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第十八話

「私はフォナ、上級剣士だ。こっちは妹のフィナ、上級魔法使いだ」

 そうフォナが言うと、フィナはペコリと頭を下げる。


「上級魔法使いに上級剣士か。よしお前らの実力を見てやろう。俺はこのパーティーでリーダーをやっているダースだ。よろしくな」

 そう言って上級槍戦士、ダースはフォナとフィナに来いと合図を出す。


 実力を見る、と言っていたから冒険者ギルド裏の鍛錬場だろう。

 

「面白そうだし見に行こうぜ」

 俺が言うと、カレンはジト目で俺を見て言った。

「……あの美人姉妹が見たいだけじゃないの?」


 それもある。

「エルフなんて見るの初めてだからさ。あの気品、あの整った顔立ち。エルフなんて始めてみたし気になるのは当然だろ」


 テンション高くなる俺の身体を杖で打ち付ける。


「あんな小娘よりももっと美人で高貴なエルフを毎日見ておるじゃろう?」


「はあ?エルフなんて見た事ないぞ?どこに居るんだよ……って痛えよ!」

 さっきよりも強めに俺を杖で打ち付け、シアは唸った。

 何を怒ってるのかさっぱり解らない俺に、シアは諦めたように溜息をついた。

 シアが水色の髪の毛を横からすっと持ち上げ耳を見せる。

 

「あぁ……」

 シアがふふん、と嘲笑う。

 

「合法さん……いや、シアは美人って言うか子供枠じゃん」

「何を言う!手前味噌じゃがエルフは体内保有魔力によって姿の見た目の若さが決まるのじゃぞ?」

 自分の方が年上じゃ、と胸をはるシア。

「保有魔力が高すぎて、ワシの方が若々しいが、魔力の感じじゃとワシのが大人じゃぞ?」


 自分の魔力の高さを自画自賛するシアの水色の頭を撫でる。

「そうか、良かったな。シアは美人エルフだもんな。気付かなくて悪かったよ」

 この合法ロリババアーーーシアはもうこれ以上成長しないのだと考えると、可哀想に思えてきた。

 

「まぁ、暇じゃし行っても良かろう。カレンもどうせ暇じゃろう?」

「そうね。暇つぶしに見てみましょうか」


 ダースとフォナが武器を取り構えていた。

 模造槍と模造剣。

 当たれば痛いが、死ぬような事はない。

 

「よし、どこからでもかかってこい」

「では行くぞ」

 上からかかってこいと言うダースに挑戦者のように挑むフォナ。


 基本的に槍は強い武器だ。

 当たり前だが槍は明らかに刀剣よりも間合いが長い。

 間合いの長さはそのまま強さに繋がる。

 

 すっぽ抜けないようにするための柄頭(ポンメル)、握るための握り(グリップ)、剣身まで滑らないための(ガード)剣身(ブレイド)

 という構造を持ち、金属量が多くなる剣と比べると先端に槍先以外は軽い素材で作っても問題がない槍とは構造的にも長く作れるのだ。


 横に回り込めば剣の方が有利に思えるが、十文字の槍を回り込むためには大きな動作で回り込む必要がある。

 そして武器の使用特性の差もある。

 

 槍は突きに特化している。

 武器を持った時のもっとも速く隙の無い動作は突きである。

 

 重量のある棒を持ち、上から下。もしくは横へと振ってみて欲しい。

 いったん後ろへと振りかぶり力を貯めてから振る事になるはずだ。

 次にその棒を持って突きを試してみて欲しい。突き、引き戻す動きは振る時と比べて一瞬で終わるはずだ。

 

 腕の動きだけで言うとラリアットのような動作をする切払いとジャブを打つような動作をする突きで考えて貰うと解りやすい。


 ラリアットの方が威力があっても、いざ戦おうとする時はジャブを打つはずだ。

 ジャブが刃を持ち、一発でも当たれば致命傷になるのであれば、ラリアットの動作をする必要はない。

 剣で突く事もできるが、槍は引き抜く際に抜けやすいように逆側にも刃がつく等の工夫がされている。


 戦いは自分の武器の攻撃が届き、相手の武器の攻撃が届かない位置から攻撃し続ければ勝てる。

 近寄り、素早く剣を振るい、相手を斬る必要がある剣に対して、槍はバックステップをしながら間合いを取り、突きながら牽制すればいい。


 戦場で斧や剣、槌を使う者もいる。

 だが戦場で兵が持つのは圧倒的に槍が多い。

 

