第74話 恋の行方
トキさんにお礼を言って別れたオレは、往来を歩きながらもう一度さっきの話を思い起こしてみる。何度考えてみても完璧だ。よし、この作戦でいくぞ。
「あのー。キビ、いやあのキミの好きなところに連れて行ってください」
「え?」
オレは何度も頭の中でシミュレーションを繰り返した言葉を口にするが、緊張して噛んでしまった。まただ、肝心なところでいっつも同じ失敗を繰り返すなあ。
オレは、宇宙船っぽい部屋の中でちゃぶ台を挟んでアイにデートを申し込んでいた。
「ウチの好きな場所に行きたかと?よかよ」
急に現れたオレのこれまた急な申し出に戸惑ったアイであったが、すぐに屈託のない笑顔を浮かべる。本当に天使のような笑顔だ。まさか、こんな美少女にオレがデートを申し込む日がくるとはなあ。だが、もう後には引けない。
「じゃあ、久しぶりに外にでるけん。ちょっと着替えるね」
「え?じゃあ、オレどっか行ってるよ」
「うん?大丈夫やけん」
アイはスマホみたいな機械を片手で操作する。途端に、アイの服装がパッと変わった。
白い生地に花柄がプリントされているふわっとしたワンピースだ。この前のOL風の恰好も似合っていたが、これも良く似合っている。
「??」
「ああ、これはね。小型映写機に自分の好きな服を投影させているだけなんよ」
不思議そうな顔をするオレに説明をしてくれる。なるほど、電脳界はオレが思っている以上にハイテクのようだな。ワンピースの映像を身に纏っているって事なんだが、全く分からないくらいとても自然で違和感は全くない。
「よおし、久しぶりに外に出るよー」
すると部屋の真ん中にサークル上の光が発生した。アイに促されるままその中に入る。
ウイイイイイン
「うん?」
気が付くとオレは電脳界にアイと立っていた。
「すげえ」
一言で言うと、そこはまさにSFの世界だった。
チューブ状の道路?なのか通路なのか分からないが、そこに見たこともないマシンが縦横無尽に飛び交っている。恐らくアレがこの世界の交通手段なのだろう。周りには超高層ビルが立ち並んでいるが、元いた世界のタワーマンションなんか目じゃないくらいの高さだ。
アイは、キョロキョロしているオレに手招きをする。そこには、○グウェイそっくりのマシンがあった。
「これに乗って移動するんよ」
そうしてオレとアイは、それぞれそのマシンに乗って移動を開始した。
うん?オレが思い描いていたデートとはまるで異なるのだが、果たしてコレでいいのか?
そんなオレの思惑とはよそにアイは意外と楽しそうだ。
「久しぶりに外に出たけど、やっぱりよかね」
「そう?オレはこんな世界初めてだから、驚くことばかりだよ」
そんなオレの言葉を聞いてアイは益々うれしそうな顔をする。あそこは、ウチが通ってた学校だよ。ソコはスウィーツが美味しいお店なんよ。とオレに色々と教えてくれる。そんなアイを見ていると本当にデートに誘って良かったなと思う。
そのままオレはアイの案内通りに映画館に行き、ウインドウショッピングをして最後にカフェでお茶をした。
映画館では、カプセルみたいなものに2人別々に寝かせられて頭部におっきな機械をつけられたけど完全3Dの世界をアイと2人で楽しむ事が出来たし、ショッピングは古今東西世界中のありとあらゆるものが揃っているリストを2人でディスプレイで見る事が出来た。
カフェも注文した品がその場で3Dプリンタの様なモノから忠実に再現されて出てくる。
アイがそれらを見ていちいちはしゃいでいるのはとても嬉しかったけど・・・
「今度はオレがアイをEDOの街に招待したいんだけど、どうかな?」
「うん、ウチもEDOの街に行きたい。でも・・・」
そうだよな。物質世界では、アイは存在できないんだよな。でも・・・
「コジロウ?なんとかならないか?」
「にゃあ、確かにアイを物質世界にそのまま存在させる事はかなり難しいニャア。でも、ご主人様とEDOの街を歩いたりする事は可能だニャア」
やはりオレの思った通りだ。コジロウの能力ならそれが可能なハズだもんな。
「それには、アイの体組成の成分分布データが必要なんだニャア」
「あ、そういう事なん?」
ここですぐにアイが理解する。さすがに電脳界きっての天才児だ。オレの思惑を瞬時に理解したな。
オレは、電脳界からEDOに戻ってきた。そして何もないところに例の自作ログハウスを取り出し中でコジロウと共に作業に没頭していた。
「にゃあ、できたニャア」
「よし、頼んだぞコジロウ」
するとオレの目の前に魔法陣が出現する。ガル達を呼び出したモノよりも更に小さな魔法陣だ。その魔法陣内に少しずつ姿を現したのは・・・
「ちょ、ちょっと待ってコジロウ。ストップだ、直ちに中止しろ」
「にゃあ?大丈夫だニャア。成功したんだニャア」
一糸纏わぬ素っ裸のアイが魔法陣の中に顕現する。
「うわああああああ」
「にゃあ、もう大丈夫ニャア」
すると魔法陣の中のアイが閉じていたその瞳を見開いた。
「ぎゃああああああああああああああ」
アイは、一糸まとわぬ自分の姿に気づき悲鳴を挙げる。
オレは、生まれて初めての女性の裸体にテンパってしまい何も言えなくなっていた。
「あんたウチのこんな姿ば見たからには責任ば取って貰うけんね」




