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第26話 閑話

一万PV超えました、ありがとうございます。

記念にここで閑話をおひとつどうぞ。


 少女は王都にある高級宿屋を経営する商人の三女として生まれた。

 長女も次女も小柄で黒髪黒目。柔らかで少しふくよかな身体をしており、優しい印象を与えるような顔立ちをしていたが、その少女は少しばかり風貌が異なっていた。

 燃えているような赤い髪に少しきつめな顔立ち。

 十歳という年で既に近所の大人よりも一回り大きく、野生動物を思わせるような、しなやかで引き締まった筋肉。


「本当に俺の子なのか?」

 母にも父にも無い赤髪という特徴を持った少女を見て、父は嘆いた。

 

「あんたなんて生まれて来なければ良かったのに」

 不貞など働いていないのにお前のせいで笑われている、と少女に対して強く当たった。

 

 上の二人が学校へと進んだのに、見られる事が恥ずかしい、と赤い髪の少女は家から出してもらえなかった。

 そして食事も父母と姉達だけで食べ、私の席は無かった。

 私は居ない者として扱われた。

 

 赤髪の少女はお腹が空くとお腹が空いたと言い、痛い時には痛いと言う事を覚えた。

 

 お腹が空いたと言わなければご飯は出てこない。

 お腹が空いたと言えば、舌打ちされながらもご飯を食べる事が出来た。

 

 痛いと言わなければ、限りなく父母に暴力を振るわれた。

 痛がれば、父母は悲鳴に頭を冷やし暴力の手を止めた。

 

 少女は姉達のように愛情によって物を与えられる事は無かった。

『似合うだろうと思った』

『この飾りを欲しがっていただろう』

 姉達が欲しがるそぶりを見せるだけで、父母はすぐに買い与えた。

 

 次に少女は欲しいと口に出す事を覚えた。

 家が裕福な事もあり姉達が何か物を買い与えられた時に欲しいと口に出せば翌日は宿屋で働く下人が持ってきてくれた。

 

 欲しいと言わずとも買い与えられるのに嫉妬したし、はっきりと欲しいと言わない姉達に苛立ちを感じた。


 成人するまでに追い出せば、何か犯罪を犯せばその責任は父母に行く。

 赤髪の少女は成人してすぐに家を追い出された。

 

 最後に百万イエンを与えらえ、家族の縁を切られた。

「それで最後だ。後はお前には何もしてやらん。生活に困ろうが、事件に巻き込まれようが、うちの名前は出すんじゃないぞ」

 

 教育も受けず家に閉じ込められていた少女は、成人すると同時に捨てられるように実家を追い出された。


 家を出て少女は冒険者になった。

 冒険者の道を選んだのは、選択肢がそれしかなかったからだ。

 教育も受けていない、家の後ろ盾が無い少女を雇う店は無かった。


 顔立ちは整っており、そういうお店で働く事も考えたが、自身が受けた扱いから……特に肉体関係を持つ事には忌避感があった。


 冒険者として少女は女性が多いパーティーの後ろをついて周り、素材の剥ぎ取りや荷物持ちで日銭を稼ぐ毎日を送る事になる。

 

「ほう、お主……大きな身体をしておるのぉ……」

 水色の髪を腰まで伸ばした美しいエルフの少女が赤髪少女に興味深そうに近寄った。

 

 長く生きているのに、小柄な体躯で舐められ、子供扱いされるシアは大きな身体のカレンに興味を惹かれたのだった。

「ワシはシア。上級魔法使いじゃ。」

「私はカレン……。冒険者のサポートをしているわ」


 そしてシアとの出会いでカレンは変わっていった。

「ジョブ……?ごめんなさい、私には解らないわ」

「その身体なら近接戦闘職じゃと思ったんじゃが、ジョブ鑑定しておらんのか?」

「ジョブ鑑定……?私はあまり冒険者について知らないの。教えてくれるかしら?」


 小さな体躯の幼く見えるシアは、周りに舐められやすい。

 舐められれば、それはすぐに不利益に繋がる冒険者稼業だけに、大きな身体を持ちながら

 

 ほとんどの人間は知らない事を知らないと言うのを嫌がる。

 誰かにして欲しい事を素直に伝えるのを嫌う。

 そして、それが子供のような少女であればなおさらだ。 

 エルフの少女、シアはカレンの素直な口ぶりに好感を持つ。


「のう、ワシらパーティーを組んでみんか?」

「でも私、まだジョブ鑑定をしてないわよ?もしかしたら足を引っ張るかもしれないわよ?それでも良ければお願いしたいわ」

 聞けばなんでも答えてくれる、色々な知識を持つシアにカレンは惹かれた。

 子供のような体躯をしているシアを侮らず、素直にはっきりと物を言うカレンにシアは惹かれた。

「ワシはそんな事を気にせんぞ?お主と一緒に居るのは、心地良いし楽しい。それは何にも代えがたいパーティーの条件じゃとおもわんか?」


 鑑定の結果、カレンは上級剣士のジョブを持っていた。

 上級剣士、上級魔法使い。カレンパーティーの原点は、この二人からはじまった。


「なんでワシが魔法を使おうとしたら突っ込むんじゃ!」

「足止めをしたのよ!私は横によけるから詠唱を中断する方がおかしいわよ!」


 連携は上手く無かったが、喧嘩する程仲がいいという言葉があるように

 失敗しても二人はすぐに笑いあっていた。

 


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