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第十話

「待てって、わっちは何を待てばええん?」

「……よく考えろ。一角うさぎの角が手に入らなければ薬師の生産が止まる」

「せやな」

「それはこの街のポーションの供給が断たれる事になる」

「ん?……とりあえず続けてもろてええか?」

「ポーションの値段が高騰すると問題になるぞ?領主も動くだろう」


「ふうん、脅すような事を言うんやね?一応結論まで聞こか?」

 半目でマニーがギルドマスターを睨む。

 

「テレポートを使って他所から購入してギルドに渡せ。それを薬師達に渡せば生産できてポーションの値段が安定するだろう」

「せやな、それでいくらで買うつもりやの?」


「買い取り価格は百イエンになっているのは知っているだろう!薬師達への卸値が二百イエンだ」

 そう言うと、薬師達が同調しかけたのを横目でみつつ、マニーは溜息を付いた。


「話にならんな。あんまり寝言いうとったらわっちも怒るで?」

「どこが話にならないというんだ!」


「一角うさぎの角が手に入らなければ薬師の生産が止まる。これは正しいで」

 マニーがギルドマスターの話を復唱する。

「ポーションの供給が断たれる事になる?それはどうしてやの?」

「バカか!お前が一角うさぎの巣を潰したからだ!」

「ちゃうやろ。一角うさぎの討伐依頼を組んだのは誰なんや?」

 ギルドマスターは少し黙って、カレンを睨みつける。

「あんたの責任やで?あんたのミスで一角うさぎの角を手に入れられなくなってしもうたんやで?」


「そ、それより我々の一角うさぎの角はどうするんだね?」

「薬師のみんなはギルドから二百イエンで買えばええやろ?それはギルドが決めた価格なんやからね」

「でも一角うさぎの角が無いじゃないか!」

 そういう薬師にマニーは首を振る。

「一緒に考えるんがおかしいやろ」


 ・ギルドは角を百イエンで買い取る。

  その価格は冒険者が納品する価格で冒険者とギルド間で決められている。

  

 ・ギルドは薬師達に二百イエンで売る。

  その価格は冒険者ギルドと薬師達の間で決められている。


「これは別々の契約やろ?わっちは冒険者ギルドと関係の無い一般人やで。冒険者から仕入れられんかった言うてわっちに売れと言うのはおかしいやろ?」


「……だが、お前がテレポートで集めなければ一角うさぎの角は手に入らないだろう」

「売ったるからなんぼで買うかって聞いとるんやで?」

「二百イエンで売る決まりがあるからそれ以上は出せんぞ?」


 ギルドマスターが渋い顔をして言うが、マニーは机を叩き注意を引く。

「ちゃうやろ?もう一度聞くで?誰の責任で誰が損をするべきやの?」

「だ、だが」

「わっちは偶然テレポートを持ってるだけのギルドとは関係の無い一般人やで。角が手に入らないと困るから協力して欲しいと一般人にお願いしとるんやろ?」

 間違ってるか?と周りに聞くが間違ってると言う人は居ない。

 全員がマニーの話に飲まれていた。

「で、協力するから、いくら出すかって聞いてるだけやで?」


 値段を決めてギルドが責任を取って薬師達に角を渡すだけ。単純な話だとマニーは繰り返す。

 それが唯一の正解であるように。


「額が見合わないと思ったなら断ればええやろ。わっちも強引に売りつけるつもりはあらへんよ?」

「もういい、解った。貴様の言い値で買えばいいんだろう!」

「立場を考えや?貴方の言い値で売ってください、冒険者ギルドの失態をカバーさせてください、やろ?」

『もういいだろ、ギルドマスターが怒って切りかかってきそうだぞ』

『そうか?ほなら煽るのやめとこか』


「ここから最寄りの角が手に入る街までの移動は馬車で五日くらいやね。冒険者は三人くらいで向かわせるよなぁ?」

「……そうだな」

「そうとして冒険者への支払いは一日一人二万イエンくらいやろ?冒険者派遣で三十万イエン。馬車を五日借りて五十万イエン。町の売値が三百イエンで馬車に百個乗せたとして、八十三万イエンやね。

一本あたり八千三百イエンやから、計算しやすいようにまけて、五千イエンでどや?」

「……解った。それでいい」

「で、何個必要なんや?」

「ニ十本で頼む」

 できる限りギルドの損失を少なくしようという魂胆だろう。少な目の本数を伝えるギルドマスターに薬師達が文句を言う。

「もし足りなくなったらどうするつもりだ!」

「し、しかし……一月程で巣は復活しますし」

「エエよ、ニ十本やね。もし追加でってなったら、その時はまた価格交渉するけどエエか?」

 その一言を聞いて

 どうせ一つのギルドで持っている角なんて百もあれば多い方だ、と思い直した。


「買えるだけ買ってくれ。薬師の皆さんが困らないようにしたい」

「わっちが買ってきたけどお金無くなった、は無しやで?書面にしてもらってもエエか?契約魔法付きで頼むで?」

「……解った」


 書面にして契約魔法をかけた所で、マニーは微笑んだ。

「この街からもっとも近い一角ウサギの角を扱っているギルドで買えるだけ仕入れる、か。細かいなぁ、在庫少ないかもしれんで。まあその細かさは好印象や!まかしとき!」


 そして、十分後にマニーが戻って来た時、

「わっちが持ってた五十八万七千二百イエンで買えるだけ買うてきたで!これ領収書な」

『一角うさぎの角 300イエン×1957本 587,100イエン』

「全部で9,785,000イエンやで!いっぱい買えたで!」


ギルドマスターは領収書を見て……押されたギルドの印が正規の物である事を確認して


その場に倒れこんだ。


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