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第二話


「鑑定受けて来なさい。愚者になってたら笑ってあげるわ」

 カレン達に引きずられて教会に連れてこられた俺は、バカにしやがって……と愚痴りながら職業とステータスの鑑定を依頼する。

 辺りは鑑定を受けようとする冒険者達で一杯だった。


「ステータス鑑定ですね、一万イエンです」

「相変わらず高いな。一万イエンあったら酒場でいい酒がたくさん飲めるぞ」

「ならお酒でも飲んだらどうですか?ステータス鑑定は不要でしたら、邪魔になりますのでどいていただけますか?」

 邪魔するな、と言う豊満なシスターに、一万イエンを手渡す。


「こちらが鑑定チケットになります。鑑定の列に並び、順番が来たら司教様へ手渡してください」

 鑑定チケットを受け取り行列に並ぶ。。


 一般的な冒険者が一週間働き、だいたい四万イエンになる。

 一万イエンというのは宿に泊まってお釣りがくるくらいの額である。

 決して安い物ではない。


 なぜステータスに拘る冒険者達が多いのかというと……


「レベルが上がってる!これであの武器が買えるぞ!」

 戦士の風体の男がステータス票を見て喜んでいる。周りにいるパーティーメンバーと思われる人達とハイタッチをして、教会を軽い足取りで出て行く。


 武器とは基本的に買う物である。

 その辺のモンスターを倒せば、剣を落とすというファンタジーは無いのだ。

 中には倒した冒険者から剣を奪い持っているモンスターも居るが、モンスターに剣の手入れができるはずがない。

 戦って刃こぼれしたような武器、それもそのモンスターに倒される強さの冒険者が持っていた武器だ。

 強さはたかが知れている。


 もし、無理をして強い武器を持った弱い冒険者が居たら?それはない。

 レベルと職業で買える武器は決められているのだから。


 なぜ自由に買えないのか。

 

 鉄は何にでも使われる。

 農具にも、馬車にも、当然武器や防具にも。

 

 剣一本で、農民の鍬や鋤に鉄の刃を入れる事ができる。

 鍋や包丁にもなる。

 

 そして鉄は資源であり、採掘量は決まっている。

 そして採掘量を決める権限は領主にある。

 

 この街はレベルにより使用許可武具を絞る事で、冒険者のレベルからどの武器がどの程度必要になるのかを計算して生産計画を立てているのだ。

 

 領主はレベルと職業から武器の購入制限をかける。

 

 冒険者は武器を買おうと武器屋へステータス票を提出する。

 

 武器防具屋は仕入れるため、冒険者のステータス票を工房に提出し、生産された武器だけを仕入れる。

 

 工房は生産計画やステータス票に基づき生産をするように制限をかけられる。

 

 冒険者は欲しい武器に見合うステータスだと証明するため、こまめに教会に鑑定を依頼する。

 

 そして教会から領主へとキャッシュバックが出ていく。


「よくできたシステムだよな」


 そしてついに俺の順番が周って来た。


 司教が呪文を唱えて俺のステータスが更新される。

 

「……おい、待ってくれ。間違いじゃないか?」

「職業やステータスの苦情はあちらの苦情窓口へどうぞ」


「いや、間違いだって。聞いたことないぞ、何だよこの職業【ヤクタターズ】って」

「あちらの苦情窓口へどうぞ。はい、次の方」


 事務的な態度の司教に、シッシと鑑定場から追い払われた。

 

…… ……

 苦情窓口には、座った目の妙齢な女性が座っていた。

 美人だが、目に光が無くブツブツと呟いているため、近寄りたくない雰囲気を出していた。

 

 意を決して、俺はそっと苦情係のお姉さんの前に座る。

 

