第二十七話
「おい、二人ともちょっとこっちへ来てくれ」
俺はフォナとフィナを呼び寄せると、フォナは顔を顰め、フィナは絶望的な表情を浮かべていた。
「オルタァァァ!貴様私達を売ったな!!」
「最低です。もう誰も信じられません!」
売ったとか最低だとか。
人聞きの悪い事を大声で叫び俺を罵倒するフォナとフィナ。
周りの冒険者がヒソヒソと俺の方を向いて噂をしている。
「なんでそんなに嫌がるんだ?一回組んでみればいいだろ」
「あいつは私達のパーティー参加やメンバー勧誘を邪魔してたんだぞ?」
「勧誘もしつこくてウザいです。生理的に無理です!」
「だからだよ……」
無理やりパーティーを組ませてみればいい、というのはマニーのアイデアだった。
「実際に組んで相性を見ればいいんだよ」
ピンときていないフォナとフィナに咳払いし、そもそも……と俺は続けた。
「パーティーメンバーで上手くいく方が稀なんだよ」
カレン達のパーティーは全員仲がいいが、そんなパーティーは稀なのだ。
性格の違い、考え方の違い。
大体の場合、人と付き合う事は我慢を強いられる。
ダース達のパーティーではガストとフォナフィナは一緒だったが、ワンマンチームと普通のパーティーは違う。
実際に組んでみれば相性が解るだろう。
「もし、相性が合わなければ勧誘されなくなるだろう?興味を失えば邪魔もされなくなる」
「……ふむ」
フォナは考えるように唇に手をやった。
フォナとフィナはパーティー。もっと言えば仲間という存在を求めている。
そして自分の所へしつこい勧誘をし、パーティー活動の邪魔をするガストを疎ましく思っている。
ガストの執着が無くなれば、フォナとフィナもスムーズに組めるようになるだろう。
「だが、もし私達の事をもっと気に入ったらどうするんだ?」
「大丈夫だ。お前らの猫を被っていない姿を見れば嫌われる事はあれども好かれる事はない」
「……何だ…と?」
フォナが複雑そうな顔をする。
次にガスト達を呼ぶ。
「おいオルタどういう事だよ。二人は嫌がってるじゃねえか」
「当たり前だろ。ガスト、お前は嫌われてるんだぞ?」
俺の言葉に呆けたような顔をする。好かれてると思ってたのかよコイツ……。
「一緒に冒険できるのは嬉しいが、俺は無理やり二人と組ませろって言ってた訳じゃねえぞ?」
ガストが腕を組み、俺を睨みつける。
「フォナやフィナは絶対にお前と組む事はないぞ?」
「そんなの勧誘していればいつかは」
「何年も勧誘し続けてるが、その中でまともな会話が出来たのは何度あるんだ?」
大抵は無視、あって罵倒くらいだろう。
「冒険の中に話し合えばいい。フォナフィナがお前を嫌う理由も解るんじゃないか?」
ガストは評判が悪い冒険者とコイツラを組ませないように動いている。
評判が悪い冒険者と組ませるのは論外だが、いかんせん過保護すぎる。
冒険者なんて仕事を選ぶ以上、スネに傷は抱えているのが普通だ。
必然的に全ての冒険者からフォナとフィナをガードする事になってしまっている。
そんな男ダメだ!と言うように娘の恋愛の邪魔をする父親。
恋愛に憧れやたらと干渉してくる父親を嫌うような娘。
フォナフィナとガストの構図はこれに近い。
ほっといても父親の干渉は止まらないし
ほっといても娘が父親を邪険にする事はなくならない。
「話をしろよ」としか言えない。
「ふむ……」
ガストは考えるように顎に手をやった。
「誤解を解く機会と思えば、確かに」
「誤解じゃないぞ。お前実際に絡み方がウザいからな?」
「……何だ…と?」
ガストが少しキレそうだったのを止めて、フォナフィナを呼ぶ。
俺はそっとガスト達とフォナフィナで円陣を組ませ、みんなの手を合わせ軽く上下に揺する。
「じゃあ、一週間頑張れよ。俺は宿屋帰って寝るから。一週間後にどうなったか教えてくれ」
「待てよ」
「待つんだ……」
「待ってください」
ガスト、フォナフィナに肩を掴まれる。
なんでだよ、俺の仕事はもう終わっただろ……。
「「「お前も来い」」」
「来い……きちんと報酬は分けてやる」
「そうだ、このまま私達を放り出すなんて無責任だぞ!」
「今の俺は冒険者じゃないから無理だぞ?そもそも危険な場所へは一般人だと入れない所もあるからな」
そこへギルドマスターが通りかかった。
「フォナから聞いたが近接戦闘もかなりの腕だと聞いたぞ?再登録を認めてやってもいいが」
「近接戦闘も特定条件下じゃないとできないがいいのか?」
「……護衛依頼って事にすれば入れるぞ。危険地に踏み込む学者を護衛する事もあっただろう?」
「お断りだ!」
抵抗した物の、フォナフィナ、ガスト達に逆らえる訳がない。
俺も護衛対象としてこいつらのパーティーに同行する事になったのであった。




