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第二十五話

 カレンにパーティーの参加を断られ、落ち込む二人に。

 少し……ほんの少しだけだが責任を感じて、相談に乗ってやった。


「ガストの所はどうなんだ?あれだけ誘われてるんだから、少しだけでも一緒にまわってみるとかできないのか?」

 そう俺が言うと、フォナとフィナは苦い物を口にしたように顔を歪めて言った。

「無理だ」

「絶対に無理ですね」


 はぁ、と溜息を付き、二人は顔を横に振る。

「カレン様達じゃなくても……まともな居心地のいいパーティーに入れれば文句はないんだが」

「もう私達はまともなパーティーは組めないのでしょうか」


「そういえば、お前らなんでパーティーに入ろうとしてるんだ?」

 むっとした顔でフォナが俺に言う。

「昨日も言ったが二人で冒険するのは大変なんだぞ?私達は仲間というよりも家族だから、仲間という物に憧れてるんだ」

「そうです、オルタさん私達の話を全然聞いてくれてなかったんですね?」

 ムスっと顔を顰める二人に、違うと言い続けた。

「お前らB級パーティーだろ?ならお前達がパーティーに入るんじゃなくて、メンバーを受け入れたらどうなんだ?」


 この街の冒険者パーティーでA級はカレン達のパーティーのみ。

 B級もガスト、フォナの所と他にも数える程しかない。

「カレン達が受け入れる気が無いって名言したんだから、お前達の所はほぼ最高ランクのパーティーだろ」

 フォナとフィナはぱちくりと瞬きをして、顔を見合わせる。

 

「そ、それだ!」

「さすが元賢者なだけはありますね!」


 パーティーメンバー募集

  B級パーティー、フォナフィナ、メンバー募集。

  報酬は均等割り、楽しく冒険をしましょう。

  臨時のお試しでも大丈夫です!

…… 一週間後 ……

『なぁ、マニー』

『なんやの?』

 日に日に憔悴していく二人を見ていられなくなり、うちの自慢の選手(マニー)に相談してみる事にした。

『なんであの二人のパーティー、誰も応募して来ないんだろうな』

『せやなぁ、まずガストはん達が狙とったやろ?パーティー応募したら揉めそうやし?』

 マニーが時空の裂け目から顔だけ出して、気の毒そうに二人を見る。

『ほら、あそこ見てみ?パーティーメンバー募集の紙を見とる冒険者を脅しとるやん?』

『うぉ……!?』

 止まった時間の中、冒険者に脅しをかけているガストの姿があった。

『弱いもんはふさわしゅうない!とか言って脅しとるんやろうね』


 なんで妨害してるんだよ……。


『二人の足を引っ張るメンバーが入らんように、っちゅー気遣いやろね』

『何かいい方法無いのか?俺の案を信じたのがバカだったとか毎日ネチネチ愚痴を聞く事になってるんだよ』


 毎日のようにフォナとフィナに捕まり、今日もパーティーメンバーが来なかったと落ち込みながら愚痴を聞くのが日課になっている。

『選手交代したらええんとちがう?カレンはんとか呼べばええやろ』

『嫌だ!コピーカレン次にあったら殺すとか叫んでたし怖えよ!』

『自業自得やんか……まぁ、ほならこんなんどうや?』


 時が動き出す。

 一週間前までは目を輝かせてパーティーメンバーを待っていたフォナフィナだが今は死んだような顔でテーブルに突っ伏している。

 

「なぁ、フォナ。いいメンバーを紹介してやろうか?」

「……嘘をつけ。お前にそんなコネがある訳がないだろう」

 突っ伏したまま、『貴様に何が解る!』とでも言いたげに『グルルル』と野生動物のように喉をならすフォナ。


「俺は元賢者だ。上級剣士、中級剣士、中級僧侶、中級賢者、よりどりみどりだぜ?」

「……嘘をつけ!お前のせいでバカっぽい姿を見られてるし、一週間も仕事もせずただメンバーを待ってる痛々しいパーティーに誰が入ってくれると言うんだ!」

 痛々しいと思うなら諦めればいいじゃん……なんで痛々しいと解ってて続けてるんだよ

 

「俺も元カレンのパーティーメンバーだ。こう見えて冒険者達には割と人望があるんだぜ?交流も多いしな」

「オルタさんはパーティーメンバー以外には、『違法ポルノ』と呼ばれてるんですよ?交流なんてある訳ないです」

 フィナが首を振り俺を指さしてとんでもない事を言う。


「なんだよ、その『違法ポルノ』って……」

 悪意しか感じない呼び名に俺は戦慄を覚える。

 いや、本当に人をポルノって呼ぶなよ……。


 フォナはテーブルに突っ伏したまま、顔だけをこちらに向けて面倒臭そうに答えた。

「『規制』だ」


「規制ってなんだよ……って寄生かよ!」

 違う!俺は賢者の頃にはカレン達の役に立っていたハズだ!


「考えたのは私だ、上手いだろう?」

 フォナのドヤ顔にイラっとするが、ぐっと耐える。

 

「……臨時一週間のお試しだがもう話を付けてあるんだ。おい、入ってこい」

 二人の前に中級剣士の少女と中級僧侶の少年が現れ、頭を下げた。

「紹介料、四万イエンでいいぞ」


「……オルタ、ちょっと来い」

 フォナが俺を手で招く。

 

「流石、元賢者だな!」

「流石ですねオルタさん!」

 手の平を返す二人から四万イエンを受け取る。

「あと、あいつらは普段他のパーティーに入ってるんだが、他のメンバーも一緒でいいか?」

「勿論だとも!全員まとめて受け入れよう!」

 臨時パーティーの紙を二人にサインさせる。


 臨時の紙をギルド窓口に提出すると、ギルドマスターが後ろから覗き込んだ。

「優秀なのに人と組もうとしないあいつらを口説き落とすとはな」

 ギルドマスターがフンと鼻で笑った。

 フォナとフィナは現れる仲間……それも優秀なメンバーに期待する。


「連れてくるから待ってろ」

『え、本当にいいのか?お前どんな手を使ったんだよ!』

『いいから、後で紹介料十万よこせよ?』


「よお、フォナちゃんとフィナちゃん。これから一週間よろしくな!」


 ガスト達のパーティーだった。

 ギルドマスターが言ってた優秀なあいつらは……フォナとフィナだった。

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