 剣だと届かない騎兵への対応という面もあるが対人戦で有利に持ち込める事が多いのだ。


 モンスター討伐に於いては槍で倒しきれない場合もあり一概に剣を否定する訳ではないが、対人戦に限って言えば槍の方が有利なのは間違いない。


 そんな武器の差がある不利な状況下で、フォナは

「私の勝ちのようだな、実力は解って貰えただろうか」


 踏み込み槍の間合いに入り

 槍の突きを必要最低限の動作で躱し、さらに一歩踏み込み

 ダースが距離を取ろうと後方に飛ぶより速く、フォナは剣を振りぬき胴を叩いた。


「へえ……あの子なかなかやるじゃない」

 カレンの御眼鏡に適ったようだ。

 

「待て。もう一度だ」

 数度戦い、フォナが勝ち続ける。

「……もう一度だ」


 そして数度目の立ち合いの際に、ダースの一撃を喰らいフォナが倒れる。

「あの子わざと当たったわね」

「勝つまで辞めなそうだから仕方ないだろうな」


 だが連敗をプライドを許せなかったのだろうか。

 ダースは倒れたフォナに対して何度も何度も槍を打ち付ける。


「あいつ……!」

「おいカレン……人のパーティーだ。揉めるのは良くねえだろ」


 模造槍とは言え、あたるとそれなりに痛い。

 倒れたフォナの顔や身体を十数回打ち付け、ダースは動きを止めた。

 

「俺の勝ちのようだな。手合わせだと俺は手を抜いてたのに、お前が強く剣を振るからつい本気になっちまったよ。悪かったな」

「いや、気にしていない。さすが上級槍騎士だな、槍の威力が違う」

「そうだろう?お前もまぁまぁ強かったぞ。合格だ」


 そして次にフィナの方へと目を向けた。

「お前は、魔法使いか。なら手合わせっていう訳にはいかねえな。あの的に打って見ろ」

 そしてフィナが攻撃魔法を唱える。火、水、風、土。いくつかの属性の初級魔法だ。

 

「ふむ、あのフィナとかいう魔法使いはなかなかいいのう。詠唱速度も速いし、属性も多い。魔力もまだ余裕がありそうじゃな」


 そしてダースは満足したかのように頷き、

「よし、手合わせするぞ。かかってこい」

 的への威力を見て、あれなら大丈夫だと思ったのかダースはフィナと手合わせをすると言い始める。


「私は魔法使いですよ。後衛ですし魔法が当たると怪我をしてしまう事になります」

「上級魔法使いの威力はどういうものかと思っていたが、あの威力なら当たっても大丈夫だ。さあやるぞ」


 あの威力なのは初級魔法だからだ。

 上級魔法使いが強い魔法を使えば下手すれば命に関わる。

 

 そしてダースが構え、フィナが困った顔をして狼狽えていた所で

 俺の制止を振り切ってカレンが飛び出した。


「楽しそうな事をしているじゃない。ダースとか言ったわね、私とも戦ってみる?」

 少し引きつった笑みで腕を組み、カレンがダースに向けて言った。

 

「あん?特級剣士サマじゃねえか。冗談言うな、こっちは上級だぞ、怪我をしちまうぜ」

「お主こそ、冗談じゃろう?後衛と戦うなど正気か?やるなら殺し合い前提の決闘くらい申し込んだらどうじゃ?」

 

 カレンと同じく魔法使い、同じジョブを軽く見られた事でシアも怒っていた。

 

「特級魔法使いサマもか。うちのパーティーの話に口を出さないでくれませんかねぇ?」


 そして顔を腫らしたフォナの痛々しそうな顔を見て、カレンがダースに近づく。

 

「おいダース。俺は上級賢者だけどな」

「なんだ?文句でもあるのか?同じ上級のお前なら相手してやってもいいぜ」

「やらねえよ、俺になんの得があるんだよ」


 そして俺は魔法使いの中級魔法を的に向かって打ち込む。的が一瞬にして溶解した。

 

「俺が使える中級の火魔法だ。フィナさんは上級魔法使いだから当然使えるし同じ魔法を使ってもこれより高威力だぜ?あともう数段階上のも使えるんじゃないか?」


 そして溶解した的を見てダースは、少しビビったようだった。


 俺が放ったのは十秒くらい集中が必要だ。

 会話をしながら頭の中で詠唱していた。一瞬であれを使えると勘違いしてくれたようだ。


 上級魔法使いなら数秒で発動できるんだろうが、俺には無理だからな。

 

 上級近接職と試合形式なら近づかれて一瞬でサンドバックだ。

 カレンやシアは言わずもがな、ダース相手でも俺は完敗できる自信がある。


「これ、お前も使えるのか?」

「はい、使えますけど……」

 そしてフィナの返事に顔を引きつらせ、ダースは、

「……解った、手合わせはいい。合格だ」

 そういい、立ち去っていった。

第一話、第二話を修正。

誤字脱字を潰し会話主と会話の流れを若干変更。

勢いだけだったので直していってますが……多分追加部分にまた誤字があるんだろうなと。

駄文ばかりでスミマセン……。

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