「ゴヨウケンヲドウゾ」


「職業ヤクタターズって何だよ!」

「ハイ、モウシワケアリマセン」


「上限レベル1って何だよ!」

「ハイ、モウシワケアリマセン」


「レベルも下がってるし」

「ハイ、モウシワケアリマセン」


 そこにはロボットのように繰り返す光の無い目をしたクレーム係のお姉さんがいた。

本当に人間なのか、と胸に手を伸ばすと、一揉みする前にはねのけられる。


「セクハラは衛兵を呼ぶ決まりですが?」

 いきなり目に光を宿し真顔で睨むクレーム係のお姉さんに、俺は土下座する。

 

「わざとじゃないんです、鑑定結果がひどくて……カッとなってつい出来心で」

「衛兵!衛兵をここに!」

「待ってください!」


 追加で1万イエンを差し出すとクレーム係のお姉さんは素早く自分のポケットに入れる。

 一つ咳払いをして……また光の無い目に戻った。

 

「はい、どうぞ続きのクレームを。……ハイ、モウシワケアリマセン」

「……もういいよ、職業について教えてくれ」


「ハイ、モウシワケ……あ、はい職業のお調べですね。1万イエンになります!」

 絶対こいつ俺のクレーム聞いてなかっただろ


「えっと、調べたい職業は何でしょうか?」

「……ほら」

 ステータス票と一緒に一万イエンを渡す。手痛い出費だが、自分の職業が何なのかも知らず戦うのは愚か物のする事だ。

元賢者として、己を知れば……なんか強い、みたいな名言を覚えている。

「【ヤクタターズ】?なんですかコレ」

「だから調べろって言ってるんだよ!」


「探してみたが過去の記録にありませんでした!残念でしたね!」

 一万イエン返せ!と言いたいのをぐっと堪えて俺はにこやかに尋ねる。


「……系統は何になるんだ?近接職か?魔法職か?支援職か?武器は何を使えばいいんだ?」


「……」

 クレーム係が目を逸らす。

 

「魔法も消えてるし、魔力も少ない。賢者スキルも無いから一般人以下だよな、これ」

「一般人以下ですね。冒険者はオススメできませんよ。引退したらスローライフって冒険者ギルド出版の小説が面白いのでオススメしますよ」

 さらりと冒険者を辞めろという苦情係


「俺は元【賢者】なんだが。なんで【ヤクタターズ】になったんだよ」

「……さあ」

「さぁって」


「うちで雇用している賢者が居ますが、聞いてみましょうか?」

「辞めろ!先月俺が先輩風吹かせて虐めたばかりだから辞めろ、辞めてくれ!」


『教会で人の相談を聞くだけの賢者か。賢者とは呼べないね。そんな事をして知の深遠まで届くのかね?フフフ』


 ああ、俺の先月のセリフを撤回したい……。

 新任教会賢者なら怒る事はないだろうと思って煽っただけなんだ。


「ヤクタターズの固有スキルについて教えてくれますかね」

 そして俺はステータス票のスキル欄を指さした。


 賢者スキルは軒並み消えており、唯一ポツンと残った【ヤクタターズ】の固有スキル。


「過去の記録にありませんでしたから、解りませんよ」

 そういい、苦情係は鑑定票を眺める。


『選手交代』……『交代します』


「交代するのでは?」

「それ読んだだけだよな?誰を誰と交代するんだ?メンバーの位置の入れ替えか?」

「それは別スキルですね」


 そう言ってお姉さんが他のスキルを指す。

『メンバー位置入れ替え』……『パーティーメンバーの指定した人と位置を入れ替えます』


「いいなこれ。パーティーメンバーと大衆浴場に行って、女性メンバーと入れ替えたら『すまない、スキルが発動した!』とか言ってごまかせないだろうか」

「それ、掴まったあげく後でその入れ替えた女性メンバーにぶっ殺されますよ?」


 蔑んだ目は辞めてくれませんかね


「ドッペルゲンガーが主人公と交代して成り代わり魂が消滅するという小説がここにありますが読みます?」

「いらない」

 使わない事にしよう……。


 カレンにステータス票を奪われる前の教会での出来事であった。

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