第十五話
酒場が開くまで時間があるな、と街をブラブラしていると、見知った冒険者に出くわした。
悪い出会い……リルイと苦情係の事だが、その後にいい出会いというのはあるものだ。
「なんだオルタじゃないか、奇遇だな」
剣士風の装いのエルフが俺に手を挙げて寄ってくる。
「オルタさんじゃないですか、奇遇ですね」
魔法使いの装いのエルフが後を付いてくる。
エルフ剣士のフォナとエルフ魔法使いのフィナ。
エルフの森から出てきた双子の敏腕冒険者だ。
通常のフォナの実力はカレンより大分落ちる
通常のフィナの実力はシアより大分落ちる。
それにシノブとエレノア、俺を加えたパーティーでAなのに対して、こいつらは二人でBランクパーティーに認定されている理由は、連携だ。
カレンとシア。フォナとフィナの二人同士で戦わせれば、彼女達は力の無さを補ってさらに余り得るくらいの息があった連携をする。
もっともカレンはひたすら突っ込み剣を振るい、シアは何も考えずに高威力魔法を連発するソロ思考だから連携以前の問題なのだが。
ゴリ押しでカレン達が有利という評価で認定されたパーティーランクだが、実は彼女達には封印された変身が残されている。
ソロ性能にしても、彼女達のジョブ特性を使えば、ある条件下でフォナはカレンよりも強くなれる。
ある条件下でフィナはシアよりも強くなれる。
冒険者ギルドが誇る最大火力が実はこの二人なのである。
封印されているだけあって滅多に使おうとしない。いや、使っている所を見た事がないが。
「最近あってないんだが、カレンは最近何をしているんだ?冒険者ギルドで見ないんだが」
「最近あってないんですけど、シアちゃんは最近どうしてるんですか?」
フォナはカレンを、フィナはシアを慕っている。
百合的な意味で。
男女隔たりなく面倒見が良いうちのパーティーは異性は勿論、同性からの人気も高いのだった。
「そうか?あいつらとは昨日も会ったぞ?むしろお前らを最近見かけなかったんだが」
「当然だ。私達は二ヵ月前から遠方のダンジョン攻略に行ってたからな」
「お前らが外に出てたのかよ……」
そして二人は左右から腕に抱き着くように捕まえてくる。
「聞いたぞ、何だかギルドを騙して大金を稼いだそうじゃないか。私達に奢ってくれ」
「ダンジョン出たばかりでお金が無いのにギルドは報酬を一週間先の清算日まで払えないって言うんです」
まぁいいけどな。
この感触で一食奢るくらいは惜しくない。
むしろウエルカムだ。毎日でも構わない
酒場に入り、四千イエンを返す。
「あんまりホステスにはまっちゃダメだよ?」
俺の腕に左右から抱き着く二人を傍目に見ながら、小声で俺に耳打ちし四千イエンを稼いで店主が奥へと戻っていく。
ホステスに貢ぎすぎて金が無いと言ったのを覚えていたらしい。
「聞いたが、カレン達のパーティーを追い出されたのか?」
「ああ、ちょっと珍しい職業になってしまってな。まあ、悪くない職業だと最近思い始めた」
「基本ジョブは何になるんだ?」
「……解らん」
「そうか……まぁ、ジョブは無理に聞き出すような物ではないよな」
「そうですよ、姉さん。そっとしておきましょう。ジョブを聞くのは失礼です」
カレンとフォナが剣士、シアとフィナが魔法使い、シノブが武道家、エレノアが聖職者、俺が元だが賢者だった。
通常のジョブには、剣士や魔法使い、弓使いや武道家、等の基本的な戦い方を表す物がある。
これらは基本ジョブと呼ばれる。
冒険をする際には基本ジョブでメンバーを募集する。それで役割を確認しあうのだ。
それに加えて、詳細ジョブという物がある。
通常、詳細ジョブはその実力が表示される。
カレンは特級剣士、シアが特級魔法使い、シノブが拳闘武道家、エレノアが特級聖職者、俺が、今は変わってしまったが上級賢者だった。
特級は一万人に一人の才能、上級は百人に一人の才能、ほとんどが中級になる。
その中において、詳細ジョブに特性がつく者がたまにいる。
特定装備や特定条件下で能力に補正がかかる特性ジョブというものがあるのだ。
水魔法使いは水魔法を使っている時に大幅な補正がかかる。
斧戦士は斧の扱いだけで言うと大幅な補正がかかる。
その条件下では特級と互角かそれ以上のパフォーマンスを出せる。
シノブの拳闘武道家がそれにあたる。
拳闘、拳で殴り合う時だけ大幅な補正がかかるというものだ。
そのためセクハラしてもシノブは拳を握らず、平手か蹴りで対応してくる。
彼女達には特定装備下で能力が発揮できるのだが、それを装備しようとしないため中級から上級程度の力しか持っていない。
「なんだ?オルタじゃねえか、なんだ綺麗どころを連れて」
先日マニーが石と流木を売りつけた冒険者、ガストが仕事を終えたのか、汗をぬぐいながら酒場に入って来た。
フォナとフィナの隣に座り……
「な、貴様!あの時の最低な男じゃないか!」
「ガストさんでしたっけ。あっちにも席が空いてるのになんでこっちに座るんですか」
二人からどこかにいけと邪険にされる。
「おい、オルタ。俺なにかコイツラに悪い事したか?」
「お前が以前こいつらの詳細ジョブをバカにしたからだよ」
「ジョブをバカに?人の持っている職業をバカにするとかそんな失礼な真似をした覚えはないぞ?」
ジョブをバカにする、というのは逆鱗だ。
俺は温厚なので教会付き賢者のリルイがジョブをバカにしたのを許しはしたが、もし気の荒い冒険者に同じような真似をしたら殺されてもおかしくはない。
「お前がバカにしたつもりがなくても、こいつらにとってはそうなんだろうよ」
そしてガストがフォナとフィナの顔をじっと見る。そして合点がいったのか、手をポンと叩き
「ああ!思い出した。【ビキニアーマー剣士】のフォナちゃんと【マイクロビキニ魔法使い】のフィナちゃんじゃないか」
二人の顔が笑顔から真顔に変わり、固まる。
そしてじっとガストを睨みつけた。
「ビキニアーマーとマイクロビキニを見せてくれよ」
二人の空気を読まずガストはガハハと笑った。
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