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第十七話

 上級剣士と上級魔法使いでも人気はある。

 

 どこのパーティーでも上級ジョブはエース級だ。

 ほとんどのパーティーには歓迎されるだろう。

 

 それが本当にただの上級であれば、だが。


「私のジョブがカレンみたいに特級剣士だったらなぁ」

「私のジョブがシアちゃんみたいに特級魔法使いだったら良かったんですが」


 二人がカレンとシアに拘るのは自分が目指した職業の理想そのものだから。

 

 確かにそういう面もあるが、以前彼女達のパーティーで起きた問題を助けてくれた事が大きいと思う。

 

 一度、彼女達は他のパーティーに加入した事があるのだ。

 

 

『C級パーティー、メンバー募集

 上級以上の近接戦闘職、もしくは上級以上の魔法使い

 現メンバー構成

 リーダー:上級槍戦士

 メンバー:中級剣士

 メンバー:中級聖職者

 

 採用は実力を見てから考慮します。


 俺達はその募集を見て、カレン達と『誰が応募するんだ』と笑いながら話をしていた。


 このメンバーであれば中級の依頼に絞れば余裕をもってこなせる。

 

 中級の依頼を中級剣士と中級支援職で相手にし、万が一の事故が起きないように上級槍戦士が後ろに控えて貰う。

 中級の依頼の報酬でも保険の意味合いで上級ジョブに控えていてもらう事は可能だろう。

 

 それだけなら別におかしなパーティーではないし、メンバーを増やす必要が無い。

 その場合のリーダーは中級剣士か中級聖職者が行うはずだし、メンバーを増やすにしても中級以上とするはずだ。


 募集をかけているのが上級以上の近接戦闘職か魔法使い。

 そしてリーダーが上級槍戦士だ。

 

 上級相当がリーダーの槍使いでアタッカー。

 支援職がリーダーにバフと回復をかけ、中級の剣士が支援職を守る。

 そういうワンマンパーティーの運用だろうと言うのがメンバー構成を見ればありありと浮かんだ。

 

 回復薬・能力向上薬がわりの聖職者と、その薬を守る荷物持ち、そして強い槍使いである自分。


 彼らは上級の依頼をこなしていくのだろう。

 だが複数人の上級相当ジョブであたる事を前提としたような難しい依頼もあるのだ。


 それを引いた時、彼はきっと行き詰まる。

 行き詰った時、彼はこう思うのだろう。


 ああ、もう一人俺が欲しい……。

 もう一人自分くらいの人材が欲しい。

 俺と同じくらいの能力を持った人が欲しい、と。

 

 回復薬と回復薬の護衛……支援職と中級剣士は居るから、支援職は要らない。

 中級近接職の実力を見ても俺の仕事は任せられない。

 中級魔法使いは使った事がないが、中級剣士と中級聖職者を見ているから解る

 中級魔法使いだと通用しないだろう。

 

 上級以上の近接戦闘職、もしくは上級以上の魔法使いを募集しよう。

 上級と言っても、上級で群れているようなパーティーの上級ジョブと一緒にされては困る。

 俺は中級パーティーだけで上級依頼に挑んできたベテランだ。

 だから上級以上でも俺より弱いはずだ。

 だから採用は実力を見て決めよう。

 

 そういう考えが感じ取れる。

 ある意味このパーティーメンバー募集で地雷臭を出せるのは才能だと思う。

 中級ジョブ以上を募集しておいて、上級以外は断るという事もできるのに。

 

 宿屋の近所の商店は、

『応募年齢制限:〇〇歳未満』

 という張り紙を常時貼ってある。


「〇〇歳ですがいけますか?」

「すみません、実は若い人しか採ってないんです。

 こうすると長く働ける印象が出るので若い人が来やすいんですよ」


 じゃあ応募年齢制限を下げろよ……と思っていたが、このメンバー募集を見ると考えが変わりそうだった。

 

 こんな面倒臭いパーティーに面接し実力を見せて採用して貰おうと考える上級ジョブ?


 上級ジョブなら普通にどこかのまともなパーティーに混ざればいい。

 上級以上ならどこでも歓迎してくれるだろう。

 

「上級賢者で失敗しているから……次はうちも面接するわよ?」

「おいおい、ツンデレブームはもう終わってるらしいぜ?今はチョロインがやや流行りらしい」

「な、なに……そ、そのチョロイン……て?」

 俺をディスるカレンを無視して、興味を持ってそうなシノブに説明する。


「冒険者ギルドのベストセラー小説、チョロイン小説だ。読んでみるか?」

「読むのはいい……よ。概説よ……ろ?」

「何もしていないのに、いきなり好感度マックスみたいなヒロインだ」

「ああ、私知っていますわ。洗脳とかいう奴ですわね?」

 エレノアが話題に混じってくる。

 

「違う!いや洗脳……なのか?そういえばヒロインの心の動きが洗脳のそれに似ている」


 俺達のやり取りにカレンが呆れたようなジト目を向ける。

「でもそれフィクションじゃないの」


「カレンに賢者からのアドバイスだ。

『でもそれフィクションじゃん』

『でもそれ嘘じゃん』

『でもそれ絵じゃん』

この三つは争いになるぞ?」


「フィクションと嘘は解るけど、絵って何よ……」


 そして冷やかしでそのパーティーの様子を眺めていると


「すまない、パーティーメンバーに入れてもらえないだろうか。上級魔法使いと上級剣士なのだが」

 やってきたのは顔がそっくりなエルフの二人の美女。


 フォナとフィナだった。

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