第84話 難易度高めのダンジョンのボスは?
「えっと、ファイアードラゴン?」
「うん、ステータス見る?」
ファイアードラゴン
種別:竜
HP:1451
MP:907
物理攻撃力:1150
物理防御力:2109
魔法攻撃力:2201
魔法防御力:2110
特殊スキル:炎耐性 炎闘気 炎ブレス
限界突破:完了
つ、つよい。覚醒したばかりとは言え聖獣のコタロウよりもステータスが高いじゃないか。まあ、ドラゴンと言えばファンタジー世界では強敵として定番の種族だ。強い個体になれ
ばラスボスクラスの戦闘力を誇る。さしずめこのファイアードラゴンは中ボスと言ったところだろうか。しっかり限界突破も完了している。
この限界突破について少し説明をする。そもそもこの世界の中では、各ステータスの上限は999と設定されている。ところが、どんな世界にも例外はいるものでこの上限を超える事を限界突破と言い、限界を超えた者は限界突破者と呼ばれるのだ。この限界突破をするには様々な条件があるのだが、このファイアードラゴンは長年生き続けているウチに自然とその条件を満たしたのだろう。
「まあ、コジロウにかかれば楽勝だけどね。なあコジロウ?」
『にゃあ、ボクにかかれば瞬殺してあげるニャア』
オレとコジロウは顔を合わせてほくそ笑む。お互い悪い顔をしている。コジロウのヤツどこでこんな表情を覚えたんだろうか?
「コジロウ君は手を出したらダメ」
オレがくだらない事を考えているとアイが口を挟む。まあ、確かにコジロウが瞬殺しちゃうと冒険の醍醐味は大分薄れるからその気持ちは分かるんだけど・・・
「でも、コジロウ抜きのオレ達だけじゃあかなり荷が重い相手だよ」
「大丈夫、ウチがしっかりサポートするけん」
アイは自信満々に言う。まあ、いざとなればコジロウもいるし最悪の事にはならないか。それにオレ達だけで戦うメリットもある。そう限界突破だ。これの発生条件であるが、まず一つ目はステータスが一つでも999に達している事。コタロウもオレも999に達しているステータスがある。ちなみに今のステータスだが、こうだ。
シュウ
勇者Lv19
種別:人族
HP :168
MP :239
物理攻撃力 :115
物理防御力 :891
魔法攻撃力 :951
魔法防御力 :989
魔法練度 :529
魔法創造力 :999*
使用可能な魔法:初級火魔法、初級風魔法、初級水魔法
使用可能なスキル:料理人
管理者クラス:ゴールド
使役可能な精霊:火の精霊
限界突破:未完了
コタロウ
種別:白虎雷の賜物保持者の卵
HP:999*
MP:0
物理攻撃力 :999*
物理防御力 :999*
魔法攻撃力 :0
魔法防御力 :971
特殊スキル:闘気 剛力 隠密 神速 感知
限界突破:未完了
もちろん、コタロウの方がオレよりも全体的にステータスが高いため限界突破の条件は揃っている。そして2つ目の条件だが、その状態での「戦闘を継続して行う事」だ。つまりステータスが高い状態で常に戦い続けていればそのうち限界突破するということだ。このダンジョンのボスであるファイアードラゴンが恐らくそのパターンであろう。ドラゴンは長命種だから時間は無限にある。最後の洞窟にいた9尾の銀狐も長く生きていた方だが、ドラゴンはその数倍かあるいはもっと長く生きているのだろうな。
ところが、オレ達にはそんな時間はない。もっとてっとり早く限界突破しなければならない。そしてそのためには、密度の高い戦闘を行う必要があるのだ。
今回のケースはまさにそれで、明らかに実力が上の相手と戦ってその上で勝てば限界突破する確率は跳ね上がる。アイの提案は、実益も兼ねてのものだったのだ。
話は少し逸れるが、子供の頃からロールプレイングゲームをしていた人なら素朴な疑問を持った事はないだろうか?
なぜ、戦闘に勝たなければ経験値は貰えないのだろう?と
例えば経験値の高い怪物にある程度のダメージを喰らわせた後に逃げられる。すると、それまでの苦労は全く報われることなく経験値の獲得は0だ。
現実世界では負けても学ぶことは沢山あると教わる。ところがファンタジー世界では、負けても得るものは何もない、勝たなければ何も得られないのだ。この世界に転移してコタロウと一緒に激しい戦闘を繰り返していたオレだったが、止めはいつもコタロウに任せていたため経験値が貰えずレベルが全然上がっていない。
今まではそれでヨシとしていたが、今後はオレもレベルアップを図らなくてはならないのかなあ・・・
「よし、コタロウどっちがファイアードラゴンを仕留めるか勝負だぞ」
『にゃ、望むところだニャ』
そうは言ったものの、今のオレの戦闘力ではコタロウを出し抜くどころか足手まといになりかねない。さてどうしたものだろうかなあ。
『おいシュウ、今大丈夫か?』
『あ、ハチベエさんお久しぶりです。大丈夫ですよ』
『いや、カクがな。ヒノモト刀を知り合いの刀鍛冶に頼みに行くってんでお前も一緒にどうかって言っているんだ』
あ、そう言えば前にそんな事約束していたなあ。どうしよう、今取り込み中って断るか。
するとアイがオレに向かって行けと合図を送ってきた。え?いいの?ダンジョン行くのにまだ色々と話し合いがあるのでは?そう思うオレであったが、言われるままにハチベエさんに伝える。新婚早々であるが、すでにオレは尻に敷かれっぱなしなのだ。
『あ、大丈夫です。じゃあ一緒に行っていいですか?』
『おう、お前今どこにいるんだ?迎えに行くぞ』
そこでオレは重大な事に気付いた。オレ結婚して引っ越しまでしているのに、今までお世話になった人に何にも報告してないじゃないか。コレ現世ではありえない事だぞ。
『あ、あの話せば長くなるのですが、オレ最近、結婚して上町に引っ越したんですよ』
恐る恐るハチベエさんに報告すると
『へえ、それはおめでてえな。カクとスケにも言っておくよ、後で詳しく教えてくれよ。それよりも、待ち合わせなんだけど・・・』
ええええええええ?すごいあっさりしてるな。なんなら多少流された感じすらするんだけど。結婚や引っ越しって人生の一大事なんじゃないの?それともコレがこの世界では当たり前のリアクションなの?またヒノモト国民がまた分からなくなった。まあ、あんまし騒がないで貰えるのはオレやアイとしてはありがたいんだけど。
色々と思うことはあったが、オレはハチベエさんと待ち合わせ場所を決めて家を後にしたのであった。




