせない。子供脳でおおざっぱだ。

「でも、それただのお主の感想じゃろう?」とでも言うかもしれない。

 

 もしリルイから相談を受けたのがシノブなら……

「……」目線を合わせて何も喋らないかもしれない。そして絶対に聞いてないのだ。

 

 もしリルイから相談を受けたのがエレノアなら……

 

 そして俺は気付いた。リルイの教会……女神教。

 そこのトップは誰か……女神教の大僧正である。

 その大僧正が目に入れても可愛くない聖女認定の愛娘。

「大僧正の娘がいるだろ!どう考えてもこれカレン所のエレノアの案件じゃん!」

 エレノアに頼めば教会から金を引っ張れるだろ。なんで誰もその事に気付かないんだよ

 

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