第68話 連れて行かれた先は・・・
山ブタのベーコンは1キロ1万イェンで引き取って貰った。21キロあるから計21万だ。締めて6億3021万イェンを冒険者カードに入金したのと引き換えにオレは自分の商品を渡す。
そのまま、店の前に止めてある駕籠にトキさんと一緒に乗り込む。
「あのー。コタロウ達も一緒についていっていいですか?」
「もちろんですとも。是非ご一緒ください」
快諾するトキさんの笑顔にオレはほっとする。オレとコタロウ達を分断させて戦力を奪っておいてオレをどうにかしようって気は無いらしい。それにしても一体どこに連れて行かれるんだ?
「それは、着いてからのお楽しみでございます」
それにしてもオレも迂闊だったと思うが、トキさんの有無を言わさない交渉術は見事だったな。まだ若いのに相当な修羅場を潜ってきたのだろう。呑気にそんな事を考えながら出されたとお茶とお茶菓子を食べて寛ぐ。
「ダンジョンにはどんなモンスターが出たのですか?」
「あ、スノウクロコダイルという凍った湖の底にいるワニがいたり、キラービーって巨大なハチの群れがいたり~」
道中は「最後の洞窟」であった出来事を話す。コウノスケさんは物凄い聞き上手でオレがいい気になって話をしていたら、あっという間に目的地に到着したようだ。
「到着でございます」
すっと襖が開き案内されるまま外に出ると目の前には巨大な門がそびえ立っていた。
いや、門というよりもはや家である。基礎部分は石垣で出来ていて、屋根があり両開きの巨大な門には、これまた巨大な閂があり。つまりは城門ってことだ。
「え?ここは?ひょっとして・・・」
「EDO城でございます」
門番らしき人とセバスさんがなにやら話している。とても親しげでどうやら顔見知りのようだ。すると門がバーンと開いた。さすがはトキさんだ、どうやらEDO城は顔パスらしい。
開いた門の先は石畳が延々と続いていてその脇には真っ白な砂利が敷き詰められている。先を進むと豊かな水を貯えた巨大な池があり中央にアーチ型の橋が架かっている。
辺りを見渡すと、見ただけで良く手入れされていると分かる立派な木々が配置良く植えてある。こんな日本庭園は修学旅行以来だ。
池を渡りまた暫らく歩くと大きな建物の前まで来た。これが本城?本丸?ともかく殿様が住んでいそうな大きなお城である。そびえ立つ石垣と堅固な壁に囲まれた5階建ての建物だ。すると中から品の良い老人が現れる。老中ってヤツだろうか?
「ミツヒデ様、越後屋のトキでございます。いつもご贔屓頂きましてありがとうございます」
「おう、トキ殿。ようこそ、今日はご足労であったな」
「こちらが、シュウ様でございます。シュウ様、こちらはこのEDO、いやヒノモト国内での執務を行う上での最高責任者、今風の言葉で言うところのCOOミツヒデ様です」
「おお、君が例の・・・いやよく来たな。ミツヒデだ、よろしく頼む」
オレは急に偉い人の前に立たされてぽかんとする。余りにも現実感が無さ過ぎて緊張するどころか、夢の中の出来事みたいにどこか他人事に感じてしまう。
「あ、シュウです。よろしくお願いします」
オレはミツヒデさんと握手を交わした。近くで見ると小柄な体格ながら鋭い眼光を放っていて只者ではないことが伝わってくる。前世で出会ったどんなヤリ手社長よりも自信に満ち溢れている。
「では殿に会っていただくとしよう。シュウ殿、こちらへ」
え?殿ってお殿様の事だよね?ヒノモト国で一番偉い人の。そんな人に今から会うの?
だが感覚が完全にマヒしてしまっているオレは、そのありえない状況を受け入れてしまっていた。
オレとトキさん、コタロウ、コジロウ、ガル、ギル、ゴルはミツヒデさんに案内されるまま城の中へと入っていく。中は想像通りとんでもなく広い。総大理石張りの玄関からして普通の家くらいの広さがある。その玄関を上がってすぐにこれまたとてつもない広さの階段があり上へと続いている。階段の横は廊下になっていてずーっと遠くまで続いている。
ミツヒデさんの案内に従い城の中を進むとある部屋の前に来た。他の部屋は襖で仕切られているのにこの部屋は鉄製のドアだ。ミツヒデさんはそのドアを開ける。
「うん?思ったよりも狭いな」
部屋の広さは6畳間くらいだろうか?オレが前住んでいたマンションの部屋よりも狭いくらいだ。中には家具などなにも置いてなくなんだか殺風景な部屋だ。
すると
「ギギギギギ」
と音がした後に、なんだか体が浮かび上がる感覚がする。もしかして?
「5階まで階段で上がるのはこの老体にはチト酷なのでな。昇降機を使うぞ」
エレベーターまであるのか?この世界って意外と快適だよな。
「チーン」
すぐに5階に着いたようだ。ドアを開けると、目の前に何百畳あるのか見当もつかないくらい大きな畳の部屋が広がっている。うん?部屋の奥に何人か人影が見えるな。
オレ達はまた奥へと進む。奥は畳の部屋から一段高い造りの小上がりになっている。
その小上がりでは、男が一人と着物を着た女性が5,6人なにやらわいわい騒いでいた。
「上様、お戯れを」
「よいではないか。よいではないか」
「あーれー」
男が女性の一人が着ていた着物の帯を引っ張ると、まるで駒のようにクルクルと回っている。どこかで見た光景だ。
「殿、シュウ殿をお連れしましたぞ」
ミツヒデさんの言葉に振り返った男は、キンキラキンの着物に立派なチョンマゲを結っている。そしておしろいを塗りたくった顔は真っ白だ。
「バカ殿じゃねえか・・・」




