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第二十三話

先週から風邪をひいてしまいました。

コロナではない、と思います

少し更新が鈍るかもしれません(^^;


「表に出ろ。カレン達のパーティーに入れる強さか測ってやる。お前らは俺を弱くなったと言うが、俺に本当に勝てるのか?」

 コピーカレンが言った言葉はこんな風に変換されているのだろうか。

 いつもの俺のキャラと違う荒い口調に、二人の頬が引きつる。

 

「ふうん、いい度胸じゃないか。じゃあ相手して貰おうかな」

 酒場の椅子を蹴るように立ち、フォナとフィナがカレンを睨みつける。

『戦う事になってるじゃないか』

『バカね、戦いには避ける時と避けてはダメな時があるのよ。今の貴方は戦わないといけない時なの』

 まあ任せときなさい、とカレンは自分の胸を軽く叩き、俺を引っ張る。

 

 ずいぶんと長い間、フォナとフィナの愚痴を聞いていたのだろう。

 酒場から外に出ると、あたりは日が落ちて暗くなっていた。

 少し肌寒い風が吹いている。

 

 フォナとフィナが酔いを覚ませるようにゆっくり歩きながら、以前ダースに滅多打ちされた訓練所へと向かう。

 

「謝るなら今のうちだぞ?元上級賢者とは言っても賢者スキルはもうないのだろう?」

 酒が大分抜けたのか、激昂していたフォナもフィナもやや落ち着きを取り戻した。

 

 争いは同じレベルでしか生まれない。こちらを気遣うような表情でフォナが尋ねてくる。

「私達もちょっと悪い酔い方をしていた。絡み方も酷かったかもしれない。そこは謝る」

 そう言っておき、だが……とフォナは続けた。

「それでもやるのか?私達の研鑽を無価値だと切り捨てた事には怒りを感じている。そちらも謝罪すれば今夜の事は無かったことに……」

 模造剣を二本取り、一本をフォナに投げて渡す。

 

「度胸が無いとか、意気地が無いとか、根性が無いとか。そう言い変えられるけどね。結局は中身が無いって事なのよ」


 フォナが模造剣を受け取り、首をかしげる。

「模造杖も無いよりはマシでしょう?使いなさい」

 カレンは続けてフィナに模造杖を投げて渡す。


「武器を渡して、相手が居て、戦おうとしない人をなんていうか知ってる?腑抜けって言うのよ。臓腑(なかみ)が無いあんた達の事よ」

 フォナとフィナから殺気、まではいかなくとも、敵意が叩きつけられる。


「さすが元賢者様だね、口だけはまわるようだ……な!」

 フォナが一歩踏み込み、模造剣でカレンの肩を叩こうとする。

 速度もあり、まともに喰らうと近接職でも痛みで動けなくなりそうな程の鋭い一閃。


 一万人の剣士が居れば、ほとんどが中級剣士となり、中級剣士のまま生涯を終える。

 中級剣士が鍛錬し続けて辿り着ける上級剣士は、百人に一人の才能。

 

 中級剣士と一般人が戦うと、どれだけ一般人が鍛錬しても中級剣士には勝てないように

 上級剣士と中級剣士の間にも大きな隔たりがある。

 剣士一万人の中から選ばれた上位百人の実力者が辿り着く称号が上級剣士なのだ。

 

 一般人以下のステータスの俺がこんな一撃を喰らえば、模造等でも大怪我ではすまないかもしれない。

 そんな鋭い一閃だった。


「ふーん、まだこんなものなのね」


 だが、今の選手(オレ)は【特級剣士、カレン】なのだ。


 一万人の剣士の中にたった一人。中級剣士から上級剣士へ至る中で百人。

 上級剣士から特級剣士へと辿り着く才能は、その百人の中で一人だけ。


 カレンは剣を持たせれば誰よりも輝く。

 天から与えられたと言うに相応しい才能。

 こと剣に関しては天才だった。


 当たる寸前に身を引き躱すと同時に軽く振られる剣は、フォナの頭を軽く叩く。

 フォナがその振るった剣を引き付けて体勢を整えるまでに、頭、肩、腕、手、腰、足と流れるように叩く。

 頭以外の場所はそれなりに音が響いている事からかなり強く打たれているのが解った。

 

「な、なんだと……?」

 呆けたような顔をして、フォナはカレンを見た。

「役立たずに、剣を使った近接戦闘ですら勝てない上級剣士の価値はどのくらいなのかしら?」


「バカな!」

 フォナが先よりもやや強めに次の剣を振るう。

 カレンは軽く躱して先ほどより強めに叩く。


 フォナがさらに強めに次の剣を振るう。

 また軽く躱してさらに強めに叩く。

 

 フォナが振るう剣は一切当たらず、フォナが剣を振るう度に打撲傷が増えていく。

 何度か打ち合った後、フォナが呼吸を荒くして片膝をついた。

 

「姉さん!」

 フィナが魔法の詠唱をはじめた瞬間に、カレンはフィナの目の前に居た。

「フィナに選ばせてあげるわ。痛い方がいい?痛くない方がいいなら詠唱をやめなさい」


 びくりと震えた後、フィナがカレンを睨みながら詠唱を続ける。


 近接職に近づかれた時点で、魔法使いは勝てない。

 一矢報いようと詠唱を続けるフィナに


「詠唱を辞めないと強制的に止める事になるわよ?」

 フィナの詠唱は止まらない。

 顔を顰めながらも

「うん、なかなかの度胸ね」


 カレンが模造剣を打ち付ける。

 フィナが「きゅう」というあざとい声をあげて倒れた。


「何をぼっとしてんの。フィナが詠唱はじめたら守らないとダメでしょ!」

 フォナの頭にも同じように模造剣を打ち付ける。

 

 シアとカレン、フォナとフィナでの二対二の模擬戦であれば、連携の差で互角に戦えても一対一の自力勝負ではカレンには勝てない。

 シアとカレンは仲がいいのに足を引っ張りあうのだ。

 特級剣士とは、そこまでの存在だ。

 

「降参だ。私はまだまだ未熟だった。この程度の力で自惚れていた自分が恥ずかしい」

「姉さん……」

 倒れたフォナの傍でじっと耐えるように震えるフィナ。

「近接職では無いオルタに負けるはずが無いと。自分達よりも上位のパーティーメンバーだったのだから、考えてみれば当然だったな」

 相手してたのはカレンだけどな……。


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